速攻レースインプレッション
G2勝ち相当と言っても良いのでは?
文/編集部(M)、写真/川井博
ステイヤーズSがG2で、チャレンジCはG3だが、逆でも良いのでは?と思った人も少なくないだろう。実際にチャレンジCは1000m通過59秒7というペースとなり、1分58秒3という好時計での決着になった。勝利したエアウィンザーはこれが初の重賞制覇だったが、G2勝ち馬2頭を含む重賞勝ち馬5頭に3馬身以上の差を付けたのだから、G2勝ち相当と言っても過言ではない気がする。それだけ価値のある内容だった。
エアウィンザーはほとんどのレースで1番人気に推されてきた馬で、今回(2番人気)を含めて1番人気ではなかったことは2度しかない。どちらも重賞レースで、3歳時には共同通信杯に挑戦して3番人気となり、⑥着に敗れている。その後も、3歳時はトントン拍子とはいかず、惜敗することも多かった馬だが、振り返ってみると少頭数競馬が合わなかった可能性もありそうだ。これまでに敗れた7戦はすべて11頭立て以下で、12頭立て以上の時は今回を含めて4戦4勝だ。
今回の鞍上・M.デムーロ騎手は、レース後、「若い時はトモが緩かったんですけど、大人になってしっかりとしてきました」とコメントしていた。2~3歳時に惜敗が多かったのは、少頭数のたるいペースや肉体面で成長途上だったことが要因としてあるのだろう。それが4歳になって身も心も完成し、クラスが上がるに従って実力も発揮しやすくなり、今回の4連勝での重賞制覇につながったのだろう。
思えばチャレンジCは昨年(サトノクロニクル)も一昨年(マイネルハニー)も3年前(フルーキー)も重賞未勝利馬が優勝していて、12月の開催となってからは、7年中5年で初タイトル獲得が成し遂げられている。そのレース名に相応しく、遅れて完成した馬たちが実績馬にチャレンジして実を取るレースということか。
エアウィンザーが1番人気に支持され続けた背景には、そのレースぶりも去ることながら、やはりエアスピネルの全弟という血統面も影響していたと思われる。マイル戦で全7連対を記録している兄に対して、弟は全7勝を1800~2200mで挙げていて、1600m以下への出走歴がない。470~480kg台の兄と比べて弟は一回り大きく、今秋以降の3戦は500kg台で連勝を重ねている。それらを見れば、兄と弟はタイプがやや異なるように感じるかもしれないが、戦績的に似ている面もある。
兄エアスピネルは4勝のうち3勝を馬番5~6番で挙げていて、連対圏に入った7戦のうち6戦が馬番11番以内だ。弟のエアウィンザーは今回を含めて過去7勝を馬番10番以内で挙げている。兄弟はご存知のように鋭い末脚に特徴があり、真ん中から内目の枠で脚を溜めて、末脚を伸ばす形が合っているのだろう。
母のエアメサイアは秋華賞など4勝をマークしたが、その4勝は馬番10番以内だった。秋華賞の後は、⑤着(エリザベス女王杯)、③着(中山記念)、②着(阪神牝馬S)、②着(ヴィクトリアマイル)と惜敗が続いてターフを後にしたが、最後の4戦は馬番11~18番だった。ちなみに、全4勝のうち、1~2勝目(新馬、エルフィンS)はマイル戦で、3~4勝目(ローズS、秋華賞)は2000mだった。これらを見ると、エアスピネルもエアウィンザーも、やっぱりエアメサイアの仔だなあという気がしてくる。
エアウィンザーは今年はもう出走せず、来年のG1戦線を目標にしていくことになるという。阪神芝では[4.2.0.0]で連外がなく、その4勝がすべて内回りコースだから、大阪杯(阪神芝2000m)や宝塚記念(阪神芝2200m)は、当然、視野に入ってくるだろう。エアウィンザーがこれまでに唯一馬券圏外に敗れたレースが3歳時の共同通信杯だが、その時の勝ち馬はスワーヴリチャードで、同馬が今年の大阪杯を制した。2年の時を経て、再び相まみえることになれば、楽しみが膨らみそうだ。
今年のチャレンジCは重賞勝ち実績馬を差し置いて、重賞未勝利の2頭(レイエンダ、エアウィンザー)が1~2番人気に推されたわけだが、その2頭は明暗が分かれ、1番人気だったレイエンダが⑥着に敗れてしまった。
前述した通り、今回はマルターズアポジーが逃げてそれなりに締まったペースではあったが、レイエンダは芝2000mでの過去2勝が1000m通過58~59秒台だったので、ペースに戸惑ったことはなさそう。2ヶ月半ぶりだったが、馬体重が4kg減の482kgと減っていたので、初の関西圏への輸送の影響もあったか。いずれにしても、この経験を次走以降にどう活かしていくかがカギになりそうだ。