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速攻レースインプレッション

近2戦で磨いてきた先行力が、ここで花開いた

文/編集部(T)、写真/川井博


出馬表が出た時点では13頭立てで行われるはずだった、今年の函館スプリントS。ところが、ご存じの通り禁止薬物が含まれた飼料添加物(サプリメント)を摂取した可能性がある馬が出てしまったため、6頭が発走除外になった

その中には上位人気になりそうだったダノンスマッシュリナーテなどの馬も含まれていたため、予想する側にとってもなんともテンションを上げづらいレースになってしまった。

いずれにしても出られなかった馬、オーナー、騎手、厩舎関係者、さらにファンはもちろん、売り上げ減やイメージダウンを被ったJRAにとってみてもマイナスで、誰も得をしないアクシデントになってしまった。このような事態が二度と起こらないよう、再発防止策を万全にお願いしたいものだ。

残った7頭の中には、前走の京王杯スプリングCでレコード勝ちを飾り、安田記念をスキップしてスプリント路線に矛先を向けてきたタワーオブロンドンがいた。

発走除外となった馬だけでなく、残った側も誤算はあったはずタワーオブロンドンはここが初めての1200mで、他馬より重い58kgを背負っての参戦。多頭数が予想されるスプリンターズSに向けて、スプリント戦独特のペースへの対応など試したいことも多かったはずだが、その思惑も外れてしまった。

果たして、逃げたカイザーメランジェが作ったペースは前半600mが34秒4。稍重馬場とはいえ、良馬場だった昨年の33秒1に比べて1秒3遅く京王杯スプリングC(34秒2)よりも0秒2遅いものとなった。

こうなると、前に行った馬は強い。快調に逃げたカイザーメランジェは勝負所でも持ったままで、2番手追走から追いすがるアスターペガサスを突き放し、1馬身半差を付けて悠々と逃げ切り勝ち。タワーオブロンドンは直線で伸びてはきたが、いかにも展開が向かなかった感じで、③着に上がるのが精一杯だった。

重賞初制覇を飾ったカイザーメランジェにとって、展開その他がいろいろと向いた。とはいえ、負かしたアスターペガサスタワーオブロンドンはどちらも重賞勝ち馬で、それなりに力は発揮しているはず。それを負かしたのだから価値は低くないだろう。

カイザーメランジェは近2走が⑤⑥着ということで人気はさほどなかったが、2走前は17頭立ての大外枠、前走は初の直線競馬で、いずれも先行している。3走前で4角11番手から③着に差し込んだ馬が、近2戦で磨いてきた先行力がここで開花したということだろう。

カイザーメランジェの血統表を見ると、父サクラオリオン、父の母はサクラセクレテーム、母サクラジュレップ、母父サクラプレジデント、母母サクラブルース。2代前まで遡ると、6頭中5頭が"サクラ"という血統である。サクラオリオン09年函館記念(札幌で施行)、サクラプレジデント02年札幌2歳S03年札幌記念勝ち馬。父や母父とは違うスプリント路線だが、生粋の"洋芝血統"が花開いた形でもある。

ちなみに、函館スプリントSを4角先頭から押し切った馬は多くなく、01年メジロダーリング、03年ビリーヴ、18年セイウンコウセイだけ。この3頭は、いずれもその後スプリントG1で連対していることは興味深い。カイザーメランジェが今回見せたスピードは侮るべからず、ということになるかも?

一方、これまでのアスターペガサスは差す競馬で結果を残していたが、今回は2番手追走から②着に粘った。少頭数とはいえ、初めての古馬相手で小回りコースにも対応する器用さを見せた点は、今後に活きてくるはず。

③着のタワーオブロンドンも、悲観する内容ではなかった。絶好のスタートを切り、ここで勝つためなら前に行く選択肢もあったはず。ところが、レーン騎手は押して行くことなく自然体で中団に控え、いつもの競馬に徹したのは先を見据えたからだろう。そこからメンバー最速となる上がり33秒5を使ったことは評価できる。

前代未聞のアクシデントはあったが、出走した馬にとっては勝った馬、負けた馬にそれぞれ収穫があった函館スプリントSだったといえるのではないだろうか。


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