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速攻レースインプレッション

古馬牡馬路線の「核」と断言できるほどの「強さ」を示した

文/山本武志(スポーツ報知)、写真/小金井邦祥


このレースが行われる1週前。我が社の企画として、関係者に「現在の日本競馬でもっとも強い馬は?」というアンケートを行った。その結果は想像通り、いや、想像をはるかに超えていた。私の担当した10人中9人が3歳牝馬のアーモンドアイをプッシュ。秋華賞の翌週という時期的な影響が大きかったとはいえ、3冠牝馬が他馬を「圧倒」した。

その理由の中でよく聞かれたのが「今の古馬牡馬路線で中心的な馬がパッと出てこない」という意見。春先からずっと言われてきていることだが、昨年末の有馬記念でのキタサンブラックの引退以降、日本競馬は「核」を失っている。

実際、今年の古馬中長距離重賞(2000m以上)を2勝以上しているのはすでに引退したレインボーラインと、スワーヴリチャードの2頭のみ。大きなレースが行われるたび、上位の顔ぶれは変わってきた。

そんな事情から今年は当初、参戦を表明していた有力3歳馬たちに心を惹かれていた。過去に古馬勢が経験で3歳馬たちの勢いをはね返してきた舞台ではある。ただ、東京開催では96年のバブルガムフェローまでさかのぼらないと、勝ち馬が出てこない一戦であることは分かっていながら、今年は違うのではないかと考えていた。

しかし、昨年の2歳王者ダノンプレミアムに続き、「3世代ダービー馬対決」として注目を集めていたワグネリアンも回避を表明。正直、G1馬7頭という12頭立てながらメンバーのそろった一戦ながら、テーマを見つけづらいままに大一番を見守っていた。

そのモヤモヤとした思いはレースが終わった後、驚くほどにスッキリと消え去っていた。これからの古馬牡馬路線を引っ張っていくのはレイデオロ。今は迷いなく、そう断言できるほどの「強さ」を大舞台で示してくれた。

発走直前に主導権を握ると見られたダンビュライトが競走除外となり、キセキが押し出されるように逃げる形となった前半1000mは59秒4のスローペース。直線に入ると余力を十分に残したキセキが後続を突き放しにかかる。

しかし、中団で脚をためていたルメール騎手レイデオロはまったく動じない。馬場の真ん中から堂々と脚を伸ばすと、1頭だけ伸びが違う。キセキをかわして、先頭に立った後も、まったく勢いが鈍らずに加速。最後まで危なげのない、そして1馬身4分の1差という着差以上に強い完勝だった。

振り返ると、昨秋は初の古馬相手となったジャパンCでシュヴァルグランをかわせなかったものの、キタサンブラックに先着しての②着。あの時、来年はこの馬が先頭に立って、引っ張っていくはずだと多くの競馬ファンが思っていた。しかし、春は京都記念ドバイシーマクラシック完敗。頂点への道は閉ざされたかに見えた。

競走馬のリズムは一度乱れると、立て直すことが難しい。例えば昨年まで2年連続で凱旋門賞に挑戦したマカヒキ、サトノダイヤモンドは帰国後のレースで苦戦を続け、現時点でもまだ、遠征前の輝きを取り戻したとまでは言い難いと思う。

レイデオロにとっても、今春の連敗は初めてとも言える挫折だったはず。しかし、負の連鎖を引きずることなく、見事に短期間でよみがえった。早い段階で春から夏場を休養に充てた藤沢和調教師の判断も素晴らしいが、何よりレイデオロ高い能力があるからこその復活劇だった。そして、本来は「主役」であるべきはずの馬が戻るべき場所に戻ってきた、と言えるのではないだろうか。

そして、何と言ってもルメール騎手だろう。これで3週連続のG1制覇。圧倒的な能力差があった秋華賞はともかく、菊花賞天皇賞・秋はその技術が凝縮された騎乗と言えるだろう。道中で無駄な動作をまったくすることなく、気がつけば勝負を仕掛けられる位置につけている。

例えばフィエールマンに騎乗した菊花賞にしても、直線で前が開かない場面でも慌てず騒がず。開いた一瞬の瞬間を見逃さず、末脚の瞬発力につなげてみせた。今回は道中でジワッと位置を押し上げ、直線では馬場の真ん中で前を射程圏にとらえつつ、余裕たっぷりに追い出した。完璧なエスコートと言えるだろう。

これで年間最多タイとなるJRAのG1・6勝目。今、日本の競馬は間違いなく、この男を中心に回っている。この日はレイデオロを復活へ導いたが、やはり気になるのはアーモンドアイとの「兼ね合い」だろう。本来は2頭ともジャパンCを目標にするはずだが、ルメール騎手は一人しかない。その決断は果たして…。いつの間にか、古馬王道路線について、色々と考えを巡らせている自分がいた。強い馬が強い競馬で勝つ競馬の醍醐味に改めて触れたことで、今秋のG1路線が非常に楽しみになってきた。


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