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速攻レースインプレッション

現代風の装いを施し、メジロの名血は見事に蘇った

文/出川塁、写真/森鷹史


今年の日経新春杯は前半1000m通過が58秒3のハイペースとなった。先週の京都金杯より1秒5も速く、それほど時計が出ない今の京都の馬場を考えれば、これは相当に厳しい流れといっていい。

その要因となったのが1周目の先行争いだ。ゲートを出た直後は3枠6番のサラスが逃げそうな構えだったが、7枠14番のアイトーンが外から押して押して並びかけ、1周目のゴール板を過ぎてもまだ手綱が動いている。近走で得意のかたちに持ち込めていなかったこともあり、今回はなにがなんでもハナを奪うと決めていたのだろう。

ただし、押しまくってスピードに乗った馬というのは、すぐにはペースを落とせないものだ。ラップを見ても、先行争いを演じた2、3ハロン目にかけて10秒710秒8を刻んだあと、1コーナーに差し掛かる4ハロン目でも11秒8とまだ速い。この激しい争いに、逃げ馬の一角と目されていたメイショウテッコンも加わっていたら一体どんなペースになっていたのだろうか。

そして、スタートに失敗して後方待機策をとらざるをえなかったこの馬が、ハイペースの第二波を作ることになる。3コーナー手前の上りで一気にマクって先頭へ。下りに差し掛かる残り4ハロン目から3ハロン目にかけて、11秒912秒2とラップが再び上がっていく。

本来は逃げ馬だけに、鞍上の武豊騎手は末脚勝負では分が悪いと判断したのだろうか。しかし、このハイペースをさらにマクリ上げてはさすがに脚がもたなかった。直線に入ってからの残り2ハロン目では13秒1に失速し、馬群の中へと沈んでいった。その前にメイショウテッコンのマクリによって逃げ・先行勢は崩壊済みだから、最後の1ハロンで差し・追い込み勢がドッと押し寄せてくるのは自然のなりゆきだった。

真っ先に内から抜け出してきたのがグローリーヴェイズ。1枠2番から終始インコースを通り、厳しい流れをもっともロスなく進めてきたのがこの馬だ。そして、外からはステイゴールド産駒の2騎が脚を伸ばし、特に大外のルックトゥワイスは怒涛の勢いで詰め寄ってくる。

しかし、及ばなかった。先頭でゴール板を駆け抜けたのはグローリーヴェイズ。脚色では完全に上回っていたルックトゥワイスは、最後は枠順や4コーナーを回った位置が響くかたちで半馬身差の②着まで。さらに半馬身差の③着にシュペルミエールが続いた。

関東馬でありながら京都の重賞ばかりに出走し、4度目で重賞初勝利を飾ったグローリーヴェイズ。昨年以降のローテーションを掘り下げていくと、きさらぎ賞②着のあとは、中12週で京都新聞杯④着、中11週で佐渡S①着、中11週で菊花賞⑤着。そこから今回の日経新春杯も中11週での出走だった。

この戦歴を見て思い出すのが昨年の菊花賞を制したフィエールマンだ。こちらも昨年1月のデビュー後、ほぼ3ヵ月に1走の間隔で出走しており、今年初戦に予定しているAJCC菊花賞以来3ヵ月ぶりとなる。

両馬には、ノーザンファーム天栄を外厩として使う関東馬という共通項がある。今後、同施設を利用している馬、特にサンデーレーシングジャロットファームシルクレーシングといったクラブ馬主が所有する重賞級の馬は、こうしたローテーションが当たり前になっていくのではないか。この2頭はその先駆けではないかと思えてならない。

グローリーヴェイズでもうひとつ興味深いのが血統だ。5代母のアマゾンウオリアーに遡る「メジロ」の名牝系の出身。そのメジロ牧場といえば、欧州系のスタミナ血脈を育み、数々の名ステイヤーを送り出した名門として知られるが、競馬の著しい高速化に直面した90年代半ば以降は低迷を余儀なくされた。

グローリーヴェイズの母の父はスウェプトオーヴァーボード。なんとか高速化に適応しようとスピードの血を注入していた時代のメジロ牧場苦悩を反映しているようで、血統表を見ているだけでも胸に迫るものがあるのだが、そうした努力も実らず、2011年には牧場の解散を余儀なくされた。

しかし、厳しいハイペースの長距離戦となり、レース上がりが37秒7もかかった今年の日経新春杯で、そのスタミナが活きたのは想像に難くない。ディープインパクト産駒ミルコ・デムーロ騎手という現代風の装いを施すことで、メジロの名血は見事に蘇ったのである。


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