速攻レースインプレッション
スペシャリストが続々登場する、阪神芝1400mというコース
文/編集部(T)、写真/森鷹史

実際、今年も春にヴィクトリアマイルを制し、前走のマイルCSで⑥着に健闘したジュールポレールが1番人気に推されている。2番人気は今年のNHKマイルCで④着に入ったミスターメロディ、3番人気はそのNHKマイルCの覇者ケイアイノーテックで、上位人気はマイルG1で上位に入った実績がある馬になった。
競走馬にとって、距離延長は距離短縮より難易度が高いといわれる。ならば阪神Cも前走マイルCS組から……と思いきや、ことはそう簡単ではない。
過去12回の阪神Cで1番人気は[2.1.1.8]だが、このうち前走がマイルCSからの臨戦で勝利した馬は07年のスズカフェニックスだけ。2010年以降の8回で前走がマイルCSだった馬は5頭が1番人気に推されているが、その成績は⑤⑩⑦⑦⑥着。馬券圏内に入った馬さえ出ていない。
前走マイルCSから阪神Cを制した馬は5頭出ているのだが、1番人気に推されるとなかなか結果を残せない。果たして今年のジュールポレールはどうか。
レースは今年の京王杯スプリングC勝ち馬で、4番人気を集めていたムーンクエイクが痛恨の出遅れ。ダイアナヘイローがハナに立ち、ミスターメロディ、ラインスピリット、レーヌミノルといった先行馬が競りかけなかったことで、隊列がすんなりと決まった。
前半600mは34秒8とさほど速くなく、ダイアナヘイローはマイペースの逃げ。今開催の阪神は前が止まりづらく、この時点で後方勢には厳しい流れになる。勝負所でミスターメロディが差を詰めてきたが、ダイアナヘイローは最後まで交わさせず、半馬身差を保ってゴールを駆け抜けた。
一方、ジュールポレールは序盤から忙しい感じで後方からの競馬になり、メンバー2位の上がり34秒6で猛然と追い込んできたが⑤着まで。1番人気の連敗が伸びることになってしまった。
ダイアナヘイローは前走が京阪杯(京都芝1200m、③着)からの臨戦となったが、同じく距離延長で臨んだ今年の阪急杯(阪神芝1400m)を制していて、この距離がベストなのだろう。②着ミスターメロディも芝1400mの重賞勝ちがあった馬で、③着スターオブペルシャも芝1400mが[4.3.4.2]だから、結果的にはこの距離に対する実績が豊富な3頭が上位を占める形になった。
阪神芝1400mのスペシャリストとして思い出したのが、このコースの重賞で②③⑥①①③①④④②⑬着という実績を残したサンカルロ。牡牝の違いはあるが、5歳時に阪急杯&阪神Cを連勝した点はダイアナヘイローと似ている。
また、阪神が改装された07年以降、阪急杯&阪神Cで馬券圏内に入った馬は延べ57頭で、そのうち2回以上馬券圏内に入ったのが15頭。サンカルロ以外にもキンシャサノキセキ、リアルインパクトが阪神Cを連覇している。この条件はスペシャリストがいて、それだけにリピーターが発生しやすいのだろう。この傾向は今後も続く可能性が高そうなので、覚えておきたい。
ちなみに、今年は芝&ダート路線ともに3~4歳馬の活躍が目立つが、全部で16レース行われた芝1400m以下の古馬重賞のうち、5歳馬は12勝を挙げていて、次いで6歳の2勝、3、4歳が1勝ずつだから、この数字は突出している。短距離重賞では5歳馬の壁が厚く、3~4歳馬はこれを乗り越えきれなかった印象を受ける。
来年は明け4~5歳勢の逆転はあるのか。今回の上位馬が出走してくるかどうかも含めて、来年の阪急杯は注目だ。