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速攻レースインプレッション

今まで通りのスタイルを貫き、栄冠をつかみ取った

文/山本武志(スポーツ報知)


オークスの予想は本当に難しい。ただでさえ、繊細な牝馬のレースだというのに、1冠目の桜花賞から距離が800mも延び、舞台も関西から関東へ替わる。しかも、今年の桜花賞は当日に大量の雨が降り、力を要する道悪の馬場。一方、この日の東京芝は3歳1勝クラスのマイルで1分31秒台が出るほどの高速馬場。求められる適性は明らかに違っていた。

これだけ不確定要素が多い中、桜花賞では2番人気だったデアリングタクトが単勝1.6倍の圧倒的な支持を集めていたのは少し驚いた。2000年以降の勝ち馬ではブエナビスタ(09年、1.4倍)、シーザリオ(05年、1.5倍)に続く人気で、あのアーモンドアイだって、オークスでは単勝1.7倍。桜花賞で②着だったレシステンシアNHKマイルCに路線を切り替えたとはいえ、この「1強」という人気を見た瞬間にはびっくりした。

スマイルカナが予想通り、後続を離しながら引っ張った前半1000mは59秒8。この日の馬場を考えると決して速い流れではない。勝負どころで馬群がグッと凝縮した時、後方5番手で馬群の中にいたデアリングタクトの姿に正直、厳しいだろうなと思った。しかも、直線ではラスト300mまで満足に進路ができず、追い出しを待つようなシーン。しかし、だ。馬群をこじ開けるように進路を確保すると、ここからの伸びが強烈だった。レースの上がり2ハロンが11秒2、11秒8というラップの中、ゴール前では一頭だけ、推進力がまるで違っていた。「強い」としか言えないレースだった。

57年のミスオンワード以来、史上2頭目となる無敗の桜花賞馬によるオークス制覇。この半世紀を超える偉業を成し遂げたのは開業後まだ4年も経っていない杉山晴紀調教師だった。実はレース前週に約1時間、ジックリと話す機会があった。その時に非常に印象的だったのが非常に淡々とした口調で、落ち着き払っていた様子。約63年ぶりの挑戦という話を振っても、「相手関係というのは普段からあまり意識しないタイプ」と切り出された後、「いずれ負けますからね。これで負けなら仕方ないという状態で負けるなら、それが競馬ですから」と言葉を続けた。その表情はまったく変わらなかった。

しかし、冷静ながらもブレない強さが内在する。常に一生懸命走るタイプということを考慮し、一戦一戦の間隔を十分に空けての起用。エルフィンSの後はトライアルを使わず、桜花賞へ直行することをすぐに決めた。今回は桜花賞とは条件が大きく変わる一戦だったが、「桜花賞からのスパンを考えると、調整を変えたりすると中途半端になる。桜花賞の状態を維持することが大事だと思います」と特別なことは何もしなかった。あとは「同じジョッキーが乗ってくれることが何より」とG1で初の1番人気馬への騎乗となる松山Jに全幅の信頼。今まで通りのスタイルで大一番へ臨み、つかみ取った栄冠だった。

これで4戦4勝。今回は高速決着にも対応し、直線で進路を確保するまでに時間を要しながら、上がり33秒1の脚を繰り出すことで一級品の切れ味も証明した。先述したように単勝1倍台でオークスを勝った馬は歴史に名を残すような名牝ばかりだが、このキャリアを考えれば「伸びしろ」は十分にあるだろう。杉山晴調教師松山Jとの若さにあふれるチームが歴史的名牝へと育て上げていく過程を、楽しみに見届けたいと思っている。

②着のウインマリリン、③着のウインマイティーは別路線組。ともに2000mからの転戦だった。決して速くはなかったと思うが、スマイルカナはこの高速馬場で切れより持久力勝負に持ち込みたいタイプ。ペースを緩めない先行策を打った結果、持久力に秀でた2頭が浮上したということだと思う。今後に向けて楽しみなのは④着のリアアメリア、直線で久々に「ギア」が入ったような鋭い伸び脚を繰り出した。十分に復活への「きっかけ」となり得る走りで、早く本来の姿を見たい。2番人気のデゼルは⑪着。キャリアの浅さが出た形だろう。

今週の東京の競馬を見ると、例年のことだが非常に時計が速い。ただ、決して先行有利でもなく、高速馬場ながらオークスの上位3頭にディープインパクト産駒が一頭もいなかった。来週はいよいよダービー。コントレイルという絶対的な主役がそびえ立つ中、この高速馬場でジョッキーたちがどんな競馬で逆転を狙い、仕掛けてくるのか。その駆け引きにも注目しながら、競馬の祭典を楽しみたい。




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