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速攻レースインプレッション

「一流ステイヤー」ではなく「国内最強馬」の座を手中に収めた

文/木南友輔(日刊スポーツ)、写真/瀬戸口翔


現場で取材するようになって十数年…、宝塚記念を前に、今年の春ほど「関東馬が強い」と思ったことはなかった。振り返ると、昨年の春も東京開催5週連続G1で関東馬が初めて4勝を挙げた躍進の年ではあったのだが、今年は昨年以上のインパクトがあった。

高松宮記念ナランフレグと丸田騎手の涙のG1初制覇。桜花賞を高柳瑞厩舎のスターズオンアース(オークスで牝馬2冠)が制し、皐月賞はジオグリフとイクイノックスで木村厩舎のワンツー。春の天皇賞はタイトルホルダーが7馬身差の圧勝。ダービーは武豊騎手とキーファーズのドウデュースが優勝したけれど、安田記念はソングラインが制し、関東馬のワンツースリーとなった。

新型コロナウイルスの感染拡大が始まった一昨年以降、なるべく移動を減らそうということでも栗東への取材を自重し続けているのだが、この春は美浦トレセンの取材がとにかく楽しく、「美浦で取材できて良かったなあ」、そう思うG1が多かった。「1強」と言われるノーザンファーム生産馬だけでなく、個人馬主&牧場の馬、老舗の社台ファーム、岡田スタッド。各馬のプロフィールにも個性があった。

そんな上半期を締めくくったのが、関東馬タイトルホルダーの完勝劇だった。新馬戦、弥生賞、菊花賞、今年の日経賞、天皇賞・春とこれまでに勝った5戦はすべて逃げ切り。中山記念を大逃げで制し、ドバイターフでG1馬となったパンサラッサの存在でどんな競馬になるのか。2200mのこのメンバー相手に通用するのか、番手からの競馬で力を発揮できるのか。さまざまな疑問の声に対し、圧倒的な走り、2分9秒7のレコード、②着ヒシイグアスに2馬身差という結果で答えを出した。

やや出負け気味だったパンサラッサが最初のコーナーでハナを奪い、1000m通過は57秒6。2番手をタイトルホルダーが進み、それを徹底マークしたのが和田竜騎手ディープボンド。執念を感じるポジション取り。が◎を打ったウインマリリンも今回は絶好の出来で、素晴らしい行きっぷり。好位をいい手応えで追走していた。それをはるかに上回る抜群の手応えでインを走っていたのがヒシイグアス。同じく強烈な手応えだったのが、ステイゴールド産駒のマイネルファンロンだった。

昨年に続き、3回阪神開催はわずか2週間。開催4日目にしては芝コースのキックバックが目立ち、掘れてはいたが、それでも時計が速く、G1の舞台で後方から外を回る差し・追い込み馬には絶望的な馬場だった。中団の馬群だったエフフォーリアはゴール前で伸びてきてはいるが、昨年のような機動力が消え、苦しい競馬を強いられた。中団の外から伸びてきた3冠牝馬デアリングタクトは脚部不安の長期休養から復帰2戦目だったが、さすがの走り。③着確保を喜んだファン、うなったファンも多かったことだろう。

苦しくなったはずのラスト1ハロンを12秒4でまとめ、最後まで馬体を後続に並ばせずに押し切ったタイトルホルダー。父ドゥラメンテが勝てなかった(2016年②着)春のグランプリを制し、早世した父の種牡馬としての素晴らしさを証明してみせた。昨秋の菊花賞、今年の天皇賞・春に続き、阪神の成績はすべてG1で3戦3勝。「一流ステイヤー」ではなく、まぎれもない「国内最強馬」の座を手中に収めたと言っていい。

天皇賞・春を勝った馬の同年の宝塚記念制覇は2006年ディープインパクト以来16年ぶり。ディープインパクト以来の偉業を成し遂げ、今後は順調ならば、秋のフランス、凱旋門賞に挑戦することになるとのこと。母の父モティヴェイターは1999年の凱旋門賞馬モンジューの産駒で、自身は2005年英ダービー馬であり、種牡馬としては2013&14年の凱旋門賞を連覇したフランスの名牝トレヴを出している。

もちろん、あのディープインパクトですら勝てなかった(3位入線→失格)のが凱旋門賞。先日は英国のロイヤルアスコット開催に挑んだ日本のG1馬2頭(ダービー馬シャフリヤール、朝日杯FS覇者グレナディアガーズ)が完敗し、欧州競馬と日本競馬の違いを痛感する結果になった。凱旋門賞制覇は簡単ではなく、険しく高い壁ではあるが、楽しみな挑戦になるだろう。英ダービー馬デザートクラウン、愛ダービー馬ウエストオーバー、仏ダービー馬ヴァデニ、英オークス②着エミリーアップジョンなど、欧州には今年も楽しみな3歳馬が出てきているし、古馬勢もアダイヤー、ハリケーンレーンなどハイレベルな古馬勢がいる。そして、同じ日本馬にはダービー馬ドウデュースがいる。矢作厩舎勢もいる。

週初めに「阪神で強いのは輸送がメチャメチャ得意な馬なんですか?」と聞くと、栗田師「いや、輸送は全然得意じゃないんです」とはっきり首を振った。そして、「ここまではうまく厩舎でコントロールできているんだと思います」と続けた。東スポ杯2歳S、ホープフルSで連敗を喫した後、陣営はクロス鼻革を着用し、操縦性のアップを図った。レースだけ見ていれば、自在に立ち回れる器用な馬という印象を持ってしまうが、馬の性格を把握し、栗田師厩舎スタッフ携わる関係者が丁寧なケアを行ってきたからこそ、ここまでの最強馬に育ったのは間違いない。

オーソリティは残念ながら発走前に除外となったが、出走した関東馬5頭は①②⑤⑥⑦着とみな健闘。エフフォーリアが敗れ、今年の平地G1ではここまで1番人気馬が勝てなかったことも大きなトピックだが、関東馬にとっては充実した上半期を象徴する宝塚記念の結果だったと思う(この流れが続くことを美浦で取材するはひそかに願っている)。猛暑日が続き、夏競馬が来週から本格化する。ルメール騎手は海外渡航で6週間も日本の競馬を離れる。ワクワクする秋を迎える前に、夏競馬で新しい人馬のスターが誕生するのを楽しみにしたい。



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