独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

「運」、「厩舎力」、「手綱さばき」が噛み合って「3強」撃破

文/山本武志(スポーツ報知)、写真/川井博


今年のダービー「3強」と言われていた。その3頭とは皐月賞の①~③着馬。サートゥルナーリアヴェロックスダノンキングリーのことだ。こんなことをレースが終わった後に書くと、結果論と思われがちだが、この3頭が非常に強いことは認めつつ、飛び抜けた存在とまでは正直、思っていなかった。

サートゥルナーリアから皐月賞前の底知れない印象はなくなったし、ダノンキングリーは重賞1勝のみで、ヴェロックスはまだ重賞未勝利。しかし、だ。今年は他のライバルたちに正直、魅力的な存在がいなかった。

その他の皐月賞組は実績上位のアドマイヤマーズが回避を表明したこともあり、上位3頭には決定的な差をつけられた。リオンリオンが淀みないペースを刻みながら、勝ち時計は平凡だった青葉賞組にも食指はそそられず。京都新聞杯皐月賞で⑥着だったタガノディアマンテが1番人気に推されていたメンバー構成ではパンチ力に欠ける。正直、ピンとくる魅力的な「逆転候補」は見つからないまま。ただ、実際のオッズほど大きな差はないと思ってはいたが…。

レースが終わった後、真っ先に頭に思い浮かんだのはダービーはもっとも運のいい馬が勝つ」という言葉だった。まずは敗れた「3強」たちを取り上げたい。

1番人気ながら④着だったサートゥルナーリア。この馬に関しては、やはりルメール騎手の騎乗停止が大きかった。出遅れたとはいえ、レーン騎手の騎乗に致命的なミスがあったわけではない。ただ、数週間前に初騎乗だった異国のダービーで圧倒的1番人気馬での参戦。中団から馬群の外へ持ち出す「安全運転」は仕方ないが、この超高速馬場では普段以上に大きなロスであったことは確かだ。

2番人気で③着だったヴェロックスに関しても、13番枠という外めの枠が大きなマイナスになったような印象だ。3番人気で②着だったダノンキングリーは理想的なレース運びから、③着以下には決定的な2馬身半差をつけたが、さらに完璧に立ち回った馬が、前にもう一頭いたということが…。

その勝ち馬はロジャーバローズ。単勝93.1倍の12番人気という低評価を覆しての勝利は「運」を味方につけていた。前述した通り、この高速馬場での最内枠をゲットしたことから始まるが、何より大きかったのが逃げるリオンリオンが前半1000m57秒8というハイペースを刻んでくれたことだろう。浜中騎手「長く、持久力を活かす競馬が得意」と話すように、今までのキャリア5戦で上がり3ハロンはすべて35秒台。瞬発力勝負の経験は乏しかった。

最近のダービーは過去10年中、良馬場で行われたのが8回。勝ち馬の上がり3ハロンは32秒台が1回、33秒台が4回、34秒台が3回だった。一瞬の脚がモノを言うレースが続き、古馬になってから2000mあたりをベストとする中距離タイプが結果を出してきたと言える。しかし、リオンリオンの果敢な先行策が傾向を覆し、持久力勝負を生んだ。ロジャーバローズはポツンと2番手から、内ラチ沿いでロスのない絶好の立ち回り。直線に入ってから追い出されると、上がり3ハロンは35秒1ながら何とかクビ差踏ん張った。

ただ、強運だけで頂点はつかめない。ロジャーバローズは5戦2勝②着2回。唯一の着外だったスプリングSは初の長距離輸送でイレ込み、敗因が明確な一戦。その時以来の関東遠征となった今回は、馬具などを使った対策も考えていると中間に聞いていた。これで角居厩舎はJRAのG1・26勝目。大一番での「厩舎力」を改めて見た思いだ。

そして、完璧な手綱さばきを見せた浜中騎手にも触れておきたい。12年に24歳の若さで全国リーディングを取ったが、ここ数年は外国人騎手の台頭や落馬による長期の休養などが響き、16~18年は60勝台と存在感が薄くなっていた。以前は毎回のように騎乗していたG1も、今年はダービーが3度目の参戦。「G1の裏の(開催していない)競馬場で乗っているのは辛いですよ」と以前、口にしていただけに悔しい日々を過ごしていたはずだ。騎手は結果を出してこその勝負の世界。この勝利が、彼にとっての「追い風」になることを願いたい。

今年も幕を閉じた競馬の祭典。冒頭に書いたように、分厚いと思われていた「3強」の壁は、「運」も味方につけた激走馬の前に打ち砕かれた。まだ、3歳牡馬戦線の勢力分布図はまだ固まっていない。新興勢力の台頭、急成長を遂げる馬、逆襲の時を待つ実績馬たち…。秋にはどんな景色が広がっているのか。興味深く、その変化を見守っていきたい。


TOPページに戻る