独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

様々な夢が詰まった平成最後の有馬記念だった

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


平成最後の有馬記念ファンを盛り上げてくれたのは、障害王者オジュウチョウサンの参戦だった。競馬記者の常識から考えれば、さすがに有馬記念で勝負になるとは思えなかったのだが、武豊騎手とのコンビで1番枠を引き当てたこともあり、前売りは何と2番人気。当日になってもその人気はほとんど衰えず、レイデオロキセキブラストワンピースモズカッチャンに次ぐ5番人気の9.2倍でレースに臨むことになった。

あのオグリキャップのラストランやダイユウサクの大番狂わせのような奇跡が起きるのが有馬記念だが、ファンの夢を追う気持ちがこのオジュウチョウサン人気につながっていたように思えて、清々しい気持ちにさせてもらえた。これが世界には類を見ない日本競馬だけの楽しさ、奥深さなのだろう。

スタートでそのオジュウチョウサンが好枠を利してハナに立つと、超満員のスタンドから大歓声が沸く。オジュウチョウサンがそのままレースの主導権を握るのかと思われたが、1周目3~4角のカーブで外からキセキが一気に先頭を奪う。スタートのタイミングは良くなかったが、この2戦、逃げて好結果を出していただけに、川田騎手も中途半端なレースはしたくなかったのだろう。

キセキジャパンC同様にペースを落とすことなく、後続を5馬身以上離した逃げに持ち込んだ。5ハロン通過が推定60秒7。開催最終日でコースの荒れ、小雨で稍重馬場を考えるとやや速めの流れとなり、キセキは直線半ばで力尽きた。ジャパンC快時計の反動もあったのかもしれない。

直線で馬場中央に持ち出して見事な差し切り勝ちを演じたのは、唯一の3歳馬ブラストワンピースだった。道中は外目を回って6~7番手の中団をキープ。4角からスーッと先団に取り付き、直線は早めに抜け出す正攻法。道中でブラストワンピースのすぐ外に付けていた1番人気レイデオロがゴール前で外から迫ったが、これをクビ差退けてG1初制覇を有馬記念の大舞台で成し遂げた。534キロと出走馬の中で最重量ということもあるが、とても3歳馬とは思えない堂々とした力強さを感じさせた。

今年の競馬を象徴するキーワードは「牝馬」「3歳馬」だった。牝馬のモズカッチャンこそ⑧着に敗れたが、3歳馬ブラストワンピースは古馬を完封した。今秋はマイルCS・ステルヴィオ、ジャパンC・アーモンドアイ、チャンピオンズC・ルヴァンスレーヴと3歳馬が古馬を圧倒し続けた。アーモンドアイ、ルヴァンスレーヴは3歳馬同士でも別格の強さを見せていた馬だったが、ステルヴィオは皐月賞④着、ダービー⑧着。ブラストワンピースダービー⑤着、菊花賞④着と3歳牡馬の中では4~5番手の存在だった。

有馬記念では過去10年間で4頭の3歳馬が優勝しているが、いずれもクラシックウイナーだった。もちろんブラストワンピースの急激な成長力も勝因だが、今秋は古馬挑戦がなかったフィエールマン、ワグネリアン、エポカドーロ、エタリオウらが来年出揃ってきたら、アーモンドアイを中心にこの世代はどこまで成績を伸ばしていくのか、楽しみで仕方がない。

ブラストワンピースに騎乗していたのは池添騎手で、遂に外国人ジョッキーの連続G1制覇を「10週」でストップさせて、有馬記念4勝目を手にした。これは武豊騎手ペリエ騎手らの3勝を超えて歴代最多勝。見事なまでのグランプリ男ぶりだ。リーディング順位は10~20位台が続く中堅だが、オルフェーヴルを筆頭にドリームジャーニー、スイープトウショウ、ショウナンパンドラ、シンハライト、トールポピーなど大物を育てることに関しては随一。これで4年連続G1制覇となり、ますますG1では目が離せない存在となった。

話題のオジュウチョウサンは⑨着敗退だったものの、勝ち馬からは0秒8差。直線も内でしっかりと粘り込み、応援したファンの期待に精一杯応えた。マカヒキミッキースワローパフォーマプロミスらに先着したのだから、障害馬としては快挙と言える成績だった。今後は不明だが、平地挑戦を続けるなら天皇賞・春では侮れない存在になるだろうし、もし障害に戻るとしたらそのスターぶりにますます磨きをかけた人気になることは間違いない。

敗れたとはいえレイデオロも古馬王者として立派なレースぶりだったし、シュヴァルグランも復活を感じさせるレースを見せた。ともに来年の活躍を確信させるものだった。様々な夢が詰まった平成最後の有馬記念だった。




TOPページに戻る