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昭和の臭いのするプロフェッショナル・武士沢騎手との対談(最終回)です
2009.04.02

先週のトウショウナイトについての武士沢さんの話に、たくさんの方々から様々なご意見をいただきました。ありがとうございます。

武士沢さんとの対談も今回が最終回になります。シルクヒーロー、そして結婚についても話が出ますので、どうぞお読みください。


[西塚信人調教助手(以下、西)]トウショウナイトは武士沢さんにとって間違いなく大きな存在だったと思います。成長させてもらったというか。

[武士沢友治騎手(以下、武)]成長させてもらい過ぎたかな(笑)。いや、だってちょうどあの時期は、競馬のシステムなど、時代が変わり始めた時だったんだよね。若くて、助手云々ということもあちらこちらで聞こえ始めて、勝てないときが続いたりした時、正直、不安になったりする時もあった。変に聞こえるかもしれないけど、早い時期から勉強して調教師も含めて、他の道を目指すべきなのかとね。そういう時に出会ったのがトウショウナイトだった。


[西]えっ、武士沢さんが。でも、競馬は乗っていましたよね?

[武]確かに競馬にたくさん乗せていただいていました。何とか結果を出すことでお返ししたいし、何として上へ、上へ行きたい。でも、なかなか思うような結果が出せず、もがいている自分がいるわけですよ。『どうなんだ』と自分に常に問いかけていた。また、ちょうど大きいケガをしたりもして、不安を感じずにはいられなかったというのが本音だね。

[西]武士沢さんが、他の道を考えた時期があるというのは初耳だなぁ。大袈裟な言い方をすれば、いま武士沢さんが騎手であるのはトウショウナイトと出会ったからですね。

[武]まだ自分がやるべき仕事はたくさんあって、まだやることをやってないと気付かされた。ブッチャけさせていただくと、騎手らしいことを何ひとつしていないと思ったんですよね。

[西]騎手らしいってどういうこと?

[武]もちろん馬のことを考えながら乗っている。でも、それ以前に、気を遣い過ぎてしまっていたんだよね。馬、競馬だけを考えることができていなかったというか、集中できていなかった。じゃぁ、ナンボ集中しているんだというのはまた別の話だけどね(笑)。

[西]そうなんだ。

[武]乗り役ってこうなんだと思っていたことができていなかった。もっと競馬、そして馬のことを考えなきゃいけないというのは当たり前の話なんだけど、なかなかできない。これ現実ね。でも、上の人たちはそれをクリアして、そこにいるわけだから、頑張らなきゃ。

[西]深いねぇ、深い。でも、その感覚は分かる。

[武]もっと話せば深いんだけど、ここまで話をする騎手っていないのかな?

[西]いやぁ、過去最高の深さに突入したところですね。でも、実は馬を1頭でも多く乗せてもらうとする作業と、どういう競馬をするべきなのかとか、技術的にどう突き詰めて行くべきなのかというのは、方向がまったく逆だったりしますよね。そう思いませんか?

[武]そう、そうなのよ。

[西]預託頭数を何頭抱えた厩舎を運営するのかということと、それぞれの馬に対してベストの仕事ができているのかは別だったりする。馬房の効率を考えれば、競馬をしたら放牧という作業をグルグル繰り返す。でも、それぞれの馬の、その時々の状況で良いのかどうかは、実は違ったりする。極論で言えば、ただ使っては出し、使っては出しをすることで逆に悪くなって行く馬がいるんだよね。

[武]馬に正解はない。でも、答えを見つけようと思わなければダメだし、見つけないと生き残れないと思って頑張っているわけですよ。

[西]話は変わるけど、最近、ゴルフに行っていないらしいじゃない。結婚すると人間って変わるんですか?(笑)

[武]そんなことありません(笑)。

[西]芸能レポーターみたいなことを聞いちゃうけど、結婚生活はどうなの?

[武]おかげさまで順風です。

[西]ブッチャけさせていただきますが、ずいぶん長くお付き合いをされていましたよね。

[武]長かったぁ。いや、本当によく別れなかったと思いますよ。これ奥さんに聞かせてあげたいわ。

[西](爆笑) でも、武士沢さんは夜遊びとかあまりしないじゃないですか。

[武]面倒くさくなっちゃうのよね。

[西]しかし、相当スケベですよ。かなり変態というレベルだとみましたね。

[武]あぁ、それは否定しません(笑)。

[西](爆笑) あっ、嫁からメールだぁ。

[武]マジで!? あっ、ビックリした。お箸を落としちゃったじゃない。

[西](笑) 違いますよ、ウチのですよ。なにを焦っているんですか。というか、そもそも出会いは何だったんですか。

[武]ある人に誘われて行った食事会だったんですよね。でも、ただでさえ面倒くさがり屋だというのに、さらにその前に馬主さんと食事をしていて、8時を回ってしまっていた。もう行きたくないと言ったんだけど、付き合ってよと言われて。


[西]でも、そこへ行っていなかったら会っていなかったわけですよね。

[武]そう、そう。でもマジで帰りたかった。

[西]何か「ビビビー」と来るところがあったんですか。

[武]ちょっと違う空気を発しているなぁと感じたんだよね。

[西]ほら、来た。ピン、と来ちゃったわけだ。

[武]でも、面倒くさがり屋なので、絶対に電話番号とかを聞かないわけですよ。それは間違いない。

[西]じゃあ、そこからどうやって発展したの?

[武]いや、これ、やめようよ(笑)。

[西]ダメですよ。ブッチャけが僕の売りなんですから。

[武]別に隠すことではないんですが、ウチの奥さんと一緒に来ていた人が『また今度4人でご飯を食べよう』と言い出して、連絡先を渡してきた。それがいまの奥さんのモノだったわけですよ。

[西]それで武士沢さんから連絡したんだ。

[武]記憶にございません(笑)。

[西]政治家じゃないんだから。結局、何年お付き合いしたんですか。

[武]7年ですね。

[西]長い、長いわ。確かに、関係者の間で武士沢さんの大恋愛については有名だった。逆に、そこまで長くなるとタイミングが難しかったりするように思うのですが、何か結婚を決めたきっかけがあったんですか?

[武]2、3年目からそういう話はあったし、どちらかと言うと早く結婚したい方でしたから。ただ正直、仕事で一杯一杯になっていて余裕がなかった。

[西]あと、俺も結婚する前に感じたんだけど、この世界は独特なところがあるから、そういうところに慣れてもらうというか、準備期間は必要じゃないですか?

[武]確かにそれはある。長くなってしまったことは申し訳なかったし、時間を過ごせば分かるというものじゃないかもしれないけど、それでも、この世界の流れとか、様々なことを知ってもらわないとやっていけないよね。

[西]ウチの嫁も、この世界は特殊なことが多いって言う。

[武]それを分かってもらうというか、理解してもらわないと厳しいよね。

[西]でも、詰まるところ、武士沢さんは昭和の男だということで(笑)。

[武]そんなことないでしょう(笑)。

[西]いや、考え方から立ち振る舞いまでが昭和。というか、そろそろシルクヒーローの話に行きましょうか。

[武]あれっ。(笑)

[西]出資者の方々からもメールをいただいていますから。これでまたチャンネルに載っちゃうでしょうけど(笑)。この前の小倉(2月門司S)は見てくれました?

[武]だいぶ良くなっているように思ったけど。

[西]やっぱり、そう思う。だいぶ良くなってきているんですよ。

[武]まあ、こういう言い方をしたら怒られちゃうかもしれないけど、ヒーローはやっぱり叩き良化型なんだよ。

[西]いや、ブッチャけちゃうけど、1回とか2回じゃ無理だから。

[武]そうだよ。あれだけの大型馬であって、ただでさえ絞り難いのに、さらに脚元もあるから気を遣って攻め馬しなきゃいけないからね。

[西]絞れないからって、飼い葉で調節すれば今度は走れないし。でも本当に武士沢さんにも多くの時間を割いていただいて乗り込んでいただきました。

[武]脚元のことを考えると、一気に負荷を掛けていくのではなく、やはり競馬を走ることでフィットしていくイメージの方が良いとは思う。

[西]あっ、そう言えば、散々調教だけ乗っていただいておきながら、復帰戦は乗れなかったのですよね。

[武]あの時(08年12月フェアウェルS)は、(村田)一誠(騎手)だったんだよね。でも、調教は本当に気を遣いながら乗らせていただきました。

[西]ありがとうございます。改めて聞くようですが、武士沢さん、ヒーローって走る馬ですよね。

[武]走るよ。少なくとも俺はそう思う。ただ、人間でも靱帯やアキレス腱をケガしたところから、復活を遂げる時には相当なリスクがあるわけですよ。しかも、馬はあの4本の脚で400kg以上の体を支えているんですから、よりリスクがあるかもしれないよね。

[西]確かに。でも、本当に難しい。

[武]ある意味、いちばん恐いのは逆に良くなっていった時ですよね。

[西]そう、そうなのよ。結局競走中止になってしまったけど、追い切りではむしろケガする前よりも良いくらいに感じて、絶対大丈夫だと思った。

[武]良くなれば動いちゃうというところもあるんだけど、やはりケガをしたということは消えないし、そこは忘れちゃいけないよね。温かい目で見守っていただければと思います。

[西]これでシルクチャンネルに、武士沢と西塚のせがれ、って載っちゃいますよ、間違いなく(笑)。

[武]恐い、恐いねぇ(笑)。

[西]では、そろそろ第1回目は締めたいと思いますが、もうひとつ、武士沢さんがガンダムマニアである以前にミリタリーマニアであることを公表させていただきます。あっ、もうひとつハッキリさせておきたいのが、シルクチャンネルで武士沢友治ホモセクシャル説が流れたことについて。

[武]あれを流したのは、間違いなくあなた。困るんだよね(笑)。

[西]違うから。また何か書いてあったら教えますから。

[武]別に教えてくれなくていいから。

[西]ではまたいつか、第二弾をやりましょう。最後に読者のみなさんに約束してね。

[武]イエッサー!


武士沢騎手との対談、いかがだったでしょうか。

僕自身、武士沢さんと仕事をさせていただく中で、騎手の方々との距離感を教えていただいたと言っても過言ではないのです。今回、改めて話をして、昭和の臭いがプンプンすると同時に、トウショウナイトの話にプロフェッショナルさを感じさせられました。またいつの日か、第二弾をお願いするつもりでいます。

来週からは“大庭”が登場します。先日、対談をしたのですが、『大庭汁』たっぷりで、武士沢さんに勝るとも劣らない内容だったと自負しております。どうぞ期待してください。

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