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速攻レースインプレッション

サイレンススズカ級の特別な逃げ切りだった

文/編集部(M)、写真/小金井邦祥



1998年以降の近20年の毎日王冠では、父サンデー系が9勝、父ノーザンダンサー系が4勝、父グレイソヴリン系が3勝、父ロベルト系が2勝で、他には父ミスプロ系と父テスコボーイ系が1勝ずつ挙げていた。

今年の出走馬は、父サンデー系が7頭、父ミスプロ系が4頭、父ノーザンダンサー系が2頭で、頭数や確率的には父サンデー系が優勢かと思われたが、父ノーザンダンサー系アエロリットが逃げ切った。父ミスプロ系の、そして父サンデー系の末脚も鈍らせる圧倒的な逃げ方だった。

秋の東京芝は、近年は開催前のエアレーション作業の影響もあり、差しの利きやすい馬場になっている。2年前は稍重馬場だったが追い込み決着になってルージュバックが上がり33秒4で差し切り、昨年はリアルスティールが上がり32秒8で制した。昨年は先行したダイワキャグニーとヤングマンパワーが上がり33秒7で粘ったものの、最後に32秒台の上がりを使ったディープインパクト産駒たちに交わされ、エアレーション作業をうらめしく思ったものだ。

今年のメンバーで先行策を採りそうだったのは、アエロリットダイワキャグニー。同厩舎(菊沢厩舎)であるこの2頭が競り合うケースは考えにくく、たとえどちらかがマイペースで逃げても、昨年のように最後は強烈な末脚を使う父サンデー系の餌食になってしまうのではないか、と感じていた。父ノーザンダンサー系の馬も父ミスプロ系の馬も、エアレーション作業をうらめしく思うんじゃないかと……。

アエロリットがスッとハナを切り、隊列はすんなり決まったが、意外だったのは内枠だったキセキステファノスの位置取りだった。川田騎手(キセキ)も福永騎手(ステファノス)も、アエロリットを楽に逃げさせてなるものかという意思が感じられた。このあたりはさすがだなあと思って見ていた。

1000m通過は59秒0で、このクラスの馬たちにとっては平均的か、少し速いぐらいのペースだろうか。しかし、アエロリットの鞍上のモレイラ騎手は1馬身ほどのリードを維持したまま直線に向き、残り400mを切った地点で早くも追い出し始めた。キセキステファノスを突き放すにように伸び、ムチ4発を入れ、少し追ってから、またムチ4発残り400mから残り200mの間にムチを8発入れ、上がり3Fのラップは10秒9-11秒2-11秒7だった。

東京芝1800mのレコードタイム1分44秒2は、2007年の毎日王冠でチョウサンが記録したもので、その時は1000m通過57秒5で追い込み決着になった。今回アエロリットが記録したタイムは1分44秒5で、これは毎日王冠史上2番目の勝ち時計だ。2015年に逃げ切ったエイシンヒカリの1分45秒6を上回るのはもちろん、サイレンススズカが逃げ切った1998年の1分44秒9よりも速く、歴史的な逃走劇だったと言える(ちなみに98年のサイレンススズカは斤量59kgでした)。

98年のサイレンススズカは1000m通過が57秒7で、1600mを1分32秒8で走破していた。それに比べれば今年のアエロリットの逃げ方はまだやさしかったのかもしれないが、やはり1600mを1分32秒8を通過していて、中団以降で末脚を温存していた馬たちの決め手を封じ込めた。残り400mから残り200mの間モレイラ騎手が勝負を決めにかかり、アエロリットが見事にそれに応えたというレースだった。

「金満血統王国」の大臣(斉藤雄一さん)は、アエロリットのことを"女ロゴタイプ"と称していて、それはアエロリットロゴタイプが同じ父ノーザンダンサー系で、速いペースで先行してサンデー系などの末脚を封じ込める作戦が似ているからだろう。

ロゴタイプはラストランとなった昨年の安田記念が逃げてクビ差②着だったが、他の上位入線馬はみな追い込み馬で、ロゴタイプが出るレースではそんなケースがよく見られた。淀みないペースになって、後続馬がなし崩し的に脚を使わされるから、よく穴馬の台頭があり、波乱の決着も少なくなかった。

アエロリットは、今後、順調であればマイルCSへ向かうプランがあるようだ。アエロリットはこれまでに5度のG1出走があり、そのうちマイルG1の4レースではいずれも8番人気以下の馬が連対圏に入っている。アエロリットの出るG1は穴馬の台頭余地あり。多頭数のG1で再び淀みないペースが作られれば、波乱の決着が待っていそうだ。


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