速攻レースインプレッション
今回は逆の乗り替わりで重賞2勝目&重賞初制覇
文/浅田知広、写真/小金井邦祥
もっとも、7月7日ではなかった昨年でも枠連36.1倍、馬連98.5倍。そして一昨年は45.5倍と165.8倍。「七夕の日」でより注目される部分もあるとはいえ、「枠連7-7の売れっぷり」は、毎年そうは変わらないようだ。
その7枠、14番のブラックスピネルはオープン・重賞4勝馬(しかも前走②着)でも、単勝は7番人気の12.0倍止まり。もう1頭の13番ウインテンダネスは昨年のG2・目黒記念を制した馬だが、こちらは9番人気で15.8倍。実績だけでいえば「枠連の23.2倍が適正オッズです」と言われてもおかしくない気もしてくる。ただ、ハンデや適性、相手関係などもあってこの評価、ということだ。
一方、単勝4.2倍で1番人気に推されたのは、ここまで[4.1.1.1]の4歳馬ロシュフォール。続く2番人気クレッシェンドラヴは近走①③①②着で、前走は同コースのオープン特別・福島民報杯で僅差の②着。そして3番人気ミッキースワローは前々走・新潟大賞典でロシュフォールに先着する②着。ほかにG2のセントライト記念勝ちに、アメリカJCC②着もあり、これはこれで各馬とも上位人気で納得、というところ。仮にハンデ戦ではなかったとしても、同じような混戦模様になったのではないだろうか。
そんな混戦の中、もし「逃馬投票券」があれば鉄板だったのがマルターズアポジーだ。ゲートの出こそ決して速くはなかっが、ほかにもタニノフランケルやブラックスピネルなど行きたい馬が多いメンバーながら、一枚上の二の脚であっさりと先手を奪っていった。
4番人気のタニノフランケルが2番手にはつけたが、他の有力どころは後方集団。3番人気ミッキースワローがその集団の一番前で、それでも10番手あたり。直後に2番人気のクレッシェンドラヴや、1番人気のロシュフォールが続く展開となった。
前半の1000m通過は58秒0(稍重)で速い流れ。しかし小回り福島、残り800mを切るころには各馬とも前へ前へと進出を開始した。中でも勢いが目立ったのはミッキースワローだった。4コーナーでは、もうまくり切るくらいの勢いで先行各馬の外。こうなると、「離れた2番手」で悪くない競馬に見えたタニノフランケルあたりは苦しくなる。
直線に向くと、馬場の3分どころからミッキースワローが単独先頭へ。しかし残り200mあたりで一気に勢いが失せ、ラスト1ハロンは13秒0。勝負どころでさすがに勢い良く動きすぎたのではないか、と思われた。ただ、もともとペースが速かったところに、他の各馬も早めの追撃を仕掛けたことで、後続の脚もやはり上がり気味。大外からクレッシェンドラヴがじわじわと差を詰めたものの、なかなか前には及ばない脚色だった。
結局、ミッキースワローがクレッシェンドラヴに4分の3馬身の差をつけて優勝。②着から3馬身離れた③着には好位からロードヴァンドールが粘り込んでおり、厳しい展開でも早め勝負に出ていかなければ、勝ち負けには絡めなかった、ということになる。
そんな勝負に勝ったのは、デビュー4年目の21歳・菊沢一樹騎手だ。ミッキースワローは2017年のセントライト記念以来となる重賞2勝目だが、同レースではデビュー以来手綱をとってきた菊沢騎手から、叔父の横山典弘騎手へと乗り替わっていた。
今回は逆に、横山典騎手から菊沢騎手への乗り替わりで、菊沢騎手はJRA重賞初制覇となった。父であり、自厩舎でもある菊沢隆徳厩舎の馬での勝利。そして、先行勢の中ではうまいレース運びを見せたロードヴァンドール・横山典騎手を③着に下しての優勝というのも、自信に繋がることだろう。
ミッキースワローは前述のように重賞2勝目。昨年はほかに大阪杯で⑤着、そしてジャパンCでは後方からメンバー中最速の上がりを記録してやはり⑤着と、G1でも通用するだけの力は見せている。今回、G3とはいえ約2年ぶりの勝利を挙げ、こちらも今後が楽しみな存在だ。
ちなみに枠連の配当は、7枠を挟んだ6-8で1620円。馬連12-15は2710円つけていた。いくら枠連7-7が過剰人気といっても、各枠2頭ずつ入る競馬では7-7以外を買ったところで、なかなかおいしい配当にはありつけない。3番人気→2番人気決着だけに「本命-対抗だったのに、つい枠連のほうを買ってしまった」という人もいるのではなかろうか。予想も難しいが、馬券の買い方というのもまた難しいものだ。