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今週からは、『兄貴』と慕う桑原調教厩務員との対談をスタートします!
2009.08.06

先週まで掲載させていただいていた村田(一誠)さんとの対談に対して、たくさんメールをいただき、本当にありがとうございました。

非常に好評だったようですので、いつか必ず村田さんとの対談を再びやらせていただきたいと思います。

また、みなさんから様々なアイディアもいただきましたので、今後の参考にさせていただきたいと思います。

さて、今回からは、また違った角度で対談を行おうということで、稲葉厩舎で調教厩務員を務めている桑原裕之さんとの対談をお送りいたします。どうぞよろしくお願いいたします。


[西塚信人調教助手(以下、西)]今回は個人的に『兄貴』と慕わせていただいている、稲葉厩舎の桑原裕之調教厩務員に来ていただきました。読者の方にとっては、マイネルスケルツィや、福島芝1800mでの2歳馬のレコードを持つマイネルスタードなど、数々の名馬を担当している方というのが分かりやすいですかね。ということで、よろしくお願いいたします。

[桑原裕之調教厩務員(以下、桑)]よろしくお願いします。というか、俺なんかで良いの?

[西]何を言っているんですか。本当に登場していただき、感謝しております。読者の方に説明すると、西塚厩舎と稲葉厩舎が近くて、それで仲良くなったわけではないんですよね。

[桑]実は、そうじゃないね。

[西]僕がこの世界に入る前、ウチの親父はひとりで出張に行くと、目的地に付かなかったんですよね。福島に行くと言って仙台に行ってしまったり、阪神へ行くと言って岡山に行ってみたり。母親ともども本当に困っていたのです。その頃、僕はトレセン近郊の育成牧場で働いていたので、日曜日になると同行していたんですけど、ある時に阪神に遠征した際、同じ馬房で初めてお会いしたんですよね。

[桑]そうだったね。「今度、競馬学校に入るんです」って言っていた。

[西]そうです。その6ヶ月後に運動場で、俺のことを忘れているんじゃないかと思いつつ、「桑原さん」って声をかけたんですよ。

[桑]あなたを忘れるわけがないじゃないですか。そう言えば、同じ持ち乗り(調教厩務員)だったよね?

[西]そう、入った時は持ち乗りでした。

[桑]あれ、あれ、名前が出てこないけど、すごい脚をしていた馬をやっていたんだよね。

[西]ディエゴですよ。

[桑]そう、そう。

[西]桑原さんは嫌がるかもしれませんが、僕にとって桑原さんは先生みたいなものでしたから。ウチの先生は入院していて、僕は入った初日から検疫の申し込みなど番頭みたいなことをしていて、でも、馬場のルールは分かりません、みたいな感じで。

[桑]結構、一緒に調教に乗っていたよね。

[西]そう、その時にマイネルスタードをやっていて、メチャクチャ良い馬だなぁって思ったんですよ。

[桑]晩年は他の厩舎の人にも「良い馬だね」とか言われたけど、あの馬、おとなしかったんだ。一時期は、コスモバルクの誘導馬をしていたりしたんだよ。

[西]へぇ、そうなんだ。

[桑](コスモバルクが)弥生賞を使う時に美浦に来たんだけど、やはり1頭だったから初日にうるさくて馬場入りできなかったんだよ。それで誘導馬が必要だって言われてね。そういう意味では、コスモバルクが弥生賞を勝ったのは俺のお陰でもあるかな(笑)。

[西]あと、マイネルスタードですごくよく覚えているのは、脚がすごく腫れていたということです。

[桑]そう、確かに物凄く球節が巨大化していたよ。

[西]僕が入った頃って、そういうのさえも分からなかったんですよね。

[桑]でも、あれは見たら分かったよ。あからさまだったからね。馬場から上がってきたところで、知らない人に「その脚、大丈夫か」と言われたくらい腫れていた。

[西]確かに、あの脚は忘れられないかもしれないなぁ。

[桑]あのような脚だったから、追い切りも70-40くらいしかしないで、追い切り代わりという感じで、最後の方は中1週、中2週で競馬に出走していた。

[西]あの馬は1000万円下でしたよね。

[桑]そう。

[西]あの頃、ウチには1000万円下の馬とかがいませんでしたから、内心うらやましかったんですよ。俺も1000万円下の馬とかやってみてえって思いました。あっ、いまハッと思い出したんですが、新人ってどんなに生意気なことを言ってても、分かっていないんだなぁと思ったことがあったんですよ。それは、桑原さんに『Dコース三回りします』とか言っていましたからね。覚えていますか?

[桑]そうだった?

[西]『ちょっと太いから三回りします』って言ったんですよ。そんなのあり得ないでしょう。

[桑]Dコース三回りはないよね。

[西]『乗っても、ひとつ半か、ふたつまでだろう』って言われて。桑原さんに出会っていなかったら、恐ろしいことになっていたでしょうね、確実に。

[桑]止めてくれる人がいなかったわけね。でも、ディエゴに関しては脚元の関係もあって、よく一緒に坂路を乗っていたよね。みんなに『持たない』って言われていたけどね。

[西]そうですよ。読者のみなさんに説明をすると、一般的な馬は、蹄と前脚の間に繋ぎという部分があって角度が付いているんですが、ディエゴはそこがほぼ真っすぐな状態だったのです。でも桑原さん、あれは背中と腰が良かったからもっていたと思っているんですよ。背中は抜群に良かったと言えるくらいでしたから。いま思えば、もしいまの俺だったら、また違った方法で取り組むことができたんじゃないかと思うんですよね。

[桑]運動している姿を見ただけで「もたない」ってみんなは言っていたけど、一緒に走っていて、フォームが綺麗だったし、この馬ならもつんじゃないかなとは思えたよ。

[西]あと、真っ直ぐでも突っ張らなかったんですよ。でも、ディエゴは勉強になりました。前が詰まっていても、背中が柔らかくて、トモがしっかりしていればエビ(屈腱炎)でもある程度はもつんだと、ひとつの基準にはなりましたよ。

[桑]確かに走らせたら良かったよ。だから、走らない厩舎にいるということも大事なんだって。

[西]いや、本当ですよ。桑原さんもそうでしたからね。

[桑]敢えて名前は伏せますが、走らない名門と言われる厩舎にいたので、それなりに苦労しましたよ。ギリギリの馬も乗ってきたしね。


[西]でも、そういう厩舎って、調教師が細かく指示しなかったりするじゃないですか。治療費も自由で、筋注(筋肉注射)もOKみたいに。

[桑]そうかなぁ。俺は違ったよ。

[西]そうですか。実は、筋注についてなど、そのあたりのことも聞きたいと思っているんですよね。

[桑]筋注ね。俺はあまり打たない。

[西]月に1、2回ですか。

[桑]いやいや、打たないから。年に数回あるかないかだよ。それ、打ち過ぎじゃないのって思うけど。

[西]そうですか。俺はガンガン打つ方なんですけど、どう思います?

[桑]どうって…。どうしようもない時には打つけどね。目標としているレースがあって使いたいんだけど、その状態にない。でも、しがらみもあって使わざるを得なくて、何とかしなければ、という時に使う感じかな。それ以外はまったく使わない。

[西]本当に悪くなる手前ってありますよね。例えば、背中が痛い、あるいは腰に疲労が溜まってきているなかで、中2週で競馬だったとします。そうなると、競馬終わって1週間軽めにして、次の週から普通に攻め馬というパターンになることが多いと思うんですけど、1週前の日曜日の治療が大事になってくると思うんですよね。

[桑]ほぅ。

[西]えっ、治療しないんですか?

[桑]しないね。

[西]そうなんだ。でも、そこで使う前よりも、トモの入りが悪いとした時、背中や腰に原因があるとするなら、そこで打ってあげることによって、良い形で競馬に行きたいと思うんですよ。むしろ、ギリギリでは打ちたくないんです。

[桑]そうなんだぁ。

[西]そもそも、良くないのに打たないのはなぜなのって思うんですよ。これ以上攻め馬をやっていけば、さらに悪化する可能性が高いのに。

[桑]中2週で、最初の1週間は軽めとするよね。そこから普通に乗っていって、背中や腰が疲れているなぁということになると…。

[西]どうします?

[桑]電気やマイクロを当てて、疲労を取ってしまうね。

[西]それでもダメだったら、どうしますか?

[桑]普通は、そこまで悪いのなら、出走しないよね。ただ、そこまで悪くなる前に、取り除いてあげるなどの対処をするでしょ。

[西]電気だけで取るんですか。

[桑]方法はいろいろあるからね。ただ、筋注ということで言えば、よほど良くないけれど出走を回避できない事情がある時に、それでも仕方がなくレースの週の追い切り後に打つかなぁ。

[西]筋注は嫌いですか?

[桑]嫌いと言えば嫌いなのかなぁ。というか、『最終手段』という意識だろうね。

[西]僕は最終手段を連発している感じですかね。

[桑]他の厩舎ってどうなんだろう。頻繁に筋注を打つものなのかな。

[西]ブッチャけ、いまは経費節減という観点から、治療費をかけるな、という雰囲気もありますからね。ただ、それぞれだとは思いますが、あまり良くない状態から攻め馬を積んでいくわけで、良くなって行く可能性は少なく、むしろさらに悪くなっていく可能性の方が高いじゃないですか。それなら、本当に悪くなる前に手を打っておきたいと思うんですよね。

[桑]俺が思うには、厩務員というのは、そういう疲労、あるいはケガを早期に発見して、早い段階で治療をするということがとにかく大事だと思う。

[西]キッチリとケアができていれば、要らないということですか?

[桑]要らないということではないけど、でもそれほど必要じゃないでしょう、とは思う。あくまで、個人的には、早期発見、早期治療が基本だと思っているし、注射って使えば使うほど効果が薄れるところがあったりするからね。


[西]でも、それは桑原さんの腕っていうことじゃないですか。

[桑]いや、そんなことはないよ。何か特別なことをしているわけではないから。地味なことを、毎日コツコツとやっているだけだよ。

[西]マイクロをかけたり、レーザーをかけたり、ということですよね。

[桑]そうだね。そもそも注射を打つとすれば、基本的には関節の薬だけかな。筋注はそれこそ末期だね(笑)。

[西]難しいですねぇ。まあ、それぞれの厩舎の方針もあるし、個人の考え方がありますから、どちらが良いということではないのでしょうね。右前の出がちょっと悪いとか、トモの入りがあまり良くないとか、そういう時ってありますよね。

[桑]ハ行の手前という感じね。

[西]そう、そう。でも、本来は、その程度なら筋注とかを打たないで、他の手段を考えるべきなんでしょうね。

[桑]そうだと思う。まして、いまはできるだけお金をかけないで、という雰囲気が強くあるから。

[西]いやぁ、いまハッとしました。安易なんだなって。

[桑]それは遅くないですか。

[西]確かに。でも、いちばん確実な方法ではあると思うんですよ。本当に極端な言い方をすればですよ、今日入らなかったトモが明日入るみたいな効果は感じるんですよね。

[桑]ただ、その前にというか、悪くなる前に必ず何かきざしがあるはずだと思うけどね。

[西]それを感じて、マイクロなりレーザー、あるいは他の器具を使いながら、早期対応をするべきだということですよね。

[桑]そう。もちろん、慢性的に歩様の良くない馬というのもいるのは現実だし、そういう馬にはマイクロなどを照射しながら、これで仕方がないとレースに向かうこともあるよ。最近も…

今週はここまでとさせていただきます。いかがでしたでしょうか。来週以降は調教厩務員としての真髄に迫っていきますので、どうぞお楽しみに。

さて、仕事ももちろん頑張っているのですが、その一方で今年はノビーズにも力を入れたいと思っています。

ライヴについてのメールをいただきましたが、9月には詳細をお知らせできると思います。いまオリジナル曲に取り組んでいまして、CD制作にも取り組んでいるところですので、どうかそちらもよろしくお願いいたします。

ということで、最後はいつも通り、『あなたのワンクリックがこのコーナーの存続を決めるのです。どうかよろしくお願いいたします』。

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