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速攻レースインプレッション

桜花賞では勝者を称賛、オークスでは巻き返しに期待する

文/出川塁、写真/瀬戸口翔


今年の桜花賞で少し話題になったのが、C.ルメール騎手の騎乗馬が12番人気のフォラブリューテだったことだ。2015年のJRA移籍以降、G1で10番人気以下となったのは6回目。うち3回は移籍初年度の2015年で、翌2016年に1回。2017~21年は一度もなく、今年に入ってフェブラリーS、桜花賞と続いた内訳となる。

ルメール騎手は短期免許時代から名手としての評価を確立していたが、それでも移籍当初は10番人気以下でG1に臨むこともあった。その後、全国リーディングに輝いた2017~21年は一度もなく、今年になって久しぶりに乗るようになったという推移だ。

今年は海外遠征や新型コロナの陽性判定などもあってリーディング4位にとどまる(年4月10日終了時点)。ルメール騎手がG1で10番人気以下に乗るかどうかは、全国リーディングを獲れるか否かと連動していて、今年もいまのところそうなっているが、最終的にはどうなるだろうか。

サウジカップデーで重賞4勝と大活躍したルメール騎手だが、JRAに限ると桜花賞まで重賞未勝利で、これは2012年以降ではなかったことだ。騎乗する機会が多かった藤沢和雄厩舎の解散という環境の変化があったが、外から見ている以上に大きな影響を及ぼしているのかもしれない。

一方、1番人気のナミュールを任されたのは関東の若きエース・横山武史騎手。阪神JFまで同馬には3戦とも異なる騎手がまたがっていたが、テン乗りのチューリップ賞で重賞初制覇に導いた横山武騎手が初めて連続騎乗することとなった。

しかし、大外18番枠を引いたこともマイナスに働いたか、今回は末脚が不発。後方寄りで追走して直線勝負に賭けたものの、伸びあぐねて⑩着に敗れてしまった。また、もう1頭の人気のハービンジャー産駒プレサージュリフトも⑪着に終わっている。

両馬とも33秒台の末脚を評価されたのだろう、上位人気に支持されることになった。実際、桜花賞の上がり3Fも変わらず33秒台を記録しており、自分が使える脚はしっかり使っている。ただ、近年の桜花賞は良馬場なら1分33秒台を切るのが普通で、今年の勝ち時計も1分32秒9。ハービンジャー産駒にはタイムが速すぎるのではないかという不安はあり、危惧していた通りの結果になってしまった。

ハービンジャーという種牡馬を偏愛していることは、この「速攻インプレ」でも過去に何度か触れている。欧州出身のハービンジャーは序盤から急がされる展開が苦手で、前半はゆっくり走りたいという傾向が見られる。しかし、1分32秒台のマイル戦では望むべくもなく、前半からある程度の脚を使っていかざるをえない。

だから馬場が渋れば多少は戦いやすくなるとも思っていたのだが、ハービンジャーマニアのにとっては無念の良馬場。ソダシがコースレコードを更新した昨年ほどではなくとも、ハービンジャーには速すぎたのだろう。

ペルシアンナイトもブラストワンピースも種牡馬入りしないという、ハービンジャーマニアには悲しい出来事もあった。それでも現3歳世代からは桜花賞の人気2頭のほか、牡馬でもアライバルや戦線離脱が惜しまれるリブーストなどの素質馬が出ている。種牡馬としてはそろそろ晩年に差し掛かっているが、はまだ超大物の出現を諦めていない。

ついついハービンジャーのことで熱くなってしまった。最新の桜の女王にここまでまったく触れていないではないか。勝ったのは7番人気の伏兵スターズオンアース。1勝馬による勝利は2016年のジュエラー以来で、社台ファーム生産馬桜花賞制覇も同馬以来だ。スターズオンアースは翌2017年の桜花賞で③着だった同じ社台ファーム生産のソウルスターリングのめいにあたる血統で、その雪辱を果たした格好ともなった。

前2走はフェアリーS、クイーンCで先行していずれも②着。川田将雅騎手に乗り替わった今回は差す競馬に転じ、直線の半ばまで馬群の真っ只中にいる厳しい展開となったが、残り200mを切ってから素晴らしい伸び脚を披露した。前日の落馬事故を引きずることなく、馬群を割って末脚を引き出した川田騎手の手綱さばきも見事だった。

②着ウォーターナビレラは2番手から早めに抜け出し、最後までよく粘ったが、惜しくもハナ差敗れた。武豊騎手武幸四郎厩舎による兄弟コンビのG1制覇は今回もお預けに。③着ナムラクレアも距離不安説を跳ね返してG1好走を果たした。

さて次はオークス。もちろん、の期待はハービンジャー産駒の巻き返しである。過去の産駒はオークスで[0.1.0.5]で、好走は2017年に6番人気②着のモズカッチャンだけ。というと相性が悪いようだが、10番人気④着のジェラシー、9番人気④着のディアドラがいて、6頭中5頭は人気より上の着順と、数字の見た目より内容はある。

少なくとも桜花賞より前半のペースは遅くなるはずだし、距離延長も得意だ。人気は落ちるだろうし、条件は好転する堪らないシチュエーション。取らぬ狸のなんとやらではないが、ハービンジャー産駒が何頭激走するのか、はもう勘定を始めてしまっている。


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