今回は皆さんからいただいたご質問にお答えします
2016.10.12
レッドファルクスの
スプリンターズS制覇について、前回の更新後もおめでとうメールをたくさんいただきました。本当にありがとうございます。
みなさんがそれぞれに応援してくださっていることはわかっているつもりなのですが、すべてのメールを読ませていただいて改めて思うことは、みなさんあってのこのコーナーだということです。本当に感謝しています。
あ、
サクラゴスペルのことを心配されている方々がたくさんいらっしゃいましたね。ご安心ください。レース後怪我もなく、無事に放牧に出ていきました。
時計的にはいつものゴスペルくらい走っているんですけどね(走破時計は1分8秒3)。着順こそ⑯着ということでしたが、今年は先頭から最後までほとんど差がない結果となっていますので、展開ひとつというところもあったと思います。
そのゴスペルとファルクスについて、僕自身がレース直前のコラムで
「順調です」というお話をしたところ、
「みなさんの立場から具体的にそう感じる部分がありますか?」という質問をいただきました。
考えてみたんですが、いろいろあると思います。ただ、タイムよりも動き、ということは言えると思います。乗っている人の重さや馬場の差によってタイムが速くなったり遅くなったりしますので、動きの方が重要でしょうね。
以前にもお話をしたと思いますが、だからこそ“点”ではなく“線”でみなければならないと思うんです。
僕たちも、良い成績が出ているときの雰囲気や動き、あるいは振る舞いなどを記憶して、その時と比べてどうか比較する、という作業をしています。
そういう意味では、良い成績が出ているときの体や追い切りと比較してみるというのは、皆さんが馬券を検討する上でひとつの方法になるのではないでしょうか。
それに対して点でみてしまうと、自分の評価基準、理想に当てはまらないとすべて駄目、ということになりがちです。意外とそうではないと、実際にやっていると思います。
今回のゴスペルで言えば、昨年2着したときと同じような雰囲気でしたし、動きもそうだったと聞いています。着順は去年よりも下がってしまったけど、時計的にはいつものパフォーマンスはみせてくれました。
それより何より、ゴスペルが去年の
オーシャンSを勝ったときには、当週の追い切りでは引っ掛かってしまって、終いバタバタになってしまっていたんです。
元々ゴスペルは追い切りで動かそうと思えば、いくらでも動くタイプなんです。もし“点”で見ていたら、そのような追い切りだと駄目、という見方になってしまいますよね。
でも、そうじゃないんです。ゴスペルについて言えば、飼い葉食いや体重、あるいは雰囲気だったりを気にします。
一方、ファルクスもダートで追い切りをすると、これまた動くんです。ウッドチップでの追い切りはそこまでタイムになりませんが、だからと言って調子が悪いわけではありませんし、芝のスプリントでG1を勝ったようにスピードもあります。
そして、ファルクスの場合は身のこなしがポイントとなるように思います。ですから、みなさんはパドックの周回を比較するのも良いかもしれません。
こういった感じで“点”ではなく“線”でみると、いろいろな部分を気にすることになります。これは1頭1頭どんな馬にもありますし、それぞれに違うものです。
簡単に言えば、動けば走るというものでもないですし、動かないから走らないわけではないということです。そこは本当に難しい。でも、だからこそ面白いんですけどね。
そういえば、引退した
高嶋活士元騎手についての質問もありました。
高嶋は13年2月の落馬事故によって半身麻痺が残ってしまい、騎手人生に終止符を打たざるを得なくなりました。ご存知の方もいらっしゃると思います。
その事故の後はトレセンの乗馬苑で懸命にリハビリをしていたそうですが、思うように回復せず、復帰を断念せざるを得ない状況となってしまいました。
質問を受けて先日高嶋本人と電話で話をしたところ、2020年の東京パラリンピック馬術競技の強化指定選手に選出されて、頑張っているということでした。
オリンピックのマラソンなど、多くの競技は選考レースや大会の結果で選ばれるようですが、馬術の場合はいくつも大会に出場して、そのポイントを集計した結果で決まるみたいなんです。
しかも、その大会というのが世界各国で行われるということで、ブッチャけお金が本当に掛かってしまう状況だと聞きました。
強化指定選手になってはいるものの、すべてを面倒みてくれるわけではないらしく、協力を求める活動も並行してしているそうなんです。
確かに、アマチュア競技の場合、どこかの企業に所属する形でそこからの援助があって成り立っていると聞いたことがあります。高嶋もそういう企業などを求めているということなんですが、それでも本当に大変みたいです。
そして、まだ半身麻痺も酷いみたいなんですよ。でも負けずに頑張っていると言っていました。
高嶋は1勝もできずにこの世界を去らざるを得なくなってしまったわけですが、いまも馬に乗ることへの思いを忘れられずに頑張っています。その姿に、同じ競馬の世界で頑張っていた1人として、純粋にできることはほんのわずかかもしれませんが、応援させていただきたいと思っています。皆さんも応援していただければと思います。
以前、お世話になっているある馬主さんが所有馬を抹消することになったんです。その時、その馬にしか心を開かない自閉症の子供が毎レース応援に来ていることを知って、その子のお父さんに譲られた、ということがあったんです。
そのとき、その馬主さんは
『どんな大きなレースを勝つよりも、自分が持っていた目立たない馬が1人の子供にそれほどまでに力を与えてくれていたということが馬主として、人として本当に嬉しい』と仰っていたんです。
高嶋の話とはちょっと違うかもしれませんが、どんなことが人を助けるか、誰にも分かりません。意外なことが人の役に立つこともあるはずです。
高嶋については機会をみつけて対談にも出ていただきたいと思っていますが、それ以外にも何かできることを、と思っています。皆さんもそういう人間がいることを知っていただきたいと思います。よろしくお願いします。
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