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速攻レースインプレッション

着差以上に圧倒的な強さ、鞍上の手腕も見事

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


台風24号の接近で阪神開催は中止・順延となったが、中山の秋G1初戦スプリンターズSは無事に開催されることになった。

メインレースが近づくにしたがって雲が厚さを増してきて、9R終了後には遂に雨が降り始めた。前週までは中山としては異例の高速馬場が続いており、スプリンターズSも高速決着が予想されていただけに、直前になって風雲急を告げてきた。

役者は見事に揃った。16年、17年のスプリンターズS覇者で同一G1・3連覇というJRA史上初の偉業の挑むレッドファルクスをはじめ、17年高松宮記念勝ち馬セイウンコウセイ、18年同レース勝ち馬ファインニードル、短距離G1で②着3回のレッツゴードンキ17年スプリンターズS③着ワンスインナムーン18年高松宮記念③着ナックビーナス14年スプリンターズS覇者のスノードラゴンもいる。

香港からは今年こそ不調続きだが短距離王国の威信を賭けて実力馬ラッキーバブルズが挑戦してきて、G1馬は海外を含め6頭を数えた。その能力比較だけでなく、道悪適性、道悪ならではのレース展開も読みを難しくさせていた。

レースは内枠を引き当てたワンスインナムーンが主導権を握り、ラブカンプーが2番手、モレイラ騎手が騎乗した2番人気ナックビーナスが3番手を進んだ。前半3ハロンは33秒0と、馬場状態を考えるとややハイペースの流れになったが、直前の勝浦特別も前残りだったように、外からの追い込みが利きにくい馬場状態だったため、後続もこの流れを積極的に追いかけた。

直線を向くとワンスインナムーンがややバテて、3歳牝馬ラブカンプーが53kgの重量を活かして先頭に立ち逃げ込みを図る。一時は2馬身近くのセーフティリードを取ったかのように見えた。そこに外から襲い掛かってきたのが、春の高松宮記念を制した1番人気ファインニードルだった。道中は中団の外を追走し、直線は馬場中央から内に切れ込むように1頭だけケタ違いの脚で伸びてきた。最後の1完歩でクビだけ差したところがゴール。ハナ差だった高松宮記念に続く辛勝だが、今回はその着差以上に圧倒的な強さを感じさせるレースだった。

この勝利でファインニードル史上5頭目の同一年春秋スプリント王者となった。香港のチェアマンズスプリントこそ④着に敗れたが、今年はこれで5戦4勝。高松宮記念トライアルのシルクロードSセイウンコウセイに2馬身差、スプリンターズSトライアルのセントウルSは58キロを背負って②着ラブカンプーに1馬身半差と圧勝しており、短距離界では日本に敵なしの状況になってきた。

スプリント能力は天性の素質に左右される部分が多いと言われている中、4歳夏まで20戦近くも消化して条件馬だった馬が短距離界の王者に就く例は珍しい。それだけに今後のさらなる成長も楽しみで、日本産のゴドルフィンの服色のスピード王者が、6歳になって欧州にその舞台を求める姿も見てみたい。

川田騎手の騎乗も光った。ファインニードル末脚の切れを信じて、先行馬有利な馬場でも直線までじっと追い出しを我慢したことが、最後の切れにつながった。同馬の今年の4勝はすべて川田騎手の騎乗で、距離はいずれも1200mだったが、コースは京都、中京、阪神、中山と違ったし、馬場状態も様々。それでもドンピシャリの仕掛けのタイミングを見せたのは、完全に同馬を手の内に入れた印象だ。

これまで11人の騎手が手綱を握ってきたファインニードルだが、例えゴドルフィンが専属契約を結ぶビュイック騎手バルザローナ騎手が来日したとしても、もう川田騎手以外の騎手とコンビを組むことはないだろう。それほど完璧な騎乗に見えた。

11番人気で3歳牝馬ながら激しい流れを克服して②着に粘ったラブカンプーも見事だった。同馬の父は高松宮記念勝ち馬ショウナンカンプ、その父は短距離王者サクラバクシンオー、さらにその父はレコードを3回記録したサクラユタカオー。3代続けて日本で育まれてきたそのスピードが、4代目でさらに花開こうとしている。さらに母の父もスプリンターズS勝ち馬マイネルラヴ。短距離G1種牡馬同士の配合から、生産者、馬主の思い描いた通りのスピード馬が誕生したことになる。父子4代G1級勝利へ向けて、未来は極めて明るい。

③着は13番人気ラインスピリット。前日にJRA・4000勝を達成した武豊騎手が、1番枠を最大限に活かして内でじっと我慢し、直線も内を突く落ち着いた騎乗で、3連単20万円台の立役者となった。来年3月には50歳を迎える武豊騎手だが、JRA・5000勝へ向けて、まだまだ衰えなど感じさせない騎乗ぶりを見せつけてくれた。


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