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苦しい時代に支えとなってくれたビジネスサイクル
2017.4.19
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西塚信人の個人的な“名馬物語”、3頭目はビジネスサイクルです。

開始当初からこのコーナーを読んでいただいている方はご存知だと思いますが、当時の西塚安夫厩舎は倒産寸前でした。ブッチャけると、本当に競馬に行くお金すらままならない状況だったんです。

そんな状況の中、障害レースを主戦場に息の長い活躍をしてくれたのがビジネスサイクルでした。

先週お話ししましたが、僕自身がトレセンに入る前は、美浦トレセン近郊にあるサーストン牧場で働いていました。その時に、ビジネスサイクルは放牧に来ていたんです。

その当時は背中と腰が甘いといいますか、緩いタイプで、僕自身がトレセンに入る直前に障害の未勝利戦を勝ったんですよ(2005年6月4日)。

それで僕が西塚厩舎に入ってすぐに、オープン特別の福島ジャンプS(同年7月9日)に出走するんですけど、そこでいきなり問題が勃発しました。馬主さんからはできれば出走させて欲しいと言われ、厩務員さんは状態が良くないから放牧に出すべきだと言われ、その間に入って悪戦苦闘したんです。

いまにして思えば、島田久オーナーは僕たちの話を良く聞いてくださる方なので、あのレースもしっかりとお話をさせていただいていれば、出走しなくて良いですよ、という話になっていたはずです。

でも、僕自身の説明が足りなかったですし、下手だったんです。最終的には担当厩務員さんに怒られながら出走させることとなりました。

当時は18馬房なのに、13頭くらいしか入厩していない状況でしたので、トレセンに入ったばかりの僕自身担当馬がおらず、「そんなに言うならば、お前が連れていけ。たぶん走れないはずだから」と担当厩務員さんに言われて行ったんです。

つまり、人生で初めて競馬に馬を連れていった相手がビジネスサイクルということなんですよ。

結局、厩務員さんの言う通り、結果は駄目でした(12着)けど、怪我なく終わって良かったなぁ、と安堵したことをよく覚えています。

いまそのときのことを振り返ると、開業間もない調教師さんたちは多かれ少なかれ同じような経験をしているはずですよ。調教師になったからといって、いきなり強気に馬主さんに言える人はそれほど多くないと思います。

そこから、担当の厩務員さんと喧々諤々しながら、頑張っていくことになったわけですが、その方はとにかく“次はここ”と宣言するタイプでした。

ただ、ビジネスサイクルは直線がダートじゃないと結果が良くなかったんですけど、直線ダートというのはオープン特別にはなかなかなくて、それに合わせて出走させるのに苦労した思いが強く残っています。

そして、福島ジャンプSの次走から、鞍上も宗像(徹)さんにスイッチするんです。

当時、宗像さんといえば、関東の障害騎手においては、(横山)義行さん、浜野谷さんといった方々と並ぶ存在でした。そういう方に、「乗っていただけませんか」とお願いすると、「いいよ」と優しく言ってくれたんですよね。

潰れる寸前の厩舎に対して、普通に優しく接していただき、本当に嬉しかったことを覚えています。だからこそ、宗像さんとのコンビで京都のオープン特別を勝ったときには、もう言葉になりませんでした。

ブッチャけお金がありませんでしたから、障害のオープンだと勝てなかったとしても、助かるわけですよ。8着でも凄いのに、勝ったときには“これで少し息がつける”と思いましたよ。

オープンでは、宗像さんは他にもたくさん乗り馬がいました。でも、自分が乗れないときでも代わりの騎手を探してくださいましたし、お金がないときに交通費をまけてくださったりしたこともありました。本当にありがたかったですし、いま思い出してもこみ上げてくるものがあります。

その宗像さんは、いま堀厩舎で持ち乗りをされていて、モーリスを担当されていました。大きなレースを勝った時、心からおめでとうございますと祝福させていただきました。

それ以降のビジネスサイクルは勝つことこそできませんでしたが、いつも大崩れすることなく、西塚厩舎を支えてくれました。引退後は知り合いの乗馬クラブに移籍していきましたが、最後にビジネスサイクルは僕自身に、治療の効果とそれに関する経験値も教えてくれたことに感謝を伝えたいと思います。

先ほどお話ししましたが、背中と腰が緩かったために、治療が不可欠という状況もありました。そんな中、どの程度治療すればどの程度良くなるのか、ということを身をもって教えてくれました。

そのような経験も含めて、ビジネスサイクルは僕自身のなかでは、立派な名馬の1頭なんです。

最後に私事ですが、脱臼した肩の具合もだいぶ良くなり、先週は投票のお手伝いにトレセンに行きました。

いやぁ、早く仕事に戻りたいと素直に思いましたよ。

ただ、小野寺が同じ怪我をしていて、復帰までに2ヶ月を要しているんです。「痛くないと安心して動き出すと、再発しますよ」と忠告をいただきましたので、しっかりと治したいと思っています。

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