挫跖はいつ治るか分からないからこそ、難しいんです
2017.6.14
先週行われた
ベルモントSに日本から
エピカリスが遠征しました。僕自身もひとりのファンの気持ちで楽しみにしていましたが、残念ながら出走取り消しとなってしまいました。
その原因として、僕自身は挫跖(※)だったと聞いています。追い切り後に不安を発症していたということで、主催者側の獣医の判断を待つまでもなく早めに取り消すべきだったんじゃないかとか、あるいは挑戦そのものに対しても疑問の声があるとさえ聞きます。
※挫跖(ざせき)…走行中に後肢の蹄の先端を前肢の蹄底にぶつけた時、あるいは石などの硬いものを踏んだ時などに、蹄底におきる炎症(内出血)をいう。肢勢の悪い馬、蹄底の浅い馬、時として踏み込みの良い馬に発症しやすい。一般に前蹄に多く発症し、蹄に熱をもち、重度の跛行を呈することもある。(JRAホームページより)詳しいことは当事者でないのでわかりませんが、今回は挫跖を含めた蹄の問題と、その対応ということで話をさせていただきますので、ご了承下さい。
同じ現場で働いている者としては、今回ギリギリまで待った関係者の対応について“そうなるよね”と同意します。自分が当事者だったとしても、そういう対応になると思うんですよ。
というのも、挫跖を発症した直後は脚を地面につくこともできず、骨折かと疑いたくなるような跛行をみせることがあります。そうなったかと思うと、次の日には何事もなかったように全く問題がなく、調教さえできるケースが珍しくないんですよ。
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もちろん、なかなか症状が改善しないケースもあります。正直に言えば、蹄に関する疾病に関しては、なかなか良くなるタイミングが予測できなかったりするんです。
だからこそ、挫跖ならばギリギリまで待つ、という対応になるのは当然で、それはレース前日に何事もなかったかのように良くなってしまう可能性があるからなんですよね。
今回のケースは追い切り後に数日間調教を休んでいます。これが1週間前ならばまた違った対応になるのでしょうが、レースに向けてトレーニングをしっかりとして馬自身を追い込んでいる状態になっていますので、たとえ1、2日休んだとしても、走れる状態ではあるはずなんですよ。
エピカリスを管理する萩原先生は僕が知る限り、レースを走らせることに対してとても慎重な選択をされる方です。その先生があそこまで待ったのは少し意外でしたが、遠征をしているという状況でもありますし、アメリカですから、強い薬も使用できます。
そういう対応もした上で、ギリギリまで待っているはずです。一般的な対応としたら、僕たち現場の人間としては妥当な選択だったと思っています。
それにしても、デビューから
エピカリスのパフォーマンスを見ていて、
ユニコーンSから
ジャパンダートダービーに向かうよりも
ベルモントSに遠征した選択は、僕自身も“そうだろうなぁ”と思います。
ゴールドアリュール産駒ということもあって、僕もとても楽しみにしていました。
ただ、こういうことも含めて、海外遠征の難しさということなんでしょうね。普段と違う環境のなかで調整していくこと、そして力を発揮できるようにする難しさ。
でも、失敗を恐れていてはもちろん成功はありませんし、それを克服しなければ勝つことはできません。
時間と労力と、そして今回のように招待レースでない場合はお金も必要になる海外遠征ですが、止めてしまっては進歩がなくなってしまいます。
日本でも1勝するのが大変なのが競馬と言われているなかで、世界の強敵たちを相手に勝つというのは、様々な面において本当に大変なことだと改めて痛感しました。
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