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速攻レースインプレッション

今後の日本競馬をも占える結果だったのでは

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


「牝馬の時代」と言われている。凱旋門賞2連覇のエネイブル、G1・22連勝のウィンクスと歴史的名牝が誕生しているが、これに日本のアーモンドアイも加わり、2019年はさらに牝馬が世界を席巻しそうだ。

今年の香港国際競走で日本馬は残念ながら勝利できなかったが、好走したのはリスグラシュー、ヴィブロス、ディアドラといずれも牝馬だった。これは決して偶然ではないだろう。

サラブレッドの進化が急激に進み、そのレベルが極限まで高まりつつある。そのレベルに達すると2キロ程度の牝馬のセックスアロワンスが大きく影響してくること、また本質的に生物はオスよりもメスの方が丈夫、健康、体質が強いという生物学的な要因も関係があるのかもしれない。その意味でも阪神ジュベナイルフィリーズは、単に来春の桜花賞候補を見極めるだけでなく、次世代の日本最強馬を見い出す目的で見逃せないレースとなった。

スタートで2番人気クロノジェネシスのダッシュがつかず、スタンドがどよめいた。だが人気どころはいずれも後方待機策を取ったため、17番手からでも有力馬から離されずにレースをすることができた。1番人気ダノンファンタジーは15~16番手で、3番人気シェーングランツをすぐ前に置いてマークする戦法に見えた。4番人気ビーチサンバも中団でじっと我慢した。

ベルスールの逃げは1000m59秒1の平均ペースで、道中はどの馬も仕掛けない我慢比べで、レースが動いたのは4角から。クロノジェネシスが大外を回してすぐ内のダノンファンタジーを封じにかかったが、ダノンファンタジーC.デムーロ騎手は負けずに張っていく。馬群を割ろうとしたシェーングランツは進路を失くして、改めて外に持ち出すロスがあった。

ダノンファンタジークロノジェネシスの2頭の競り合いは、4角から延々と500mに渡って続いたが、ダノンファンタジーは最後まで半馬身差のアドバンテージをキープし続け、3連勝でG1制覇。1番人気を背負って貫禄の2歳女王の座に就いた。

レースキャリアの浅い2歳牝馬が、外から被されながら突っ張り切るという芸当はなかなか見られるものではない。ダノンファンタジーの勝負根性はジェンティルドンナに匹敵するたくましさを感じさせるものだった。勝ちタイムの1分34秒1は、過去10年で13年レッドリヴェールの1分33秒9、16年ソウルスターリングの1分34秒0に次ぐ優秀なタイムとなった。

テン乗りながらディープインパクト産駒の最大の特徴である末脚の鋭さを十分に引き出したC.デムーロ騎手の騎乗も見事だった。これで秋競馬は9週連続で外国人騎手のG1(Jpn1を含む)制覇となった。ルメールM.デムーロモレイラが香港遠征で不在でも、その牙城を日本人騎手が崩すことはできなかった。来週からは「天才」と呼ばれるオイシン・マーフィー騎手も短期免許で来日する。2019年も日本人騎手にとっては試練の年となりそうだが、世界のトップジョッキーの騎乗を間近で感じられた経験は、必ず今後に活かされることになるだろう。

勝ったダノンファンタジーディープインパクト産駒で、母はアルゼンチンのG1勝ち馬。セレクトセール1歳で9000万円だったので、良血馬揃いのノーザンファームの中で特別な存在ではなかったが、ディープンパクト×アルゼンチン血統牝馬と言えばサトノダイヤモンドがおり、奥の深さ、距離の融通性がある。次世代女王にふさわしい能力、血統背景を持つ馬であることは間違いない。

ただ、このダノンファンタジーをデビュー戦で2馬身突き放したのが、来週の朝日杯FSに牝馬ながら挑戦するグランアレグリア(父ディープインパクト)で、ダノンファンタジーのG1制覇はグランアレグリアの株をさらに上げる結果だったとも言えるし、現時点で「最優秀2歳牝馬」の最有力候補とも言えないもどかしさもある。この2頭がどこで再戦を果たすのかが、今後の大きな興味となる。

②着クロノジェネシスはスタートの不利を挽回したレースぶりは見事だったし、③着ビーチサンバも器用さを十分に発揮したが、クロノジェネシスは母の8番仔、ビーチサンバは母の14番仔ということもあり、未知の魅力という面ではやや乏しさも感じられる。将来性という面ではソウルスターリングの半妹という血統的な魅力の大きいシェーングランツの3歳になってからの変身に期待したい。

また、「荒れる」と言われている阪神JFで1~4番人気馬が①~④着に入った。16年は1~3番人気が人気通りに①~③着、17年は2~4番人気が①~③着(1番人気ロックディスタウンは⑨着)とほぼ人気通りの決着となってきているのは、2歳牝馬の育成レベルが高まり、能力の高さをレースでそのまま発揮できるようになったことの証明だと思われる。その点でも冒頭に記したように、今後の日本競馬を占うことができる阪神JFの結果だったように感じられた。


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