2歳馬の装蹄は、その状態によって変えるべきだと思います
2016.8.24
今週は2歳馬の装蹄について、お話をさせていただきたいと思います。
前回、ゲートへのアプローチが各育成牧場によって違いがあるという話をしましたが、実は装蹄も同じで、各育成牧場に特徴があるんです。
蹄をあまり詰めて切らず、大きめで余裕があったり、逆にキッチリと詰めて、もう手を入れる必要がない状態とか。また、蹄鉄を付けず裸足のままで入厩してくる馬もいます。
新馬たちの多くは、入厩してから1ヶ月から1ヶ月半くらいでデビューします。そのスケジュールですと、厩舎で装蹄するのは2回から3回程度となります。
これは馬にもよりますし、状況にもよるので一概にどれが良いとは言えません。
ただ、もし何かトラブルがあった場合、余裕を持って大きめの状態だったり、裸足の状態の方が修正を促すことができるものなんです。
“促す”と言ったのは、蹄はとても繊細で、僅か数ミリの狂いで脚部不安を発症するとさえ言われていて、熟練された技術が求められる世界です。
しかし、何かトラブルがあった時、どれほど高い技術を持った人が装蹄を行ったとしても、1回の施術で完璧になるということはまずあり得ないはずなんです。
なぜかというと、人間も深爪してしまったときは、ただ伸びるのを待つしかありませんよね。それと同じで、“促す”と言ったのはそういう理由です。
トレセンに1ヶ月しかいないとしたら、伸びるのが早い馬で2回、普通ならば1回しかできませんから、正直蹄が伸びるには充分とは言えないんです。
そうなると、入厩してくる段階での装蹄がポイントとなってきます。もっと言えば、ゲートよりも各馬の特徴や状態に左右される部分が大きかったりするんです。
また、装蹄は肩やトモなど、いわゆる体の上の部分との関係も意外と深いんです。
あまり詰めていない状態や裸足の状態ですと、脚元への負担や減り方がおかしくなったりすることもあります。逆に言うと、あまり詰めていない状態や裸足の状態の馬は、修正が利きやすいんです。
例えば、トモの踏み込みがいまひとつだったとします。先程、どんな熟練された技術でも1回で完璧になることはないと言いましたが、余裕が残されている分、それだけ1回の装蹄で踏み込みが格段に良くなったりすることがあるんです。
ここまでの話だと、しっかりと詰めた状態が悪いように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。調教で速いところをやったときの負担は、しっかり詰めていた時の方が軽減されるのは間違いありませんから。
それぞれにプラスとマイナス面があるんです。だからこそ、それぞれの馬の特徴や状態に合わせた装蹄が必要なんです。
それなら、接着蹄鉄はどうかという意見もあるかもしれません。
ディープインパクトで有名になったおかげで、あたかも、魔法の装蹄法みたいに言われる接着蹄鉄ですが、全く『魔法の』っていうわけでもありません。
人間と同じで蹄は皮膚の一部です。刺激を受けることで、健全な状態を保ち、蹄で言えば釘を打つことで蹄鉄を装着することができるんです。
でも、蹄が弱い馬はその釘に耐えることができない。だから、接着剤を使用して装着するしかないわけです。
それでも走れるんだから良いという考え方もあるのでしょう。でも、馬には蹄機作用というものがあって、馬の蹄は着地する寸前に外側に広がって、地面を捕まえようとする動きをしているんです。接着蹄鉄は、それを妨げてしまうんです。
もちろん、蹄の弱い馬もいますし、
ディープインパクトのように、それでも走れる馬はいますし、強い馬もいるんです。それでも、やらないで済むならばやらない方が良いはずですよ。
ましてデビューする前の馬たちには、できる限り普通に釘で装蹄される方が良いのではないでしょうか。
蹄もゲートと同じで、各馬に合わせて行ってもらうのが一番大切だということを、2歳馬たち接するこの時期に改めて痛感させられます。
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