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速攻レースインプレッション

常識や固定観念をぶっ壊す存在になってほしい

文/木南友輔(日刊スポーツ)、写真/森鷹史


以前、シンボリクリスエスの種牡馬としての評価を藤沢和師に聞いたら、笑いながら言っていたことを思い出した。「もちろんいい種牡馬なんだよ。ただ、あのパワーを受け継いだ馬をうまく育てられていないっていうことはあるかもしれない。そう、ブルードメアサイアーでいい馬(レイデオロ、アドミラブルなど)が出てくるのもわかるよ」

秋の天皇賞&有馬記念連覇…、現役時の圧倒的な走りのイメージが強すぎるのか、芝ではエピファネイア、ストロングリターン、アルフレード、ダートではサクセスブロッケンというG1馬を輩出しながら、ディープインパクトハーツクライなどの種牡馬と比較すると、どこか地味な印象をぬぐえなかったシンボリクリスエス。今日のチャンピオンズCを圧勝したルヴァンスレーヴが今年19歳になった父の最高傑作になるかもしれない。

逃げると思われたモレイラ騎乗のサンライズソアが好位に控え、最内からハナを奪ったのがアンジュデジールM.デムーロルヴァンスレーヴはその背後で難なく好位のインを確保した。コンビ全勝の鞍上が自信を持って乗っていた。

ラップを見ていきたい。一昨年サウンドトゥルー、昨年ゴールドドリームと同じで、3年連続で1分50秒1という勝ちタイム。ただ、1000m通過は過去2年より遅い61秒9。過去2年は2ハロン目のラップが10秒710秒9だったのに対し、今年は11秒2。3ハロン目のラップも過去2年の12秒台に対し、13秒1と遅かった。

スローの流れのまま勝負どころへ。有利になるのは前で運ぶ馬、内で脚をためた馬だ。勝ったルヴァンスレーヴは上がり3ハロンがメンバーで2番目に速い35秒6。レースの上がりが11秒7―11秒9と速く、後方から外をまわった馬はどうしようもない展開。②着ウェスタールンドは離れた最後方から内ピッタリを上昇し、上がり34秒4の脚で追い込んだ。敗れはしたが、藤岡佑騎手の素晴らしいレース運びだった。

サンライズソアモレイラ騎手がどうにか③着を確保した。上がり勝負では分の悪いケイティブレイブは外をまわる形で思わぬ大敗オメガパフュームサンライズノヴァノンコノユメミツバなどは不利な展開になりながらもしっかり脚を使っているだけに展開が流れていれば、と思う競馬だった。

アメリカから参戦したパヴェルは最下位の⑮着に敗れた。今年のドバイワールドC④着馬。ガンガン飛ばしてハナへ行くタイプではなく、どんな競馬をするか注目していたが…、好位を確保したのに見せ場なく後退してしまった。ドバイ、アメリカの多くの競馬場とは異なるダートの質。鼻腔拡張テープが使えず、負担重量もアメリカで好走したレースに比べると重いもの。左回りの中京になってからは14年インペラティヴ(⑮着)以来2頭目の米国馬だったが、残念な結果に終わった。

チャンピオンズCを終え、「ダート」というくくりで考えると、今年行われた競馬で個人的にもっとも印象に残ったのは日本産馬ヨシダのBCクラシック④着だった。今年春に芝のG1を制した馬が英国のロイヤルアスコット開催に遠征し、帰国後、初ダートでG1制覇。ダート競馬の世界最高峰の一戦では「そこから追い込んでくるのか」という脚で④着まで追い込んできた。

父ハーツクライの父は米2冠馬サンデーサイレンス母ヒルダズパッション(※この日の中山6Rで4番子シェドゥーヴルが新馬勝ち)は米のダートG1馬。もちろん、血統的に通用する下地は十二分にあったのだが、非常に個人的な感想になってしまうが…、「日本で普通に走っている馬の中にはアメリカの本場の〝ダート〟へ挑戦したら結構やれる馬がいるんじゃないか」という希望を持つことができた。

ルヴァンスレーヴに今後浮上してくるのは海外遠征のプラン。春のドバイや秋のBC。他にも選択肢はあるかもしれない。この馬の場合は血統表をさかのぼると、基礎となるのが6代母フアンシミンで、4代母がダイナフェアリー。牝系にかけられてきたのはシーホークノーザンテーストリアルシャダイティンバーカントリーネオユニヴァースシンボリクリスエス。日本の競馬を彩ってきた種牡馬の名前が並ぶ。

気が早すぎるかもしれないが、「こんな血統の馬がBCクラシックを走ったなら…」とワクワクする。「結構やれる」ではなく、アメリカの猛者をねじ伏せる競馬が見たい。3歳馬でチャンピオンズC(JCダート)制覇は06年アロンダイト以来。他に3歳で勝った馬はクロフネとカネヒキリ。海外遠征=凱旋門賞、海外遠征=芝のG1…、もちろんそれも大事なのだが、ルヴァンスレーヴにはこれまでの常識や固定観念をぶっ壊す存在になってほしい。


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