ブチコのゲートを見て、改めて難しさを感じました
2016.6.29
6月4日東京11Rの
麦秋Sで、上位人気の一角を占めていた
ブチコが前扉に突進して放馬し、競走除外となってしまいました。あの件を見ていて、ゲートは難しいと改めて思ったんです。
ブチコは関西馬で、僕は普段の姿を知らないので、軽々しいことは言えません。ただ、あのような馬に対してどのように対応するべきなのか、またその技術は、トレセンで働いている人たちはそれぞれ持っていると思います。
そんな中で一番簡単な対処法は、ゲートの中で駐立しているときに顔を横に向けることです。
ただ、当然そういうことはやっているはずです。だからこそ、相当な難しさなんだろうということが想像できます。
たぶん、調教やゲート試験のときなどは、全く問題なく、素振りさえみせないんだと思いますよ。それがレースになるとやるんです。
話は少し逸れますが、歩いているときに“立つ”馬がいます。それは馬自身が成長するか、気分が変わるか、あるいは何か別の出来事によるなど、何かきっかけがない限り、ずっと“立つ”んです。
今度の
ブチコの再試験に関しては、恐らくいわゆる13レース(注:競馬場で行うゲート試験)になるんじゃないかと思います。
そこで、果たしてどういう反応を示すのかはわかりません。ただ、同じ厩舎人からすると、同じことを同じようにやられてしまうと、対処が相当大変になるはずです。
これは私見ですが、ここまで2回全く同じようになっていることを考えると、ゲートそのものというより、馬運車に乗って、競馬場に行くということが馬のスイッチになっている可能性もあるんじゃないかと思います。
ゲートで起こる問題として、中でうるさい、入らない、出ない、そして飛び出しという4つがありますが、一番難しいのは飛び出しだと思います。
馬の気持ちや行動は似ているものです。もちろん馬にもよりますし、変わった馬もいますので、すべて同じということにはなりませんが、同じようなケースに対する対処法はだいたい似ているものなんです。
例えば、ゲートで問題がある馬に“縛る”という対処法があります。これは日本独自らしいのですが、突進していく馬を縛って効果があるかと言われると、どうなのでしょうか。
また、あのようなケースでは、1回目で突進した馬が、2回目では逆に出なくなったり、出遅れ気味になったりすることがあるんですが、
ブチコの場合は全く同じように突進しています。
矯正することを考えると、言い方は適切ではないかもしれませんが、出ない馬よりも突進する馬の方が厄介かもしれません。
実際、
ブチコと同じようなケースを僕も経験しました。
僕の場合は、次は普通に出てくれて、それ以降全く問題なかったので、良かったですが、もし2回目に同じことをやられていたら、正直どうしていたかわかりません。だからこそ、本当に難しいだろうな、と想像ができるんです。
ゲートで起こるそのような問題について、要因もいろいろあると思います。
もちろん、ゲートに関して人為的な面でのミスがある可能性もありますが、馬自身が持っている資質というか性格的なものがあって、そういう部分は本当に難しいものなんです。
意外とそういう部分について軽く考えられる傾向があるように感じたりもするんですが、直し切れないケースも、決して珍しくはありません。担当者だとか、普段乗っている人間の技術とか、そういうレベルの話ではなかったりするんですよ。
いまウエスタン馬術と呼ばれる、馬とのコミュニケーション掌握術的なものが注目されていますが、そういう性格的な部分へのアプローチにももっと関心が持たれて良いように思います。
追い切りをして、パドックを歩き、ゲートに入って、ゲートを出て、そしてゴールを駆け抜ける。これは当たり前のようにみえている毎週の競馬シーンだと思います。でも、それほど簡単ではないことなんだということを、ぜひこのような機会に再確認していただければ、と思います。
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