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速攻レースインプレッション

鞍上の手腕と馬の高い能力がかみ合った勝利

文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/川井博


桜花賞グランアレグリア皐月賞サートゥルナーリア天皇賞(春)フィエールマン。説明は不要だろう。この春、ルメールが制したG1だ。アーモンドアイドバイターフも含めれば、G1・4連勝中ということらしい。「いい馬に乗っていれば当然勝つよ」と言う方もいるかもしれないが、事はそんなに簡単ではない。天皇賞でもルメールの凄さが見えた場面がいくつかあった。検証して、ルメールの何が凄いのか、その真実に少しでも迫りたい。

今年の天皇賞に関しては「ペース」が重要とされた。主力を形成する4歳勢は昨年の菊花賞「歴史的超スローからの瞬発力勝負」を経験した。よって、菊花賞上位組は道中、スロー歓迎だ。5歳以上でスタミナ勝負組は「なるべく流れてほしい」と考えていたはずだ。ヴォージュの刻むラップも重要だし、ロードヴァンドール騎乗の横山典騎手がどこかで積極的に動くのではないかとも考えられた。全騎手が、それを頭に入れて臨んだはずだ。我々もそうだった。

1周目2コーナー付近。13秒台が2本続いた。ここはポイントだった。フィエールマンが自ら動きかける。だが、ルメールは他に動きそうな馬がいないことを確認した上で、動くのをやめさせ、しっかり制御した。さすがのジャッジだった。ルメールにとっては勝負どころが少しでもゴールに近い方がいいわけで、ここで勝負はしたくないという考え。的確だった。しかも、馬とケンカすることなく、すぐに周囲とスピードを合わせた。おそらく、見ている以上に高度な技術なのだと思う。

これは蛇足かつ、想像に過ぎないが、もし横山典騎手が仕掛けていたら、ルメールは追いかけるつもりだったのではないか。道中、いつでも動ける雰囲気を出していたように思う。横山典騎手が動かなかったことでルメールも動く必要はなくなった。ただ、勝ちにいく準備はしていたように思えた。

3角の頂上を過ぎ、下り始めたところで位置を上げた。このスパート具合も絶妙だ。②着グローリーヴェイズも同じところからポジションを上げているが、手応えはフィエールマンの方がいい。道中、しっかり折り合っていたからこそ、体力が十分に残っていた。

時計の針を少し戻すが、パドックでのフィエールマンはちょっと心配させる雰囲気だった。活気というレベルを超えて興奮気味。発汗も見られた。久々のためなのか。それとも長距離輸送のせいか。ゴールデンウイークとあって輸送時間も長かったらしい…。などと考えていたが、レースでは、あのパドックがウソだったように従順で、スムーズで、冷静だった。いったいどの場面でルメールは馬を納得させたのだろう。は馬と会話ができるのか。そんなことを思った。

レースに戻ろう。4角手前。ルメールは坂を下りながら、ちらりと外に視線をやる。戸崎騎手グローリーヴェイズが上昇してくるのが見えた。この時点で、最後に競り合うのはこの馬だとルメールは感じたはずだ。そして、この馬より前の位置で直線を迎え、あとは馬の気持ちの強さを信じようと考えたはずだ。

直線の叩き合い。ルメールが信じた通り、フィエールマングローリーヴェイズを抜かせなかった。同世代相手では負けないという雰囲気を馬が放っていたように思う。最後の最後は手前を替えて、もうひと伸びした。ルメールの好判断とフィエールマンの高い能力がかみ合い、グローリーヴェイズを競り落とした。

ルメール「馬が強い。馬のおかげ」とよく言う。それは決してきれいごとを言っているのではなく、おそらく本当にそう思っている。ただ、もっと深く説明する必要がある。ルメールはレース中、いくつものポイントで常に正しいジャッジを重ね、最後の直線まで持っていく。そこから先は馬の仕事だ。そこでひと踏ん張り、頑張ってくれる馬が勝つ。だから「馬のおかげ」というわけだ。

ただ、その大前提として「ルメールがあらかじめ最高の仕事をして、馬が力を出し切った時に勝てるという状況をつくり出している」ことを忘れてはいけない。言うまでもないが、ルメールが果たす役割はとてつもなく大きい。

②着グローリーヴェイズは惜しかった。4角の位置取りが勝ち馬と逆だったら、あるいはという結果があったかもしれない。だが、それはタラレバ論でしかない。

③着パフォーマプロミスは力を出し切った。馬群でスタミナを温存し、ラストの脚につなげた北村友騎手は見事だった。④着エタリオウにとっては厳しいレースとなった。もちろん、道中最後方でもペースがハマってしまえば勝つ時もあるわけで、そのこと自体を責める気はない。とはいえ今回、その戦法で展開がハマる確率というのは非常に低かったはずだ。坂の上りで仕掛けるという非常にハードな競馬で失速せず④着に踏ん張った。エタリオウ自身は意地を見せたように思う。


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