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【対談・伊藤調教厩務員①】今回は女性調教厩務員の伊藤さんをお迎えしました!
2016.7.19
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伊藤春菜調教厩務員…以下[伊]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]今回は厩務員さんとしては初めての女性ゲストをお迎えしました。久保田厩舎で調教厩務員として活躍している伊藤春菜さんです。本日はお忙しいなかありがとうございます。

[伊]こちらこそよろしくお願いします。



[西]臨時で尾関厩舎に来て、一緒に働いたことがあるんですよね。

[伊]あれから7年になるんですよ。

[西]えっ、そんなになるんだぁ。臨時で大久保厩舎に入ったのが最初でしょ。

[伊]そうです。そこから尾関、久保田、尾関、木村、そしていまの久保田厩舎です。

[西]凄いよね。でも、普通は転厩するときは自分の希望ですけど、木村厩舎から久保田厩舎に移ったとき以外は、あくまで厩舎側の事情などによって、契約社員として自分の意志に関係ない移動だよね。

[伊]そうですね。

[西]それだけの厩舎をみることができるというのは、ある意味良い経験だったんじゃないの?

[伊]ピンク帽(編注:臨時採用の持ち乗り厩務員が被る)で入って、その厩舎でそのまま正規採用される人たちもいますけど、いろいろ経験できたのは良かったと思っています。

[西]俺自身は、西塚厩舎と尾関厩舎しか知らないわけですよ。他の厩舎との比較ということでは、大体こんな感じなんだろうなという想像でしかないわけです。

[伊]確かに厩舎によって違いはありますよね。例えば装蹄ですけど、追い切りが行われる水曜日の午後か木曜日という厩舎があるのに対して、火曜日に削蹄をしないと怒られる厩舎があります。伸びたままの蹄のまま追い切っては駄目ということなんです。

[西]そうなんだ。

[伊]それと細かいところですけど、馬服なんかも違います。温度に関係なく薄い製品を着せている厩舎もあれば、厚いものと薄手のものを、温度を見極めながら使い分けるところもあります。

[西]そういう部分はそれぞれの調教師さんたちの考え方というか、色だよね。元々、持ち乗り志望だったよね?

[伊]そうです。

[西]尾関厩舎のときも楽しそうに仕事していたイメージが強いかな。攻め専と持ち乗りでは、同じ助手でも違うよね。極端な言い方をすれば、持ち乗りは担当馬に専念できるのに対して、攻め専は全部の馬を意識しなければならないような感覚があります。

[伊]確かに、そうかもしれません。

[西]伊藤さんとかをみていると、担当馬と一緒に生活している感、みたいなものを感じるんです。それと、うちにはもう1人、友池さんという女性の厩務員さんがいるから分かるんですけど、女性の方々は仕事が綺麗ですよ。

[伊]女性ならでは、という部分はあるのかもしれませんよね。

[西]この世界は、男性と全く同じ条件で働かなければなりません。女性だから、という部分が全くと言っていいほどないわけですけど、男性に生まれたかったと思うことってあるんですか?

[伊]男性に生まれたかったというのは、いまではなく、物心ついたときから思っていました。

[西]あ、そうなんだ。

[伊]物心ついて、最初になりたいと思ったのが消防士だったんです。

[西]幼いころから身体を動かすことが好きだったんだね。

[伊]ところが、運動神経が鈍くて、走れば遅いどころか転んでしまう感じでした。

[西]でも、馬乗るのは上手ですよね。

[伊]球技とか、走るとかが苦手なんですよ。それを見て、父親が何か運動系の習い事を習わせた方が良いと思ったみたいです。

[西]それで馬に乗ったの? ちなみにいくつから馬に乗ったんですか。

[伊]10歳です。

[西]そんな早くから。出身はどこだった?

[伊]群馬県です。

[西]乗馬クラブとかたくさんあったりするの?

[伊]多いと思います。

[西]乗馬クラブで習い始めたんだ。

[伊]いえ、馬事公苑です。

[西]えっ、JRAの?

[伊]違うんです。県営の施設があったんです。始めたきっかけというのは、保育園の先生が競馬が大好きで、そこで乗馬をやっていたんですよ。しかも、その保育園にうちの母が勤務していて、3歳の頃から『大きくなったら馬に乗ろうね』と言われていました。

[西]凄い環境ですね。

[伊]その頃は、5歳とか6歳にならないと馬に乗れなかったんですが、年齢が達するとすぐに乗せられて、それでハマってしまった感じですね。

[西]お父さんが言う、運動系の習い事にもピッタリだしね(笑)。

[伊]そうですね(笑)。その先生の甥っ子さんが、元騎手の田嶋翔さんなんです。

[西]競馬とかも良く見にいったりしていたの?

[伊]保育園の先生に連れられて、中学生から毎年皐月賞とダービー、あと有馬記念は来ていました。

[西]ジョッキーになりたいと思わなかったの?

[伊]最初は思いました。ちょうど小学校6年生のときに牧原(現・増沢)さんとかがデビューされたときだったんです。

[西]騎手過程は受験したんですか?

[伊]周囲にも薦められましたし、私自身もなりたかったので、中学校3年生のときには受験しました。

[西]2回目はチャレンジしなかったの?

[伊]翌年も願書を取り寄せて受験票ももらったんですが、直前に肩を脱臼してしまって、心が折れてしまいました。

[西]懸垂とか試験にあるらしいから、直前に脱臼してしまっては厳しいわ。高校時代の写真をみせてもらったけど、馬術部で短髪にして気合い入っていた感じですよね。

[伊]馬術部ではなく、その馬事公苑なんです。

[西]でも、酪農高校みたいな感じだったよね。

[伊]農業高校だったんです。牛の世話とかしていました。

[西]高校の関係で、競走馬の方面に進むことになったの?

[伊]違います。高校時代、馬事公苑で馬術をやっていて、国体とかを目指していたんですが、そのときの選考委員のなかに競走馬の育成牧場の方がいらっしゃって、その縁でした。高校1年生のとき『競走馬に進みたいらしいなぁ。卒業したら俺のところに来い』という感じだったんです。

[西]結婚も早かったよね。確か、トレセンに入ったときには結婚していたんじゃなかった?

[伊]ピンク帽で大久保先生に呼んでいただいたときに、社宅には入れないと言われていたんです。そのとき、いまの主人と付き合っていて、結婚すれば社宅に住むことができるということでしたので、そこで入籍をしました。

[西]あっ、そうだったんだ。

[伊]大久保先生から声がかかったときには小林で、働き始めたときには伊藤になっていました(笑)。

[西]いま旦那さんが加藤征厩舎で持ち乗り助手で、夫婦揃って持ち乗りでやっていらっしゃるんですよね。お金貯まりますね(笑)。

[伊]全然です(笑)。

[西]こういう言い方は大変失礼なんですけど、一緒に働かせてもらっていて、とても男っぽさを感じさせられたわけですよ。

[伊]よく言われます(笑)。

[西]俺自身としては、あくまでそれが地の伊藤ちゃんだと思っているんだけど、実はそれはこの男社会のなかで頑張っていくために、女性らしい部分を隠しているというか、敢えて男性社会に合わせているのかな、という部分が聞きたかったんですよ。

[伊]昔からこのままなので、元々が男っぽいんでしょうね。

[西]他の厩務員さんとか、持ち乗りさん、あるいは攻め専の女性の方々は、様々なところで女性らしさというものを感じたりするんです。馬に対してはもちろん、いろいろな面でそう感じるんですよ。具体的にと言われると困るんですけど、わかってくれるよね?

[伊]わかります(笑)。

[西]伊藤ちゃんは男同士と変わらないんですよ。

[伊]他の女性の方々は女性だと意識していますよね。

[西]伊藤ちゃんも女性だと意識していますよ(笑)。

[伊]同じではないように思います(笑)。もちろん、それで良いんですけど、そういう感覚はありますよ。

[西]ということは、元々そうだったということなんですね。

[伊]競馬学校の面接で、『女性がひとりという環境ですけど大丈夫ですか』とか『トレセンは男性社会ですけど耐えられますか』というような質問を受けました。でも、既に牧場時代がそうでしたし、それが嫌ならばその前に辞めています。

[西]実際、今日まで頑張ってきていますからね。

[伊]逆に女性だけの職場とかは居づらいかもしれません。入学した日に、女性の職員の方々に何か困ったことがあったら相談してくださいと言っていただいたんですが、全く問題はありません。

※次回に続く

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