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【対談・田辺裕信騎手②】西塚助手が印象に残った、ふたつの秋G1を振り返る
2018.1.31
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田辺裕信騎手…以下[田]
西塚信人調教助手…以下[西]

[西]田辺さんのリーディングについての話と同じような感じで、馬もちょっと強い勝ち方をすると“超大物”とか“クラシック級”とか騒ぎますよね。マスコミとしてはそうやって煽るしかないところもあるんだろうけど、そういう部分で田辺さんはスタンスが変わらなくて、馬に対してのコメントも冷静ですよね。

[田]相手が求めているコメントはしないので、苦労されているかもしれませんよね。

[西]テレビはよく出ているよね。

[田]番組によっては自由に話をしているように見えるかもしれませんけど、知らないことは言えません。新聞の方々も同じなんですけど、例えばその週の重賞で人気馬に乗るとします。どうですか?と聞かれても、その馬に乗ったこともなければ、生で見たこともないことさえあるわけですよ。

[西]いまの時代はあり得る話ですからね。

[田]どうですか?と聞かれても、知りませんとしか言えない。そこを何とかと言われても、よくわからないのに答えることはできないんですよ。

[西]えっ、そんなことを言う人がいるの?

[田]どういう作戦で行きますか?と聞かれることもあるんですよ。調教師とも話をしていないわけだし、自分で勝手に決めることはできない。最終的に任せるよ、と言われるかもしれないし、こう乗って欲しいと言われるかもしれないわけで、答えようがないんです。別に意地悪しているわけではなくて、俺に聞くことじゃないだろう、という質問をされることが多いんですよ。



[西]その結果として、「最近ハマっているものは何ですか?」というような質問になるわけですね。

[田]テレビだと、その路線でやっている番組もありますからね。

[西]まあね(笑)。

[田]あの路線を捨てて、真面目な路線になると、埋もれてしまうかもしれません。あれが好きな人もいるはずですから。

[西]番組によっては、まあまあふざけたことを言ってますよね(笑)。

[田]まあまあ言ってますよ(笑)。まあ、見ている人にとってどちらが面白いか、ということでしょう。お笑いの方々の予想に乗る人たちって、それほど多くはないと思うんですよ。それよりは競馬が見たくて、面白くて、という感じで見ている人たち向けだと思うんです。それに対して、専門家が揃って、侃々諤々を繰り返している番組もあります。どちらにもファンがいて、それぞれに好きな人がいるでしょうからね。

[西]グリーンチャンネルは1レースから放映していますし、いろいろな選択肢から選ぶのは視聴者ですからね。

[田]そういうことです。

[西]実は、いくつか聞きたいことがあるんですけど、まずは有馬記念トーセンビクトリーですよ。4コーナーではおっ?と思いましたよ。

[田]俺もおっ?と思いましたよ。

[西]あれはスワーヴリチャードの動き(※)がすべてでしたか。

(※)直線でスワーヴリチャードが内に斜行、加えてクイーンズリングが外に斜行し、2頭に挟まれたシュヴァルグラン、サクラアンプルール、トーセンビクトリーの進路が狭くなった。

[田]すべてでしたね。勝ったとは決して言いませんけど。障害レースを見ているとよくわかると思いますけど、最後はもう伸びているとかじゃない。バテ合いというか、全馬脚がない中での我慢比べなんですよ。

[西]トップホースが揃う有馬記念でさえ、そうなんだ。

[田]そうだと思いますよ。伸びているんじゃなくて、馬がどれだけタレてしまわないようにできるかということなんですよ。そういう状態でブレーキをかけてしまえば、そこから盛り返すのは不可能に近い。

[西]あそこでブレーキをかけてしまえば、リカバリーは厳しいということだよね。

[田]ただでさえ、グランプリという厳しいレースを走ってきていて、あそこでブレーキをかけて、そこからもう一度伸びてくるのは相当な力がないとできない。しかも、一番勢いに乗っていきたいところでブレーキをかけなければいけないわけですから。

[西]でも、あそこまで本当に良い感じで来ていましたよね。

[田]もう少し行きたがるかなぁと思いました。掛かるところがありますし、これはハナに行ってしまうかもしれないと思いましたよ。

[西]距離も長いのかなぁと思ったんだけど。

[田]それはわからないですね。

[西]4コーナーで勝つとは思わなかったけど、3着はあるんじゃないかと思って見ていたんですよ。

[田]4コーナーの入りですか?

[西]3着はあると思ってたんじゃないの?

[田]2番手にシャケトラがいたんですけど、そこは交わせると思いながら上がって行きました。結局、シャケトラは6着でしたからね。

[西]それにしても田辺さんと蛯名さん(サクラアンプルール)の不利の食らいっぷりは凄かったですよね。

[田]俺ももう少し良かったと思いますけど、蛯名さんはもっと良かったと思いますよ。蛯名さんこそ2、3着はあったんじゃないですか? 最後まで溜めていましたからね。

[西]かなりの勢いで弾き飛ばされていましたよね。

[田]自分も「あっ、落ちる」と思いました。年越しは病院かぁ、と一瞬思いましたよ(笑)。

[西]そう思うんだ(笑)。

[田]完全に目前の進路が塞がれていましたからね。

[西]でも、追っているわけですよね。

[田]もう無理、無理、無理。

[西]あっ、ヤバイ、スコンと手綱を引っ張るんですか?

[田]引っ張る、引っ張る、引っ張る。しかも、思い切り。当然、走ることに対しては決して良いことではありません。

[西]そうだよね。

[田]引っ張り方も、揉みくちゃになりながらですからね。

[西]でも、そこで引っ張らなければ落ちてしまうわけですしね。あと聞きたいのは、天皇賞グレーターロンドンですよ。あのレースはワープしてましたよね。あのような競馬をしようと思っていたの?

[田]内を通ろうとは思っていました。それまで騎乗していたレースで、内でも大丈夫だという感覚があったんです。あんな馬場状態になってしまうと、直線まで後ろにいたら伸びてくるのは難しいので、4コーナーでは最前列か、それに近いところにいないと勝ち負けは厳しいと思ってました。しかも、道中のペースも速くなることはありませんから、動いて行こうと。結局はキタサンブラックも内に来ましたからね。

[西]4コーナーで田辺さんよりも内を通っていましたよ。あのようなときは、あ、豊さんだ、と思ったりするの?

[田]来ていたのは分かりましたよ。

[西]俺よりも内を通っているじゃねぇか、とか思うわけ?

[田]内を通ったのは4コーナーだけでしたからね。

[西]それまでと、そこからは田辺さんよりも外を通っていました。

[田]あ、真似しないで!と思いますよ。

[西]はははは。乗り方としては、田辺さんらしい最高のセコ乗りだと思ったんですよね。

[田]結果はわかりませんからね。

[西]あの乗り方を批判するのはナンセンスだと思います。

[田]それは信ちゃんが少なからず馬に乗っているからですよ。

[西]グレーターロンドンという馬は、溜めて溜めてドンという競馬が合うんでしょう。でも、あの日に関して言えば、それをやると逆に無謀な馬場になってしまった。



[田]走る、走らない以前に、脚を取られてしまって、転倒してしまうんじゃないかと思いました。

[西]そのくらい悪かったんだぁ。

[田]イメージで言えば、入れ替えたばかりのウッドチップで、ハロー掛けをしていない状態で追い切りをやっているみたいな感じです。

[西]うわ、脚が地についていないような感じで、いつバランスを崩しても不思議じゃない感じね。少しでもヤバイ馬だったら、放せない。

[田]急に手応えがなくなったりして、これで追って良いのかと思う感じなんですよ。

[西]これに関しては、皆さんはなかなか分からないかもしれませんけど、入れ替えされたばかりで、ハロー掛けが入る前の荒れた状態のウッドチップは、何の心配もない馬でも、バランスを崩してしまう感じなんです。

[田]ただでさえ脚を取られたりするのに、さらに脚が上がってからですからね。

[西]もの凄く怖い。僕たちは普通キャンターならばハミを掛けて馬を抱えていられますけど、速くなったときにはそうはいきません。

[田]追い切りでゴールした後、流しているところで転倒してしまう馬がいますが、まさにそういう状況です。ゴール間近になって余力がなくなっているところで、脚を取られるためにそうなってしまうんです。

[西]特にウッドチップですね。

[田]あの日は、自分が乗っている馬ではなくても、どれかそうなってしまうんじゃないかと思っていました。

[西]そういう感じでしたよね。グレーターロンドンも直線でかなりノメっていたように見えました。

[田]もの凄い勢いで失速していましたよ。

[西]結果的には、向正面から早めに動いて行っていましたけど、最後に脚がなくなってしまったのは、それが原因なのか、それとも馬場状態なのか、どちらだと思いますか?

[田]馬場状態だと思います。正解なのかどうかはわかりませんけど、あのような水浸し状態の馬場というのは、頭が高い馬の方が適応力が高いように思います。

[西]それはよく言われますよね。

[田]グレーターロンドンは頭が低いんですよね。馬場が緩いとノメってしまうんです。

[西]キタサンブラックは高いです。馬自身のバランスの問題だったりするんでしょうね。

[田]ただ、もしキタサンブラックに追い切りとかで乗っていたら、もう少し頭が低くなって欲しいという感覚になるかもしれません。パク(田中博師)が言っていたんですけど、フランスの馬は日本と比べて馬場が緩いので、頭が高い馬が多いらしいんですよ。それが日本の競馬に合うかどうかは別にして、緩い馬場状態のときには頭が高い馬の方がバランスを取ることができるのかもしれません。

[西]そういう部分はあるかも。

(※次回へ続く)

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