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速攻レースインプレッション

キャリアの差を活かして「ニシノ」の牝系の2頭がワンツー

文/出川塁、写真/川井博


今年の札幌2歳Sで人気を集めたのは、重賞勝ち馬の下となる3頭だった。1番人気のクラージュゲリエは、16年京成杯を勝ったプロフェットの半弟。2番人気のウィクトーリアは、14年のこのレースを制したブライトエンブレムの半妹。3番人気のアフランシールは、15年函館2歳Sなど重賞を2勝したブランボヌールの半妹にあたる。

いずれも兄姉が早い時期の重賞を勝っていることから仕上がりは早そう。ノーザンファームノースヒルズといった名門の出身。鞍上は実績十分。プロフィールは申し分なく、新馬戦の勝ちっぷりもいいとくれば、人気になるのも当然ではあった。

しかし、だからといって前評判通りの結果になるとは限らないのが競馬である。この3頭で最先着した③着のクラージュゲリエは、どうも不器用な印象が否めない。今思えば10頭立ての大外枠だった前走は枠に恵まれていたのだが、馬群の中に入れると3角で最後方近くまで下がってしまった。そこから脚力の違いを見せて差し切ったものの、少頭数の新馬戦だからこその芸当ではある。

打って変わって今回は最内の1枠1番。すると、向正面でもたついてポジションをかなり下げてしまう。3~4コーナーで大外からマクって一気に押し上げ、上がり1位の脚で迫ってもいるのだが、このロスが最後に響いた。

とはいえ、キャリア2戦の2歳馬だけに荒削りなのは当然でもある。十分な伸びしろを持っていると好意的に解釈し、今後の成長に期待したい。同じことは、不本意な結果に終わった⑤着のアフランシール、⑦着のウィクトーリアにもいえる。

勝ったのは、6番人気のニシノデイジー。道中は後方でじっくり構えて、3コーナーから一気に進出。4コーナーでは2番手まで上がり、4番人気のナイママを競り落として重賞タイトルを手に入れた。

レースの大きなポイントとなったのが展開だ。前走、函館2歳Sラブミーファインナンヨーイザヨイ、前走1500mのセントセシリアラバストーンといった距離延長勢が先行集団を形成した影響だろう、前半1000m通過は60秒4と、洋芝の2歳戦にしてはハイペースとなった。

結果、残り800mは12.1-12.3-12.6-12.7とラップが落ち続け、レース上がり自体も37秒6という消耗戦となり、中団~後方を進んだ馬が上位を独占。そのなかでスムーズにマクったニシノデイジーナイママが連対を確保し、大外ぶん回しのクラージュゲリエは③着まで、というレースだった。

厳しい流れによって、キャリアの差が浮き彫りになった面もある。札幌で行なわれた過去4年の札幌2歳Sではキャリア1勝馬が3勝していたのだが、前半1000m通過はもっとも速い14年でも61秒2だった。しかし、同60秒4となった今年は1~3番人気に推されたキャリア1戦の3頭が連にも絡めず終わった。対して、勝ったニシノデイジーは2戦、②着のナイママは3戦のキャリアをそれぞれ持っていた。

また、この2頭は血統表が感涙ものだ。ニシノデイジーは、母3代が「ニシノ」の冠を持つ。なにより、3代目に刻まれたセイウンスカイニシノフラワーという名前は、90年代から競馬を見ているファンには堪らない。種牡馬として不遇をかこったセイウンスカイの血を持つ馬が、格差が広がるばかりの今の時代に重賞を勝つのは素晴らしいことだと思う。

そういえば、逃げ先行で二冠を達成したセイウンスカイが意表のマクリで勝ったのも、この札幌の地(99年札幌記念)だった。父ハービンジャーの産駒もマクっていく競馬は得意だし、絶好の展開だったか。

驚いたことに、②着のナイママの牝系も「ニシノ」の名前が並ぶ。3代母は中央のオープンでも活躍したブランドノーブルで、この「ブランド」も西山牧場が用いていた冠のひとつだから、こちらは実質的に母4代が「ニシノ」といっていい。道営所属で、決して産駒が多くはないダノンバラードを父に持つ点を含めて、応援せずにはいられない一頭だ。

なお、「ニシノ」の馬を送り出してきた西山牧場は2008年に生産から撤退し、現在は育成専門の牧場となっている。それでも、その血はこうして確実に受け継がれている。ナイママの馬名の由来は「ないがまま」とのことだが、なんとも滋味深いではないか。


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