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【対談・田辺騎手④(終)】有馬記念のキタサンブラックは、最高の枠とは思わなかった
2017.2.15
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田辺裕信騎手…以下[田]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]突然ですが、僕は田辺天才説を唱え続けてきた一人です。

[田]いつ?

[西]だから、僕が西塚厩舎に入った当時ですよ。

[田]他の騎手を乗せないから、知らないだけですよ。

[西](笑)。

[田]視野が狭かったんですよ。俺か、(柴田)大知さんか(中谷)雄太さんかという感じでしたよ。あ、天才説といえば大庭さんもいました。

[西]あ、大庭さんもいましたね。

[田]大庭氏の乗り方に近いのは丸田さんかなぁ。

[西]それは何となくわかる気がするよ。追い方とかじゃなくて。

[田]出し具合とか、馬にノーストレスで、ぶらーんとした感じで乗るところですかね。

[西]だから、ハマると来るんだろうね。1人のファンとして聞きたいんだけど、ぶらーんと乗ることって、なかなか難しかったりするの?

[田]競馬は1頭で乗っているわけではないですからね。咄嗟の動きがあったときには、対応できないですよ。あとは、ぶらーんと乗るのと、少しだけ促して乗るのとは、一緒だと思います。

[西]そうだと思いますよ。

[田]何もそこまで、というくらいに手綱をブランブランにして乗る必要もないわけで、短いところで促して乗ってもいいわけですよ。

[西](笑)。丸田のセコっぷりって、結構好きなんですよね。わかるでしょ?

[田]そういうところがブレていないから、丸田はあれでいいと思います。最内でドン詰まったりもしますけど、でもそれが勝負ですから。

[西]人気薄で来るもんね。

[田]また、丸田は詰まるのが目立つんですよ(笑)。

[西]あと、最近は大庭さんの元気がないのが心配なんですよね。勝っていないけど、何でだと思う?

[田]西塚厩舎がなくなってしまったからじゃないですか?

[西](笑)。それが理由ですか。

[田]違いますかね。

[西]継続して乗せている先生もいますけどね。実は、どうした大庭、というテーマでこの対談に出ていただいたんですよ。障害に乗らなくなったこととか話してくれたんですよね。あ、そうだ。話は変わりますけど、ロゴタイプの話を聞きたかったんですよ。

[田]ロゴタイプって、知ってるんだ。

[西]はい? もちろん知ってますよ(笑)。申し訳ないですけど、安田記念のときは、絶対にモーリスが勝つと思って見ていました。

[田]そうでしょうね。競馬ファンのほとんどの人がそう思って見ていたはずですよ。

[西]逃げようと決め打ちしていたの?

[田]出して行って、もし同じように考えていたり、主張してくる人がいたら行けないですよ。

[西]頭数もフルゲートではなかったよね。

[田]引かないよ、という自分みたいな人間がもう1人いたとしたら、潰れてしまったかもしれません。

[西]田辺がもう1人いたら、どうした? 同じように行った?

[田]行っていないでしょうね。こう乗りたいとか思っていても、相手がいますし、思い通りになかなかなりません。よく“スローなんだから行けよ”と言う人がいますけど、どんな競馬をしてもリスクはあります。ハナに行っても、絡まれてしまう可能性がありますし、相手が引かない可能性もありますよね。逆にハナに行きたいとは思っていないのに、押し出されるようにハナに立って、そのまま勝ってしまうこともありますから。レースによって違います。もっと言えば、前走でハナを切って強い競馬をしているからといって、次もハナを切れば強い競馬ができるかと言えば、それはちょっと違いますよね。エイシンヒカリとか、そうじゃないですか。

[西]確かにそうだよね。

[田]エイシンヒカリは、みんなハナに行く前提で話をします。じゃあ、行かないときにはどうするんですか?ということになるじゃないですか。

[西]キタサンブラックもそういえばそうだよね。ハナに行く前提で話がされていました。

[田]サラブレ本誌(連載の『一鞍専心』)でも話をしたんですけど、有馬記念で1枠1番になって、「最高の枠」と言われていましたよね。でも、僕はそう思いませんでした。

[西]あ、そう? 外よりはいいんじゃないかと思っていました。

[田]絶対に行くと言っていたマルターズアポジーがいて、自分より外枠に入った。しかも、自分は奇数馬番ですから、先に入れられて、ちょっとは待たさせる。そして少しでも出負けでもしようもんならば、完全に包まれてしまう可能性があるわけですよ。確かに、最初のコーナーまでのロスは少ないですけど、ノーストレスでポジションを取れるわけではないです。

[西]深いねぇ。

[田]思い切って出さなければいけない可能性もありますし、簡単ではない。絶好の枠だなんて思いませんでしたよ。

[西]今日はゲート試験の日だったんですけど、1回目と2回目でも違いますからね。

[田]キタサンブラックは古馬ですし、歴戦の強者ですから大丈夫だとは思います。でも、行く馬というのは、それだけ出される負荷をかけられていますので、程度の差こそあれストレスを感じているはずです。だからこそ、どこかのタイミングでポカをする可能性があるはずで、それがひょっとしたらあの有馬記念になっていたかもしれないじゃないですか。あの日は大丈夫でしたけど、そういう可能性があるということです。

[西]そうなったら完全に包まれてしまう形になるよね。

[田]そういうことです。

[西]そういう馬でもゲートの練習をして、出した方がいいと思いますか?

[田]やった方がいいでしょうね。ほとんどの馬はゲート試験に合格した後、実戦以外ではほとんど練習していませんよね。長期休養明けとか、再試験があればするのでしょうが、やはりそれ以外でも出した方がいいと思います。

[西]そっかぁ。

[田]追い切りは毎週のようにやられていますので、走ることには慣れていますが、ゲートを出されることに対しては経験が浅いですよね。ゲートに対して、恐怖感や嫌悪感を抱いている馬は少なくないと思います。

[西]ゲートに関してはいろいろ考えなければならないことがたくさんありますよね。

[田]試験では“出した後に追え”って言われるしね。

[西]レースでもそこまで追わないのに。

[田]競馬で追って出している馬なんていないですよね。

[西]追わないと落とされますからね。

[田]おかしくないですか、って言ったんですよ。レースでも追って出す馬なんて、ガンガンに行きたい馬くらいしかいないのに。ゲートそのものは出ているのに、追っていないから不合格というのはおかしいですよね。

[西]そうなると、馬の動きではなく、人間の動きになってしまいますからね。極端な言い方ですけど、逃げ馬コンテストみたいな感じですから。2回出すのは、どんな状況でもしっかりと対応できるように、ということです。それはわかるんですよね。でも、ゲート試験で、出ているのにも関わらず、追っていないから不合格というのは、確かにおかしいですよ。

[田]追って出すというのはストレスになってしまい、うるさくなる原因のひとつになるので、レースで乗る側としてはできることならばやりたくありません。ゲートを嫌いになってもらいたくないんです。それなのに、わざわざ虐めるようなことをするわけですよ。追っていないから不合格になれば、翌週に追って出すことになります。そうなると、馬はゲートに対して嫌悪感を抱きますからね。

[西]それは間違いないね。

[田]それは違うと思うんです。別に行けなくてもいいじゃないですか。それがその馬ですし、それも含めて予想するのが競馬なんだとお客さんに説明すればいいと思うんですよね。

[西]同じ馬でも出遅れたりするからね。機械じゃないということですよ。

[田]スムーズに入って、中で大人しくできて、自分からしっかりと出ていくことができれば、それでいいですよ。もし、より速く出るようにしたいならば、それは各厩舎で対応してもらえればいいと思うんです。

[西]そりゃ、そうだ。でも、そういう部分は、騎手の人たちにしか、わからない部分かもしれないよ。

[田]そうなんですよ。何で追わないんだ、と言われることもあります。それと、ゲート試験に合格することを急ぐ厩舎が多すぎるように思うんです。入厩してきた次の日にゲートを出して、次の週に試験を受けるというのも珍しくない感じですからね。

[西]いま本当に多いよね。

[田]でも、そこで合格したら、競馬までゲートを出されることはないわけですよ。中で静止させるだけでも、やるべきだと思うんです。

[西]やっている厩舎もあるんじゃない?

[田]でも、追い切りをやった後、馬が疲れたところでやっても駄目でしょう。あと、ガタついたり、ソワソワすると、出してしまうケースがありますが、あれは逆だと思うんです。大丈夫なんだと教えるべきだし、馬も嫌だとサインを送れば出られると思ってしまうじゃないですか。

[西]そうなんですよ。やっていけばやっていくほど、馬は人間と同じで千差万別で、それぞれに個性があると痛感させられます。本当にゲートは大事ですから、それぞれに合わせて練習する余裕があった方がいいというか、なきゃいけないと思うんですけど、なかなかそうはいかないのが現実なんですよね。

[田]本当に馬は何をするかわかりませんからねぇ。だからこそ、練習をして、経験させるべきなんじゃないですかね。

[西]いやぁ、本当はもっと話を聞きたいんですけど、遅くなってしまいました。

[田]あ、本当だぁ。明日、起きられなくなっちゃいますよ(笑)。

[西]すみません(笑)。今年も、怪我なく、田辺さんのペースで頑張ってください。

[田]そうですよ。怪我なく1年過ごすことが大前提ですからね。

[西]今年は、どこかでこの続きを、元気さんを呼んでお願いしたいと思います。ありがとうございました。



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