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速攻レースインプレッション

絶妙な采配が結実、進化を遂げた2歳王者との再会に期待

文/山本武志(スポーツ報知)、写真/川井博


今年の注目は牝馬のグランアレグリアが参戦し、1番人気を集めたことだったと思う。実は16年にも牝馬のミスエルテが参戦し、1番人気ながら④着に敗れていたが、当時よりはるかに「死角」の少ない存在だった。

もっとも心強い材料だったのが牡馬相手に2戦2勝だった点。ミスエルテは牝馬同士の一戦で2戦2勝だったが、この大一番で初めて牡馬の中に入った結果、レース当日のイレ込みが非常に激しく、本来の力を出せなかった。

一方、グランアレグリアはすでに牡馬との戦いを経験ずみで、2戦とも好位から楽々と抜け出す優等生の競馬で圧勝。しかも、デビュー戦で完勝したダノンファンタジーが前週の阪神JFで2歳女王に輝いた。付け入る隙はない、というイメージが単勝1.5倍という圧倒的支持にも表れていた。

しかし、だ。グランアレグリアは本来の姿ではなかった。パドック、ゲート裏の輪乗りなど落ち着きがなく、繊細さが前面に出た牝馬という印象。レースでも序盤に行きたがる面を見せると、直線でも先頭に立つことなく、アッという間にかわされた。バッタリとは止まらずに③着で踏ん張ったものの、新たな歴史の誕生を待っていたファンが思い描いていたシーンとはまったくかけ離れていた。

現在競馬において、牡馬と牝馬の差は大きくないと思う。実際にウオッカやダイワスカーレット、ブエナビスタやジェンティルドンナなど名牝たちが次々と出ている。

ただ、差がないと感じるのは肉体面の話だ。繊細さを兼ね備える精神面は牡馬と比べると、常に大きなネックとなり得る。今回も初の長距離輸送、コースなどに平常心を失ったのだろう。「普通に走れば」とよく聞くが、その「普通」が競走馬、特に2歳の牝馬にとっては難しい。そのことを改めて思い知った形だ。

そんなグランアレグリアと対照的だったのが勝ったアドマイヤマーズだ。友道調教師は以前、こう話したことがある。「競馬場に行って、イレ込んだことがないんだよね。新馬の時から、ずっと落ち着いている」

その大人びた、従順な気性は自在なレース運びを生み、頂点へと導いた。この日も抜群のスタートからスッと好位に控えると、前半4ハロンが47秒7というスローペースでもスムーズに折り合っての追走。直線入り口で早々とグランアレグリアをかわしてからも、余裕たっぷりの加速で後続を突き放す。2馬身差のまったく危なげない完勝だった。

ここ3年で2頭のダービー馬を輩出している友道厩舎だが、特に現2歳世代はひと言で「すごい」成績を残している。2歳戦は調教師別トップの16勝。ただ、多くの数を使っているわけではなく、出走は34レースしかない。勝率は5割近く、複勝率は8割を超えるという驚異的な数字だ。

昔からよく取材させてもらっている厩舎だが、2歳戦での躍進は中長期的プランがしっかりと練られていることが大きいと感じる。春先のPOG取材会で教えてもらう2歳馬のデビュー時期や「早い」「遅い」という見立てはほぼ狂いがない。特に、ここ数年は秋デビューを見据えた多くの2歳馬が函館競馬場でゲート試験だけを受け、デビュー予定の1か月ほど前に栗東に入ってくるという「パターン」が確立。マカヒキなどはこの形で結果を出し、ダービー制覇につなげた。

一方、育成の進行が早いと判断された馬は夏の中京デビューを目指すことが多い。昨年はダービー馬のワグネリアン、今年はアドマイヤマーズがこの組。しかし、東京スポーツ杯2歳Sを勝った後、放牧で来年に備えたワグネリアンに対し、アドマイヤマーズは春先から「今年は朝日杯FSを目標にしたい」友道調教師は公言してきた。

本来は成長を急がせないタイプだけに珍しいなと感じていたが、結果的には言葉通り、秋はデイリー杯2歳Sから2歳王者決定戦へ向かうローテを組み、しっかりと実を結んだ。一方、ワグネリアンはその休養でパワーアップした結果、翌年のダービー制覇につなげた。個々の成長度合いを見極めた、絶妙な采配が厩舎の躍進を支えている。

アドマイヤマーズはデビューから一貫してマイルに使われているが、トレーナーは常にこう話している。「今は朝日杯が目標だからマイルを使っているけど、距離にもある程度の融通は利くと思う」。長年の取材から分かっているが、希望的観測を簡単に口にするような人ではない。その言葉はもちろん、さらなる成長力を引き出し、幅を広げる手応えを感じているからこそ。進化を遂げた2歳王者と来春、再会する日を楽しみに待ちたい。




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