独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

データやセオリーは重要だが、囚われすぎてもいけない

文/出川塁、写真/武田明彦


今年の関屋記念に関する事前の報道で「3歳馬が勝てば96年のエイシンガイモン以来、22年ぶり」という一節を目にして、にわかに懐かしい気持ちが襲ってきた。

その年の春、私は大学入学のため上京したのだが、当時の地元ではNHKの競馬中継しか放送されていなかった。その反動もあって、競馬にどっぷりと浸かり始めた時期で、エイシンガイモンの名前もよく覚えている。何事につけ、熱中するようになった直後に出会った事柄というのは忘れられないものである。

それにしても、関屋記念で3歳馬がそんなに勝っていないのは意外だった。以前から海外ではキングジョージなど、3歳馬が夏場の大レースを勝つ例も珍しくなかった。一方、日本では古くから「4歳秋に完成する」といわれていたように、海外より成長曲線が緩やかな傾向があったのだが、最近では育成技術の進歩や優れた飼料の導入などにより、完成する時期が早くなってきている。

調べてみると、エイシンガイモンが勝った翌97年に、NHKマイルCで③着だったショウナンナンバーが1番人気に推されたものの⑥着まで。以降も2回の③着が最高で、昨年まで14連敗中となっていた。そうした不振にも関わらず、冒頭のような報道があったのは、今年の出走予定馬には有力な3歳馬がいたからだ。

まずは、当日1番人気に推されることになるプリモシーン。前々走の桜花賞は6番人気に推されたもののスタートで大きく出遅れてしまい、⑩着に大敗。前走のNHKマイルCでも直線で前が開かない場面があり、⑤着に敗れていた。今回は心機一転、未勝利を勝ち上がったときの北村宏司騎手を鞍上に迎えて、巻き返しを図ってきた。

もう1頭の3歳馬、同条件の新潟2歳Sを制した実績を持つフロンティアも侮れない。前走の中京記念で④着とすでに古馬通用の力を見せており、ここでも6番人気ながら単勝8.4倍と上位をうかがえる存在だった。

もちろん、古馬勢も黙ってはいない。ゲートが開いてポンと出たのは3番人気の5歳馬エイシンティンクル。オープン入りを決めた前走の豊明Sでは、初めて逃げずに勝利を挙げていたが、ここでは全兄のエイシンヒカリを彷彿とさせる軽快なピッチでハナに立つ。

最後に長い直線が控えていることもあり、ポジション争いが演じられることはなく、道中でも馬順の入れ替わりはないまま3~4コーナーを回っていく。ただし1頭、ラチ沿いを進んだフロンティアの手応えが悪く、早くも福永祐一騎手の手綱が動いている。こうなっては新潟の外回りでは苦しく、結局⑪着に敗れてしまう。

馬群の前に視線を戻すと、逃げたエイシンティンクルはまだまだ粘れそうな脚色を見せている。一昨年の覇者で、今年で4年連続の出走となったヤングマンパワーが捕まえにかかるが、これは凌げそうな勢いだ。

しかし、その外から1頭。中団でじっくりと脚を溜めていたプリモシーンが、前2走の鬱憤を晴らすかのような勢いで一気に突き抜けていく。道中は最後方だったワントゥワンもさらに上回るほどの末脚で迫ってくるが、クビ差まで詰め寄ったところがゴール板。プリモシーンが自身2勝目の重賞制覇を飾ることとなった。

③着にはエイシンティンクルが粘り込み、馬券圏内はディープインパクト産駒の牝馬が独占。一方のディープインパクト牡馬リライアブルエースが2番人気に推されていたものの、直線ではジリジリとしか伸びずに⑥着に終わっている。

話をプリモシーンに戻すと、22年ぶりの3歳馬による関屋記念制覇を達成した同馬はノーザンファームの生産馬。「何年ぶり」「過去にこのパターンは未勝利」といったジンクスめいたものでも、今のノーザンファームにかかればいとも簡単に打ち破られてしまうということを、このレースでも痛感することになった。

おそらくは今後も、進取の精神に富んだノーザンファームの生産馬によって、様々なジンクスが破られることだろう。なかなか難しくはあるのだが、データやセオリーが重要なのは間違いないが、囚われすぎてもいけない。肝に銘じて、臨んでいきたいものである。


TOPページに戻る