今週は(田中)博康にシルクメビウスについて語ってもらいました
2009.11.26
先週はノボパガーレが3着と頑張ってくれましたが、前回出走する際に楽しみだと話をしたバンダムローゼは8着という結果になってしまいました。
2戦目ということで上向いてくれるという思いがありましたし、上の方(松岡騎手)とのコラボでの勝利を夢見たんですけどね。
成長期ということで安定しないところがあり、なかなか思うようにいかない部分もあって難しいのですが、力はあると思いますし、良くなる余地を感じさせられますので、必ず走ってきてくれると信じています。
先週の話はこのあたりにして、タナパク(田中博騎手)との対談の2回目をどうぞ。
[西塚信人調教助手(以下、西)]クィーンスプマンテは京都大賞典から栗東に滞在し続けているよね。(編集部注:この対談はエリザベス女王杯の1週前に行っています)
[田中博康騎手(以下、田)]大賞典前から滞在しています。来週1週間は、僕自身も栗東に滞在して、追い切りに乗って本番に向かうことになります。
[西]今回は行っちゃうのかなぁ、逃げちゃうのかなぁ。まあ、これが読者のみなさんに読まれる時には、結果が出ているけどね。
[田]もちろん逃げちゃいます(笑)。
[西]女馬同士だと行きやすくないか?
[田]女馬同士と言っても、強いのが1頭いますからね。ただ、他とは牝馬同士だと差がないと思いますので、良い競馬ができるんじゃないかという思いはあります。
[西]京都大賞典も9着とはいえ、大きく負けていなかったよな。
[田]そうなんですよね。牡馬、しかもG1馬もいる中での競馬でしたし、それほど差を付けられたわけじゃなかったので、良い競馬ができると思っているんですよ。
[西]頑張って来いよ。応援しているからな。ところで、話は変わるけど、最近、『タナパク』と呼び始めたのは誰だということが話題になっているらしいよ。
[田]そうなんですか(笑)。
[西]かなりの確率で、俺だと思っているんだけど。
[田]それについては、いろいろな説がありますよね。勇人(的場騎手)が「俺が言ったんだ」と言えば、吉田先輩(吉田隼騎手)も「俺が最初」と言うんですよ。ただ、信人さんに学校時代に『デンパク』と呼ばれていたのは、鮮明に覚えているんですよ。
[西]『タナパク』じゃなくて、『デンパク』。
[田]そうです。学校の時から言われていました。
[西]そうだよな。『ウチパクに対抗してのデンパク』とか言ってた。
[田]よく「ウチパクがあってのデンパク」とか「ウチパクかデンパクか」とか言ってましたよ(笑)。
[西]そうだ、「ウチパクとデンパクのA、B」とか言ってた(笑)。
[田]『デン』と『タナ』の違いはありますが、信人さんなのかなぁ。
[西]博康としては、誰に最初に呼ばれたという認識があるの? 言われてみると、ハヤトはハヤトでも的場勇人かなという気がしなくもないんだよ。でも、俺もいい線いってると思う。それほど着差はない。クビ差ない気がするんだよ。
[田]言われてみると、ほぼ同じような感じなんですよね。
[西]この際さ、俺ってことにしたらどうよ?
[田]そうしますか(笑)。
[西]的場勇人には俺からよく言っておくから(笑)。
[田]そうすると、「タナパクと初めて呼んだ人は?」と聞かれたら、信人さんと答えることになるわけですよね。
[西]そう、そう。「ちょっとガタイのいい、小太りな某調教助手、あっ、ノビーズのデブが名付け親です」と言えばいいんだよ(笑)。
[田]なるほど。ノビーズと言うと格好良く聞こえるかもしれませんね(笑)。
[西]『タナパク』の話はこれくらいにして、競馬に話を戻そう。デビューしてここまで、自分自身で劇的に上手くなったというか、変化した瞬間みたいなものを感じたことってあるの?
[田]劇的にということはないですねぇ。1年1年というか、徐々には変わっているなぁと感じるところはありますけど、自分自身ではあまり分からなかったりします。
[西]俺はよく分からないんだけど、アブミの長さとか肘の角度とか、よく言われるポイントは意識したりするの?
[田]そうですね。僕は特に意識する方です。こう乗りたいという理想があるんですよ。実際、そうは乗れないんですけどね。もう毎日、こうするべきか、いやそうじゃないとイメージ、あるいは確認しながら、木馬に乗っているんですよ。
[西]研究しているわけね。
[田]そういう時間というか、考えるのがすごく好きなんですよ。1週間が始まる時点で、目標を見つけて、意識するようにしているんです。『今週は、お尻の位置をこういうイメージで』とか『追っている時に肘の位置をこうして乗ろう』というようなことを、月曜日の夜に寝る前に考えるんです。
[西]へぇ、そういうことをしているんだ。
[田]ただ、多くの場合は1週間でできるようになるほど、簡単じゃないですけど、とにかく意識していないとできるようにはなりませんからね。
[西]デビューした当時と比べて、いちばん違うところを具体的に説明しろと言われたらどこ?
[田]それは余裕が全然違うというところですね。レースに行っての気持ちが違います。
[西]スタイルというか、騎乗フォームでは?
[田]アブミの長さも全然違いますし、鞍の上でバランス良く乗れているかなぁとは思います。もちろん、いまでも全然まだまだなのですが、デビューの時はひどかったですから。
[西]そうだったか。あまり記憶にないなぁ。
[田]いやいや、初勝利の時の映像なんて、もう見たくありませんからね。
[西]あっ、そう。それほど違うんだ。
[田]よくあんな乗り方で勝つことができたなと思いますよ(笑)。
[西]ブッチゃけ、技術的なことってよく分からないんだけど、そんなにアブミは短くなっているの?
[田]デビューの時から短かったんですが、いちばん短い時と比べると、今はそうでもないですね。短ければ良いというものではないと、僕は思います。
[西]短くしたり、長くしたりするのはなぜ?
[田]短くするのは、よく言われるように負担というか、より抵抗がないようにということですし、また見た目にも綺麗というか、格好良く見えるということでもありますよね。それに対して、バランスというか安定感を求めるなら、長い方がよりバランスが取りやすいということですよね。なんか一般的な見解ですみません。
[西]いや、そんなことはないよ。短い時の良さというのは、具体的には他に何かある?
[田]やっぱりアブミが短い方が、体をたたみやすくはなりますよね。
[西]肘とかは?
[田]下にある方が良いというか、脇が開かない方が良いというか、言葉にするのが難しいですね。ただ、そう言われますけど、そうじゃない方でも結果を出していらっしゃいますからね。
[西]手綱の引っ張り方も騎手と調教助手では違ったりするけど、これがベストということではなく、あくまで人それぞれということなのかな。
[田]そういう面はあると思います。
[西]よし、そろそろアクセルを踏んでいこうか。初重賞となったシルクメビウスについて教えてよ。あれは小倉からのコンビだったよね?
[田]そうです。小倉で500万特別(くすのき賞)を勝たせてもらったのが最初でしたね。その週の某週刊誌を見たらグリグリの二重丸が並んでいましたし、実際にレースを見ても『なんて強い馬なんだ』と思わせられていたので、とにかく楽しみだったんですよ。
[西]覚えてるよ。1700ダートだったよね。
[田]そうです。でも、前走に乗っていた奴とかが、不安な要素を言ってきていたんですよ。
[西]えっ、誰が乗ってたんだっけ?
[田]浜中です。『メチャクチャ能力はありますが、メチャクチャ引っ掛かりますから』という話をされたんですよ。実は、今だから言えますけど、あの週は風邪を引いてしまっていて、大丈夫かなぁという感じだったんです。でも、そんなの吹き飛んでしまうくらい強い競馬でした(5馬身差勝ち)。
[西]その後、続けて乗ったよね。
[田]はい。当然ですが良い馬ですし、また乗せてもらいたいと思いましたよ。ただ、関西馬ですので、関西の騎手に頼むと言われてしまう可能性が高いかなぁと思ったわけですよ。それが次の端午ステークスの時に、領家先生が『乗りに来るか?』と言ってくださったんです。本当に嬉しくて、嬉しくて。
[西]そこも含めて、ユニコーンSまでは博康とシルクメビウスの不敗神話が続いた。でも、ジャパンダートダービーでテスタマッタにやられてしまうわけだ。
[田]そうです。いやぁ、本当に……やられました。
[西]テスタマッタって、それまで1200とかを走っていた馬だよね。
[田]そこまでのテスタマッタのレースぶりを見ていて、距離も延びるあそこでは強く意識させられていなかったんですよ。あの朝に、あるトップの中のトップの先輩と話をした時にも『これは4頭立てのレースだという意識だぞ』と言われたりしていたんです。
[西]その4頭の中にテスタマッタは入っていなかった?
[田]入っていませんでした。先輩と話す前に、僕自身も4頭が相手だと思っていたのですが、さらにゲートが開くと前にその4頭がいたんです。この馬たちを交わせば勝てるという意識になりました。その中の1頭だったグロリアスノアが3コーナーで動いて行った時に、一緒に動いていったというか、行ってしまったんですよ。
[西]直線では人気になっていたゴールデンチケットを射程圏に収めていたよね。
[田]そうです。スーニは3コーナーで手応えがなくなってしまっていましたし、直線でゴールデンチケットを交した時には『行けるぞ』と思って必死に追ったんですけどね。
[西]そうしたら内からスルッとテスタマッタが来てしまったわけだ。
[田]朝に岩田さんとも話をしたんですが、厳しいというような話をしていたんですよ。元気がなかったくらいの感じでしたからね(笑)。
[西]そうだったんだ(笑)。
[田]後で、岩田さんも「いやぁ、驚いた」と言っていましたからね。
[西]へぇ、そうだったんだ。でも、今年の3歳のダート路線は強いよね。
[田]そうなんですよ。ビックリするぐらい強い馬たちがたくさんいます。
[西]松岡が乗って勝ったトランセンドもいれば、グロリアスノアとかワンダーアキュートとか強い馬たちが揃っている印象がある。でも、シルクメビウスにまた乗れて良かったな。
[田]本当にそうです。レパードSの1週間前にケガをしてしまったんですよ。すごく楽しみにしていましたから、『えっ、嘘だろ』と思いましたし、もう泣きそうでした。でも、その後にまた乗せていただいて、本当に感謝しています。
今週はここまでとさせていただきます。
話の最後に出たシルクメビウスについてですが、先週、京都のトパーズSを勝ちましたよね。今回の対談の後、博康と話をしたのですが、「この対談に出たお陰で何かが見えました。大切なことを思い出すことができ、初心に帰ることができました』と言っていましたので、今週以降の博康にもぜひ注目してください。
あと、今週末は、29日(日)にノビーズのライヴです! お時間のある方はぜひ来ていただければと思います。プレゼント大会も予定しておりますので、ご参加をお待ちしております!
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