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ダービーの大舞台を経験させてくれたモンストールに感謝
2017.5.10
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私、西塚信人の独断と偏見で選ぶ“名馬物語”の第六弾は、我が尾関厩舎で携わったモンストールです。

このモンストール、いろいろな意味で印象に残っている馬なんですが、何といっても初めて会ったときの完成度の高さ。これは忘れられません。ブリーズアップセール出身だったんですが、入厩してきた初日から、既に歴戦の古馬を彷彿とさせる立ち振る舞いでしたから。

2歳戦というのは気性面とか、操縦性の影響がものすごく大きいんですよね。調教でできることが多い、あるいはレースでそれ以上の対応ができるということは、もうそれだけで有利だったりするんです。

G1の朝日杯FS阪神JFであっても、競馬を走るのが3回目とかいうケースも珍しくありません。そうなると、少ないキャリアのなかで大一番で結果が出せるかどうかというのは、抜けた能力を備えている以外に、やはり完成度の高さという部分にかかってくるものだと思います。

そんな完成度の高さもあって、モンストールは新馬を(田中)勝春さんで勝って、続く新潟2歳Sを(柴田)善臣さんで勝ったわけです。

でも、尾関厩舎はこれが重賞初勝利で、いまのようにG1や重賞を勝つような厩舎ではまだありませんでした。同期で開業した厩舎の方が勝っている感じでしたし、入厩してくる馬も抜けてウチの厩舎が良かったということでもなかったと思います。

でも自分にとってみれば、なにせそれまでは西塚厩舎ですから、自分が手掛けた馬が重賞を勝つということは思いもしなかったというか、想像できなかったわけですよ。

G1を勝ったり、ダービーに出走するということはもちろん夢にはみていましたけど、いくら新しい尾関厩舎になったからといって、決して簡単ではないと思っていました。もっと言えば、自分はそんな馬たちに携わる機会は皆無なんじゃないかとさえ思っていました。

だから、モンストール新潟2歳Sを勝ったときには、俺でもできるんだと思ったんですよ。

なぜモンストールが印象に残っているかといいますと、自分の契機になったというか、良い馬に巡り会えれば、俺にもできるんだという自信を与えてくれた馬だからだと思うんですよね。

たぶん、僕だけじゃなくて、尾関厩舎全体で、“勝てるんだ”という自信になったようにも思うんですよ。

その反面、古馬のG1、重賞となると、もっと強い馬たちが揃ってきて、層が厚くなります。あそこで重賞を勝ったことで、そういう部分も意識するようになっていきましたよね。

先ほども話したように、2歳戦からダービー前くらいまではローテーションが厳しく、順調でないと出ることができません。だから、能力だけではなく、タフさ、そしてモンストールが持っていたような完成度の高さが求められます。

それが古馬になると、大前提として能力の高さがカギとなってくるわけですよ。

モンストールがそこからどう成長して、どういうレースをしてくれるのか、あの時点ではわかりませんでしたけど、そういう意識になっていました。

結果として、同じマイルのNHKマイルCでは厳しい競馬となりました(16着)。でも、あの2歳時の完成度ならば、出走していれば朝日杯FSでは良い競馬ができていたはずだと思いましたよ。

あと、ダービーに連れて行ってもらったことも思い出深いです。人生の思い出と言っても言い過ぎではありません。携わっている馬がダービーに出るということは、ひょっとしたら一生ないとさえ思えましたからね。実際、モンストール以降、ありませんから。

ダービーは本馬場入場を内馬場から入るんですけど、その風景、人の多さなど、あの独特の空気は感じたことがないとわからないと思います。それは、何度でも味わいたいと思いますよ。それを感じさせてくれたのがモンストールなんですよ。

また、あの頃から意識しはじめて、最近より鮮明に感じるのが、馬は本当に1頭1頭違って、同じ馬はいないということです。

このことは皆さん、結構簡単にそうだろうね、と仰ると思いますが、そんなに簡単には実感できないんじゃないかと思うんです。少なくとも僕自身はそうでした。

これはキャリアを積んできたからこそ、感じることが出来ているんだとも思います。でも、少なくとも僕の場合は、西塚厩舎時代にはそこまで目が向いていなかったのが事実です。

馬には個性があって、その個性をどうやって伸ばしていこうかというような意識を持ちはじめたのも、正直モンストールとの出会い以降だと思います。

また、これはモンストールが引退した時にお話ししましたが、モンストールが障害をやるか、やらないかというときに、あれだけ凄かった馬がどんどん駄目になっていく姿は忘れられません。身体がガタガタになっていってしまって、もうこれ以上走れないと身体で訴えられたように思います。

語弊があるかもしれませんが、僕たちは、馬たちがしんどい、嫌だというのを、『何とか頑張ろう』と背中を押す立場だったりします。でも、この時初めて、「この馬はこれ以上は止めた方が良い」と思いましたよ。

ノド鳴り以外、怪我もなくコンスタントに走って、優等生だったモンストールが、こんなになってしまうんだと思いましたから。

そこで馬の気持ちが切れてしまうことを実感しましたし、そういうことを分からせてくれたモンストールにはいまでも感謝しています。そして、その気持ちは忘れずにいます。

モンストールは僕自身の競馬人としての転換を促してくれた馬で、忘れられない1頭なんですよ。

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