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バンゴールの引退レースに、僕もグッときました
2018.3.14
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2月末で多くの調教師の方が引退し、3月に入ってからは新人調教師や新人騎手が話題になりました。この時期は人間も別れと出会いの季節ですが、馬たちも実はそうだったりするんです。

我が尾関厩舎に、6歳牝馬でバンゴールという馬がいます。そのバンゴールにとっても、先週土曜に行われた中山牝馬Sが引退レースになりました。

ご存知の方が多いかもしれませんが、クラブ法人所有、いわゆる一口馬主の牝馬の多くが、クラブの規定によって6歳3月までで引退ということになっています。ですから、芝のオープン馬であればこの時期に行われる中山牝馬Sで引退、というケースが多くなるわけです。

レース前に担当厩務員の方と話をしていて、「いやぁ、僕もいろいろな馬をやらせてもらってきていますけど、引退レースと分かって馬を引くことができるのは今回が初めてなんです」と言われました。

言われてみると確かに、今日が最後と分かって競馬に行くというのは、あまりあることではないんです。

競走馬の引退が決まるケースはいろいろありますが、レース後、急に決まることも多かったりします。どんな馬であっても、普段は先々に向けてのレースを考えたり、期待したりして取り組んでいますので、“今日で引退かあ”という感覚をあまり感じることがないからなのかもしれません。

まして、バンゴールのようなオープン馬や、準オープンといった上のクラスになると、人間の都合はあっても、JRAの決めたルールなどによって強制的に引退させられるということはまずあり得ません。

バンゴールを担当されていた方は、過去にはココロノアイなども担当していた厩務員さんなんです。でも、その方でも初めての経験でしたから、「レースが終わって、上がってきたら泣いてしまうかもしれません」と言っていたんですよ。

この日、僕は阪神に帯同していましたが、その姿をツイッターにアップされた方がいらっしゃいまして、それを見せていただきました。厩務員さんの泣きそうな表情を見て、これまでのバンゴールの頑張りを思い出して、僕もグッときました。

今回のことで、僕たちの仕事は幼稚園とか小学校の先生にどこか似ているんじゃないか、と感じたんです。

ただ、僕たちが先生方と違うのは、途中で転校したり、退学したりしてしまう馬がほとんどで、しっかりと卒業式を行って引退する馬はほとんどいないことです。

実際、僕自身も初めての経験でしたけど、とても良い経験をさせていただいたと思っています。やはりこういう形で馬を送り出せることは最高だ、と感じました。

毎日、毎日、馬に接して、その反応を見ていると、ついつい当たり前というか、馬との別れに鈍感になってしまいがちになっている自分がいます。もちろんそれはいけないことですし、決して馬に対して思いがないということではないです。ただ、毎日の仕事に追われているうちに、どこか馬との別れが日常的になっているような感覚があったりします。

今回、バンゴールが入厩した時の姿から、厩舎にいる間の付き合いのひとつひとつが思い浮かんできて、改めて1頭1頭に対してもっと思いを持って接するようにしたいと思いました。

バンゴール中山牝馬Sの結果は、9着でした。勝って送り出せれば最高でしたけど、無事に卒業式を終えて、送り出せたことは良かったと思います。

改めて感じるのは、僕は良い仕事をさせてもらっている、ということです。本当に、この仕事には特別な魅力があります。

読者の皆さんも働いていらして、不満を持つこともあれば、嫌気が差すこともあるでしょう。もちろん僕自身も同じだったりするんですけど、それでも毎日を頑張っていけるのは、この仕事に魅力を感じているからだと思います。

一般の方で言えば、例えば大きい商談をまとめたとか、売り上げを伸ばしたとか、いろいろあると思います。僕たちが無事に馬を送り出すことで感じる充実感というか、幸福感というのもなかなかないんじゃないかと思うと同時に、そういう部分がこの世界の魅力なんじゃないかと思うんですよね。

バンゴールは、最後にそういう充実感を僕たちに残していってくれました。もし、その子供たちに接する機会があったならば、そのときも懸命に接することでお返しをしたいと思います。

さて、先日ゲート試験についてお伝えしたレディボロニヤですが、今週エントリーする予定となっています。ゲート試験以降の話については、いずれお伝えしたいと思っていますので、まずはデビュー戦を、ぜひ応援していただければと思います。

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