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【対談・伊藤調教厩務員③】女性が働きやすい環境が、今のトレセンには不足している
2016.8.3
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伊藤春菜調教厩務員…以下[伊]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]話は逸れるけど、トレセンの女子会とかは参加するの?

[伊]しますよ。

[西]女子会のなかで「◯◯厩舎の◯◯さんって、かっこいいね」とかは、もうさすがにないでしょ。

[伊]している人たちもいますよ。

[西]僕自身も含めて、読者の方々は、女子会でどんな話をしているのか、という部分は気になるわけですよ(笑)。

[伊]厩舎だけでなく、騎手の人たちを含めて“◯◯さんってかっこいい”というような話題もありますし、あとは愚痴もあります。

[西]それはあるでしょうね。一般社会の女子会と同じ感じですか?

[伊]最近では、社宅問題ですね。

[西]あ、社宅問題か。

[伊]女性専用の社宅で、セキュリティーをしっかりとして欲しいという要望があります。

[西]なるほどね。そういう部分では、最近僕自身が必要だと痛感するのが託児所です。いまの現状では、子どもができた瞬間にこの仕事を辞めなければならないのは、とても大きな問題だと思うんですよ。

[伊]それは一番の問題ですよ。

[西]いま一般社会でも待機児童のことが問題になっていますよね。そして、もし伊藤ちゃんに子どもができたとします。その子を育てるために仕事を辞めなければならないというのは、やはりおかしいと思うんですよ。

[伊]現実問題としては、子どもができたら辞めるしかありません。近くにどちらかの親が住んでいて、面倒をみてもらえるというならば別ですけど、私はそうではありませんので、辞めるという選択肢しかないんですよね。



[西]これだけ男女平等を叫ばれる世の中で、子どもを生んで育てるためには仕事を辞めなければならないというのは、やはりおかしいですよ。じゃあ、どのようにすればいいかといえば、やはり託児所ということになります。でも、『それならば伊藤さんも託児所に預けてくださいよ』と言われますけど……。

[伊]朝1時半に預かってくれる託児所は、少なくとも美浦トレセンの周辺にはありません。

[西]確かに社宅の問題もあります。でも、いまはそれよりも託児所の問題の方が大きいと僕自身は思っているんです。自分自身で子どもが生まれたからこそ、そう思うのかもしれませんけど、まだ結婚していて夫婦でお互いが協力して何とかできる部分もありますから。でも、これが何らかの理由で1人で子どもを育てていかなければならない状況になったときには、もう仕事を辞めるしかない。そういうのは決して健全ではないですよ。

[伊]本当にそう思います。

[西]ブッチャけてしまいますけど、収入面から言えばトレセンで働く女性は1人でも子どもを養っていくことは可能なわけですよ。でも、託児所がないと現実問題としては無理なんです。これだけ労働環境を整えて、というのであるなら、託児所の問題は最優先事項のはずですし、組合だけではなくJRAもこの部分についてはしっかりと対応しなければ駄目だと思います。

[伊]ベビーシッターも含めて、調べたことがあるんですけど、朝7時からならば預かりますというところはありました。でも、7時というのはいまは仕事の折り返しの時間ですからね。

[西]僕たちが見ている天気予報は、前日に発表されたものだからね(笑)。新宿とか繁華街ならば別かもしれないけど、我々トレセンも24時間態勢でなくても一般社会とは違う時間帯で動いていますので、そういう部分はぜひ改善してもらいたいですよ。外国では女性ジョッキーが産休を取って、その後復帰するというのは当たり前だったりすると聞きます。

[伊]みたいですね。日本もそういう環境になってもらいたいですよ。

[西]そういえば、女性といえば今は藤田菜七子騎手ですけど、交流があるみたいですね。

[伊]一緒に食事したりしています。

[西]僕自身はお話もしたことがないんですけど、みた感じでは女性らしいのかなぁ、と思うんです。

[伊]どうなんですかね。私からは男性っぽさが強いように感じますね。私よりは女性的ですけど。

[西]貴方は完全に男性ですから(笑)。その藤田騎手が久しぶりの女性ジョッキーと騒がれましたけど、最近は女性の厩務員さんとか助手は増えているんですか?

[伊]いや、少なくなっています。私の後は1人だけで、3、4年は入ってきていないはずです。その1人と私の間も3、4年空いてしまっているので、少なくなっていますよね。

[西]そうなんだ。意外と多いような感覚があるんだけど、違うんだね。女性騎手が何年ぶりとか言っているし、まだまだ男社会ということなんだろうね。

[伊]騎手で言えば、地方競馬の方が圧倒的に多いですよね。

[西]調教師もそうだよね。海外はもちろん、地方競馬でも女性調教師が誕生して話題になりました。オーストラリアではリーディングになる人がいたり、世界最強馬と言われたトレヴを育てたヘッド師がいるように、女性も男性に負けない実績を残しています。しかし、JRAでは一次試験まで合格された方はいらっしゃいましたが、いまだに女性調教師は存在していません。



[伊]そういう部分ももちろんなんですけど、現場ではいま託児所の問題など、もう少し女性が働きやすい環境が求められているということだと思います。

[西]女性が働きやすい環境はもちろんなんだけど、実は託児所の問題については、明日は我が身といいますか、男性にも無関係ではないんです。もし僕が一人で子どもを育てるとなったら、託児所がないと無理なわけですよ。

[伊]男性にもあり得る話ですからね。やはり、現実問題として、子どもが熱を出してしまったので、今日休みます、というのはできないですよ。

[西]それが一般社会では大丈夫だったりするんですよね。

[伊]育休ではないですけど、子どもを育てながらでも仕事ができる環境が整備されて欲しいと思います。

[西]生き物が相手で、なかなか一般の会社と同じにはいかないというのはわかります。ただ、そういう部分も含めて、厩舎のあり方というものを考えていかなければならないとも思うんですよね。海外では当たり前にできているわけで、日本でも女性が働きやすい環境ができるはずだと思うんです。でも、そういう労働面における環境や制度も、少しずつかもしれませんが変わってきていますよ。

[伊]それは思います。

[西]一番感じるのは、僕が幼い頃、わが父親が運動会に来てくれるなんていうことは全くありませんでした。周囲の人たちもほぼ同じようなものですよ。日曜日は競馬というのが大前提でした。でも、いまは臨場を頼んで、運動会に行かれる先生方が多いようです。

[伊]なるほどですね。

[西]僕自身は、自分の運動会よりも競馬の方が大事だと理解していましたし、当たり前の感覚でした。だから、そのことで親に『酷い』とか思ったことはありません。実際、いま助手という立場ですが、日曜日は仕事ですから、やはり子どもの運動会には参加していませんよ。

[伊]そうだったんですね。

[西]この子育て問題も含めて、そういう労働環境問題というのは、実は競馬人気に直結していると思うんです。それこそ一般社会では育休が認められる時代ですからね。生き物を相手にしている以上、全く同じとはいかないのはわかります。でも、そういう部分を含めて魅力的な存在でないと、子どもたちを含めてこれからの人たちが目指してこなくなってしまうはずです。

[伊]それはあるでしょうね。

[西]僕自身で振り返れば、一番良い時代を見てきたわけですよ。父親の存在というのもありましたけど、そういう部分の魅力というのもありましたから。

※次回に続く

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