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速攻レースインプレッション

いつか息子エタリオウの背中にまたがる姿を見たい

文/出川塁、写真/小金井邦祥


馬名の由来は「得たりおう。うまくしとめたとき、応戦するときに発する言葉」。なんとも趣があるではないか。

昨年の菊花賞②着以来となったエタリオウの単勝オッズは2.1倍。これもまた味わいがある。強い今年の4歳世代でも屈指の実力馬で1倍台になってもおかしくはないのだが、主な勝ち鞍は「2歳未勝利」。勝ち切れない馬であることは誰もが知っている。

お世辞にもスタートが上手いとは言えない馬が、今回はまずまずゲートを決めて、ひとまず馬群の中に陣取る。ところが、むしろ気がはやっているのか、序盤はいつになく行きたがってミルコ・デムーロ騎手も懸命になだめている。折り合いがつかないというほどではないが、スムーズな走りとも言い難い。

3角の手前からマクって逃げるメイショウテッコンに並びかけたのは、エタリオウのはやる気をそらさないための一案だったのだろう。もちろん、唯一の勝利レースが最後方からのマクリ勝ちだったこともデムーロ騎手の頭に入っていたはずだ。

しかし、最後は序盤のロスが響くかたちとなった。直線の坂下まではメイショウテッコンに追いすがるも、坂を駆け上がるところで突き放されてゴールイン。③着のサクラアンプルール以下を寄せ付けなかったのはさすがだが、これで3戦連続、通算では7回目の②着に終わり、またしても重賞タイトルには手が届かなかった。

そして、エタリオウのことを語るときには、父ステイゴールドに触れずにはいられない。父もまた「ゴールド」という名前に反して、先頭でゴールするまでには長い時間がかかったものだ。そのぶん、ついに栄冠を手に入れたときは誰よりも祝福された。いつかエタリオウにも「得たりおう」と快哉を叫ぶときが来れば、全員が惜しみない拍手を送ることになるだろう。

それにしても、ステイゴールドに初めての重賞タイトルをもたらし、有終の美を飾らせもした武豊騎手が、初めて1番人気に推されたエタリオウの勝利を阻んだのはいかにもの出来事だった。昔から競馬ではこうした因縁が不思議とつきまとう。

過去2走は得意の先行策に持ち込めずに敗れていたメイショウテッコンだが、今回は1枠1番から好発進を決めてすんなりハナへ。事実上、この時点で勝負は決していたといっても過言ではないかもしれない。

武豊騎手が白い帽子をかぶって逃げれば、あとはもう変幻自在。残り1000mまでは1F12秒後半~13秒台のゆったりとしたペース。そこからは11秒台~12秒のラップを刻んで、昨年のラジオNIKKEI賞以来となる重賞2勝目を飾った。

また、武豊騎手は50歳台での重賞初勝利となり、日経賞もこれが初制覇。同日に関西で毎日杯が行なわれ、ドバイミーティングと重なることも多いため、そもそも過去に2回しか乗ったことがなかった(うち1回は阪神開催となった11年)。

先週まで全国リーディング2位につけているように、今年の武豊騎手は快調なペースで勝ち続けている。騎乗履歴を見ると、今年は重賞開催のない小倉や中京にも遠征するなど、これまでとはすこし騎乗パターンが変わってきたようにも見受けられる。

理由のひとつには、今年から騎乗依頼仲介者、いわゆるエージェントが変更となったこともあるのだろう。過去に騎乗機会が少なかった日経賞に乗ることになったのも、そうした影響があるのかもしれない。

まもなく平成が終わるのと軌を一にするかのように、将棋の羽生善治九段が無冠に転落し、野球のイチロー選手が引退するなど、ひとつの時代の終わりを感じざるをえない出来事が続いている。

そんななかで武豊騎手が全盛期に迫る勢いで勝っているのは、競馬ファンとしてはどこか誇らしい気持ちになる。50歳になっても変化を恐れず、進化を求め続ける不世出のジョッキーが、いつかエタリオウの背中にまたがる姿を見たいというのは、だけではないはずだ。


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