独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン


【対談・横山義行騎手③】中山のバンケットは障害コースの中でも抜けて怖い
2017.12.20
✉️応援、質問メッセージを送る

横山義行騎手…以下[横]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]最近、平地からレベルの高い馬が障害に転向してくるケースが増えてきている感覚があります。最近の障害界のレベルの高さには、そういう影響もあるのかなぁ、と思うんですよ。

[横]降級制度がもうすぐなくなりますけど、そうすると1000万クラスの馬たちが転向してくるケースがより増えるように思いますよ。

[西]このコーナーでは何回か話題になっているんですけど、1000万で掲示板に載ったりして、まあまあ走っている馬というのは、ひょっとしたら平地でもオープン馬になる可能性を持っていると思うんですよ。

[横]未勝利と500万だとそこまで差を感じなかったりするけど、やはり1000万だと違いますよね。

[西]そう、そうなんですよ。そこには差がありますよね。走らなくても、良い馬じゃないですか。

[横]500万と1000万とは違うと感じますね。

[西]それなのに、障害になると平地で未勝利や500万だった馬が活躍しますよね?

[横]そうなんですよ。それがまた面白いところだったりするんですけどね。

[西]オジュウチョウサンも平地では未勝利でしたけど、なぜですか。

[横]平地のオープン馬でも何かが違うんだろうね。確かに障害でもひとつは簡単に勝ちますけど、そこからが続かないです。

[西]平地の重賞を勝っている馬たちがバシケーン(※2010年中山大障害勝ち馬)とかに負けてしまうわけですよ。普通に考えたらたとえ障害があったとしても、負けない、いや負けるわけがないと思いますよ。

[横]それが負けちゃうところが、障害の面白さでしょう。

[西]うちの厩舎にリミットブレイクという馬がいるんですけど、あの馬に携わらせていただいて感じることは、障害というのはレースの回数をこなすことが本当に大事だということです。いま、平地の馬は1回レースをするとすぐに放牧というケースも珍しくなくなっていますけど、馬が何でもないなら続けて走ることで良くなっていく部分もあって、それが障害では余計にそういう印象を受けるんです。

[横]確かに、続けてレースをすることで良くなっていく部分がありますよね。ただ、障害に関していえば、負担も大きいので、馬にも状況にもよりますけど、2、3回レースをしたら1回お休みという感じの方が、長く活躍できるように思います。

[西]そうなんですけど、その2、3回さえもなかったりすることがあって、なかなか続けて使うことで良くなっていく部分がなくなってしまっていると思うんです。

[横]平地では除外があって、着に来ていないと、間隔がなければ出走できないということもありますからね。

[西]でも障害はそこまでではなくて、在厩していると使えたりするんですよ。

[横]時期的なこともあるんでしょうね。

[西]第3場で未勝利戦が2つありますので、そういう時期にはある程度使えている印象があるんですよ。そういう状況的な部分はありますけど、とにかく障害馬は特に長い目で見た方が良いように思います。

[横]それは本当にそう思います。

[西]そういう意味でバシケーンという馬はそれを実証したと思うんです。長い期間在厩して調整し続けていくなかで、レースを重ねていったからこそ、G1を勝つことができたんじゃないですかね。

[横]レースを経験することで強くなっていくという部分は確かにありますよ。

[西]そこで聞きたいんですけど、障害で重賞を勝つためには何が必要なんですか?

[横]現役のオープン馬の例を挙げてみると、その馬は平地でもオープンを勝っています。ですから、普通に考えれば重賞もすぐに勝つだろうと思われていますけど、いまのままではちょっと厳しいと思うんです。なぜかと言うち、飛越が上手じゃないんですよ。



[西]やはり重賞を勝つには、飛越は重要ですか。

[横]重要ですね。そのオープン馬で言えば、東京などのレースを見ているといまひとつのところがありますので、新潟とかならば勝てるチャンスは高くなるように思います。

[西]新潟は簡単だと聞きます。

[横]障害が低いですからね。その分スピードが出ることになります。障害が低く、よりスピード勝負になる傾向が強いので、平地の脚が活きてきますよね。

[西]福島とかはどうなんですか?

[横]個人的にはあまり良いイメージはないですね。障害と障害の間が長いために、スピードが出てしまいやすくて、難しいところがあります。

[西]障害と障害の間ですか。

[横]スタートして最初の障害までかなりありますからね。

[西]そうか、東京とかはスタートしてすぐに最初の障害がありますけど、スピードをつけさせないようにする意味もあるんですね。

[横]あるでしょうね。だから、最初の障害まではあまり距離がない方が良かったりします。

[西]そういう障害レースに関する決め事みたいな部分については、障害騎手たちの意見も入るんですよね。

[横]入っています。

[西]中京は最後の直線に障害がありますけど、あれは必要なんですか?

[横]必要ないという意見もありましたが、置いてもいいんじゃないか、という意見が多かったからだと記憶しています。でも、跳びが上手な馬は、あそこで逆転のチャンスが生まれたりしますし、あれはあれで良いと思います。

[西]まさに最後のポイントという考え方になるわけですよね。

[横]高い障害ではありませんし、それほど難しさは感じないと思います。

[西]やはり難しいのは中山ですか?

[横]そうですね。でも、4大競馬場は難しいですよ。

[西]えっ、東京も難しいんですか。新潟と同じようなイメージがあります。

[横]やはり固定障害ですから、決して簡単ではありません。

[西]そのなかでも中山のバンケットは抜けているんじゃないですか?

[横]あれは特別凄い。

[西]馬の姿が見えなくなりますからね。

[横]最後のバンケットを下って、登った瞬間に一気に手応えがなくなります。

[西]あれっ、という感じですか。

[横]本当に一気になくなるんですよ。えっ、これで障害を飛ぶのかと思います。よし、と度胸を決めて飛ぶんですけどね。

[西]うわぁ、本当に怖そう。でも、あそこで落馬するケースがとても多いですよね。

[横]多いですよね。中山のあそこで落ちてしまうのはわかりますよ。手応えが一気になくなる上に、障害も結構大きいんですよ。

[西]平地では中山は先行馬有利とされていますけど、障害は最後に交わされるシーンが少なくないですよね。

[横]最後は本当に苦しくなるんですよ。

[西]そういう意味では中山は特別かもしれませんよね。

[横]独特なのは間違いありません。乗っていても、あの最終障害は怖さを感じますよ。脚がないところにきての障害というのは本当に厳しいです。

[西]最後の最後、あのバンケットを下って、登って、そして障害ですからね。

[横]手応えのない馬を飛越させるというのは、上手く例える表現を思い付きませんけど、本当に怖いものなんです。

[西]義行さんたちが怖いというのだから、本当に怖いんでしょうね。

[横]そこは実際乗ってみないとわかってもらえないかもしれませんよね。

[西]ブッチゃけてしまいますけど、競馬を乗ったことがない人間がパトロールフィルムを見て、同じ感覚を持つことはできないはずですよ。以前、久晃さん(小林元騎手)に出ていただいたときに『競馬の夢を見るときは3Dなんだ』と言っていましたけど、同じ感覚で、いろいろなことを理解することはできないと思いますよ。



[横]あのスピードだと、感覚的な部分を理解していただくのは難しいでしょうね。あと、スタートの速さもそうだったりします。

[西]あ、そうでしょうね。

[横]調教で速いと言われたりしますけど、実戦とは全くと言っていいほど差があります。

[西]実戦とゲート試験では違いますよね。

[横]感覚が違うんでしょうね。練習でも、オープン馬などはもう全然速さが違うんです。それがレースではさらに速いわけですからね。そういう感覚を味わっていないとわからないということでしょう。よくレースでも、『なぜあそこで動かないんだ』とか言われますけど、1頭で走っているわけではないですし、動かないのではなくて、動けないという状況があるということもそういう部分なのでしょうね。

[西]見るのとやるのでは大違いという言葉がありますけど、まさにそれですよ。こちらは練習で障害を飛ばすのだって、怖いと思うんですから(笑)。

[横]蓑島とか、肝の据わりっぷりが普通じゃないですよね(笑)。

[西](笑)。でも、その蓑島も含めて義行さんの話をするんですけど、みんな義行さんを慕っていますし、尊敬しているんですよ。

[横]いやいやいや。

(※次回へ続く。次回更新は12月29日を予定しています)

※西塚助手への質問、「指令」も募集中。競馬に関する質問、素朴な疑問をお送り下さい! 「こんな人と対談してほしい」などのリクエストも歓迎です!