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速攻レースインプレッション

1周回ってまた進化した日本競馬、その象徴がドウデュース!

文/鈴木 正(スポーツニッポン)、写真/瀬戸口 翔


今年で44回目を迎えたジャパンC。創設当初は外国馬の底知れぬ強さに目を見張り、「シンザンを超えろ」を合言葉にした。以来、苦汁をなめ、研さんを積んだ日本競馬。いつしか世界トップクラスの競馬強豪国となり、ジャパンCの優勝争いは、いつも日本馬同士という、矛盾というか、ジレンマに陥った。

しかし、今年の一戦は、近年のジャパンCとはちょっと違っていたのではないか。海外の強豪が「ジャパンC優勝馬」という金看板を求め、参戦する。その元年となったように思うのだ。

「ジャパンCは世界を見渡してもベストレースのひとつ。難しいレースになると思うが勝ちたい」。厩舎の至宝・オーギュストロダン(⑧着)を送り込んだエイダン・オブライエン調教師の言葉に嘘はない。まるで我々日本人競馬ファンが凱旋門賞を表現するような言葉ではないか。つまり、ジャパンCはすでにそういうレースのひとつなのだ。

昨年、ジャパンCがワールドベストレースに選出されたこともあるだろう。世界を席巻する日本馬を見て、その最高峰を競う一戦に管理馬を送り込みたいと熱望することも調教師の本能だ。この先、世界トップレベルの外国馬が続々と参戦する…そんな予感がする。

前置きが長くなった。つまり、世界中の競馬ファン、関係者が注目する一戦を勝ち切ったドウデュース桁違いだったということだ。世界に誇るべき日本最強馬ということだ。

流れは全くドウデュース向きではなかった。1000m通過は62秒2。最後方で折り合いに苦労する様子がターフビジョンでも見て取れた。

だが、そういう苦しい場面でも「プランB」があるのがドウデュースの強みだ。「プランA」天皇賞・秋で見せたような桁外れの末脚で全てをのみ込む競馬なら、「プランB」は道中で少しずつ脚を繰り出し、最終的に勝ってしまう作戦。3角過ぎで上昇して4角3番手に取り付き、押し切った昨年の有馬記念が、このプランだった。作戦は決まった。今回の武豊騎手は3、4角中間から上昇した。

4角では7番手。真横に付けられたオーギュストロダンムーア騎手は「もう来たのか」というムードだ。この時、先頭のドゥレッツァまで約5馬身と迫っていた。

そこから先が圧巻だ。残り350m付近でドゥレッツァを捉えたが、この時のドゥレッツァの時速が約66キロ。ところがドウデュースが並んだ瞬間、時速67.3キロを計時した。懸命に食い下がるドゥレッツァ、インからさらに速いスピードで忍び寄るシンエンペラー。ゴールの瞬間。ドウデュースがクビ差、同着の2頭をねじ伏せていた。

「(勝負どころで)ある程度行かせたら、ものすごく勢いがついて、あっという間に先頭に立ってしまった。心配したけど、そこで保ってしまうのがドウデュース。乗っていて凄いなと思う」武豊騎手の言葉が、もの凄く腑に落ちる。3角あたりから少しずつ、小出しに脚を使っていたのだ。4角手前でグッとギアを上げ、ドゥレッツァを交わした。並の馬なら、そこでホッとして周囲と脚色が同じになる。ドウデュースはそうではない。しっかりと前に出て、ライバルを振り切った。やはり非凡なのだ。

思えばドウデュースの父ハーツクライも、作戦にオプションがあるタイプだった。凄まじい決め手を繰り出したかと思えば、05年有馬記念では、あっと驚く3番手追走からディープインパクトに土をつけてみせた。豪快に見えて器用。ドウデュースも父の多様な強さを引き継いでいる。いくつもの才能がある。つまりは「天才」だ。武豊騎手とプレゼンターのイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が表彰台でがっちりと握手する姿を見て、その2文字が浮かんだ。見たままというか、表現力が乏しくて申し訳ない。

この勝利でドウデュースは秋のG1を連勝。1着賞金2億2000万円の天皇賞・秋に続き、ジャパンCで5億円を獲得した。引退レースの有馬記念で連覇を決めれば、1着賞金の5億円に加えて報奨金の2億円もゲットする。秋の“3冠"達成なら00年テイエムオペラオー、04年ゼンノロブロイ以来の3頭目。だが、上記2頭とは、また意味の異なる快挙となる気がする。

何というか…、日本競馬が進化を遂げ“1周回った"ような気がするのだ。強豪古馬が秋は必ず3戦する時代があった。だが、間隔を空け、疲労を取り去ってロングショットを狙う時代が続いた。そこでドウデュースが登場する。1戦ごとの消耗が激しい時代にあって古き良き“秋3戦"ローテーションに挑み(実際、昨年も歩んだ)、しかも全て勝つかという勢い。温故知新、古き良き時代への回帰によって強さを示す。それがドウデュースの本質だと思う。

しかし“1周回って"という表現がエイダン・オブライエン調教師あたりに伝わるかどうかは定かではない(苦笑)。日本人競馬ファンだけが楽しむ言葉としよう。

「1周回って、また進化した日本競馬。その象徴がドウデュース!」

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