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今、改めて担当したいと思うのがディエゴという馬なんです
2017.4.26
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西塚信人が独断で選ぶ“名馬物語”の第4弾は、第3弾で登場したビジネスサイクルとほぼ同じ時期に出会った、ディエゴという馬です。

このディエゴ、西塚厩舎に所属して05年9月から10月にかけて3歳未勝利を2回使っただけという戦歴の馬で、知らない方がほとんどでしょうね。

前回も話したように、当時の西塚厩舎は預託頭数が少なく、馬房が空いてしまっている状態でした。ですから、チャンスがある馬ならば何でも預かりたい、というのが本心でした。そんなときに、ディエゴをやってみないかというお話をいただいたんです。

ただ、ディエゴは当時から人気だったフレンチデピュティ産駒、しかも牡馬ですから、何かないと西塚厩舎に来ることはまずありません。

その通り、ディエゴはクラブフットという蹄骨が変形してしまう症状を発症していました。それも、教科書に出てくるくらいの重い程度だったんです。

厩舎に来たときには装蹄などを施してもらっていたので、そこまでではありませんでしたが、クラブフットで繋が立ってしまったために、それを沈化させるために支持靭帯が切られていて、屈腱の部分も太くみえていました。言うなれば、膝の裏のあたりにゴルフボールがふたつ付いているような感じでした。

脚元を見た人はほとんど「もたない」と言いましたし、僕自身もブッチゃけ厳しいと思いましたよ。

でも、いかんせん僕自身に経験がないからこそ、やってみなければわからないと言って、藁にもすがる思いでお預かりすることになったんです。

先週も話したように、僕は担当馬のいない持ち乗りでしたので、ディエゴの面倒をみることになりました。そんな状態でしたが、実際乗ってみると前の出は少し硬いかなぁという程度で、躓くこともありませんでしたし、ヤバさもありませんでした。

今の僕がもしディエゴに出会っていたとしても、大丈夫だと思うはずなんです。経験の無さから大丈夫と思ったということではなく、経験を重ねたいまでも大丈夫と思っただろう、と思うんですよ。

実際、見た目は良くないです。でも、これが乗ってみると、背中の感じがなかなか良かったんです。いま思い出してみても、良い感じだったと思うんですよ。

この仕事をしていると、たぶん騎手の方々も含めて、“もう一回あの馬に乗ってみたい”と感じることがあると思うんです。タラレバはない世界ですが、たとえば(横山)ノリさんなら、“いまメジロライアンに乗ったら”と思ったりするんじゃないかと。

そして、僕自身はディエゴをいま担当してみたいと思うんです。もっといろいろな方法や取り組み方ができたんじゃないかと思うわけですよ。

脚元が脚元だけに、松本俊廣オーナーも駄目ならば駄目で仕方がないという思いでおられました。それだけに、故障させて良いということではなくて、少し大事にし過ぎたんじゃないかという思いが残るんです。

現実の話は、とりあえず使うことが目標になってしまいましたし、実際競馬は2回しか使えなかったんですけど、もう少し攻めても良かったんじゃないかと思うんですよ。

ディエゴ以外にも、もっと攻めても良かったと思う馬もいます。いろいろな馬たちと過ごして思うことは、馬自身の限界を乗り越えさせるようにしないと、それ以上に行けないという部分もあるということです。

脚元のことを考慮するあまり、調教をどちらかと言うと控えめにしてしまう。体重が減るからあまりやらないなど、控えめな方向に向きがちだったと思います。鍛えて強くするようなことはできていなかったように思うんです。

厩舎事情にもよりますし、いろいろな状況もあるんですけど、あのときの僕自身にディエゴに関して言いたいことは、「その程度の攻め馬では勝てないよ」ということです。

壊れないかもしれないし、脚はもつかもしれないけど、絶対に勝つことはできない。確かに脚元は見た目危ないんですけど、背中の感じや乗った感じがあったからこそ、もう少し攻めても良かったんじゃないかと思ってしまうんです。

また、ディエゴはよく落鉄をしていました。当時は蹄がそういう形をしていたからだろうと思っていたんですけど、違うんですよ。踏み込みが深かったために、引っ掛けてしまって落鉄していたんです。

硬さを感じたから、調教を軽めにしてしまったこともありました。いま振り返れば違う選択肢がいろいろあると思えるんですよ。

それでも、ディエゴに出会ったらこそ、いまの僕があると本当に思います。

手術を経験したからなのか、本当に大人しくて、人間を信用していて、本当にかわいかったんです。結果は残すことができませんでしたが、僕自身のなかで“良い馬”として存在感のある1頭です。

この前、ゴールドアリュール産駒が好きだという話をしましたが、乗った感じとしてディエゴのそれに共通するところがあったりするんですよね。ちょっと硬くて、でも力強さがある感覚です。

中学生の頃に好きだった音楽を大人になっても聴いている、というように、人間は最も多感な時期に出会った物事に影響を強く受けます。僕にとっては、経験がない時期に出会ったそれまでとは違う感覚がディエゴだった、という感じなのかもしれません。

その感覚は、いまでも僕自身に生き続けているんです。

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