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改めて“馬は生き物”だと気づかせてくれたサクラゴスペル
2017.5.24
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西塚信人が独断と偏見で選ばせていただいている“名馬物語”第8弾は、サクラゴスペルです。

登録を抹消されたばかりでご記憶の方も多いとは思いますが、高松宮記念に5回、スプリンターズSに3回出走し、15年スプリンターズSで2着に入るなど、稀にみるほど長い現役生活を、第一線で頑張り続けてくれました。

最初に僕としては、その長い現役生活の第一歩となった初日の出会いが鮮明に記憶に残っているんです。

入厩初日は、持ち乗り厩務員が担当する馬でも、助手の誰かが乗ることになっています。まあ、ほとんどは僕だったりするんですけど。

そういった感じでいろいろな馬に乗せていただきましたが、それぞれの馬がどのコースを乗って、どんな感じだったのかと、細かい部分までは正直覚えていないものなんです。

それが、ゴスペルのことだけはよく覚えているんですよね。ポリトラックに入ったんですけど、僕たちの言葉だとものすごく“緩い”馬だと感じました。後になってみて、それが“緩い”か“柔らかい”のかわかってくるわけですけど、その時は力がなくてフニャフニャしているような印象が強かったですね。

そういう感じの話を、小島太厩舎で助手を務める小島勝三さんにしたら、似た感覚について話を聞くことができました。

というのも、サンデーサイレンス産駒の多くがそういう感じだったそうで、普通キャンターではフニャフニャしていて、力がないように感じるのに、速いところにいくとハマって、芯が入るような感じになったそうです。

よく話をしていますが、僕自身はフレンチデピュティ産駒ゴールドアリュール産駒のように、力強さを感じさせるタイプが好きです。そういうこともあるからなのでしょうが、ゴスペルが正直ここまで走るとは思いませんでした。

それが15-15を初めてやったときに、あれっ?となったんですよ。

その時は矢原さんが乗っていてたんですけど、フニャフニャなわけですから動かないだろうと思っていたところ、軽々と走ってしまったんです。それを見て、ひょっとしたらこういう馬が走るのかもしれないなぁ、と思ったことも鮮明に覚えています。

その後は、馬場入りでごねたり、いろいろ“伝説”を作っていくんですけど(苦笑)、徐々に力強さもついて、さすがはオープン馬という感じにはなっていきました。

そういった“伝説”ですが、レースではほとんどみせなかったので、想像できない方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、馬房のなかで噛みつかれた被害者が続出しましたし、馬場入りも最後の最後まで地下馬道で乗らないと入れなかったんですよ。

本当に、何をしでかすかわからないという馬なのに、なぜかレースではまるで別馬のように素直でした。

なぜなんだろう、といまでも考えますが、わかりません。ただ、それが“センスの良さ”だったりするのかなぁと思ったりもします。

とはいえ、以前に話したように、僕が乗るとそういう悪さをみせなかったんですよね。

“体重が重いから”と言われたりもするんですけど(苦笑)、それだけではなく、恐らくアブミの長さだったんじゃないかなぁと思うんです。(横山)ノリさんでさえ引っ掛かっていたのに、僕だと全くそんなそぶりもみせませんでしたからね。

間違いなく馬自身が察知して、わかっていましたよ。そのとき、サクラゴスペルの人格というか、性格というものを見せつけられたように思いました。

それ以外にも、それまで経験したことがないことをサクラゴスペルが教えてくれました。

内田さんがゴールドシップに騎乗したときに、『生き物ですから』というコメントをされたことはご存じの方も多いと思います。そう、馬は生き物なんだ、ということです。

当たり前じゃないかという方もいるでしょうが、これが意外と忘れがちだったりすると思うんです。ファンの方々ばかりでなく、我々関係者でもそうなんじゃないかと思うんですよね。

強い馬が不可解な凡走をするケースがあります。もちろん、様々な要因があるもので、それを我々携わる側が分析して次のレースにつなげていかなければならないわけなんですけど、大前提に生き物だということは忘れないようにしなければならないと思うんです。

言葉を話すことはできないものの、我々と同じ生き物ですから、感情があります。人間でもやる気にならない日があるんですから、馬にもあるはずなんですよ。

でも、それを馬場だったり、展開だったり、枠順だったりに敗因を求めたりしがちなんじゃないかと思うんですよね。

もちろん、そういう部分にも敗因は間違いなくありますし、決して少なくはありません。ただ、そういう人間が考え得る以外の部分にも敗因があるんじゃないか、ということです。

もっと言えば、馬を完全にコントロールすることなんてできないということですよ。ロボットならば出遅れることはありません。でも、生き物で感情があって、なぜかはわからないけれど、鞍上の指示を無視する場合もある、ということでしょう。

馬にも感情がある。それを僕に身をもって教えてくれたのがサクラゴスペルでしたし、忘れられない1頭なんです。

本当に馬は簡単じゃないんですよ。だから面白いんです。

さて、僕の怪我ですが、だいぶ良くなっています。月末に検査を行い、その結果次第で現場復帰を、と思っています。

そこで“名馬物語”はここで一旦お休みにして、次回はいま問題になっている騎手のエージェントについてお話をさせていただくつもりです。改めてどうぞよろしくお願いします。

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