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自分のスタイルを貫いた1番人気馬が初の重賞タイトルを手に入れた

文/出川塁、写真/川井博


荒れる重賞というイメージの強い函館記念。実際、過去10年のうち8年は3連単10万円以上の配当が出ており、特に近3年は3連単23万、91万、57万と波乱が続いている。

その大きな要因となっているのが、1番人気が[0.1.0.9]とかなり苦戦していることだ。過去10年で馬券圏内に入ったのは10年②着のジャミールだけ。同馬以外の1番人気のべ9頭はことごとく④着以下に敗れている。

その9頭の戦績を改めて確認すると、ある凡走パターンが浮かび上がる。それは近走で芝1800mを好タイムで勝っていた1番人気は危険ということだ。たとえば14年のグランデッツァ。2走前の都大路Sで1分43秒9という芝1800mの日本レコードを記録していたが、⑩着に大敗してしまった。

昨年のトリコロールブルーも同様で、2走前の大阪城Sを1分45秒3で制したあと前走の鳴尾記念も③着にまとめていたのだが、函館記念では掲示板を外す⑥着に終わっている。一昨年⑥着のサトノアレスも、前走の巴賞を1分46秒5と洋芝にしては悪くないタイムで勝っていた。さらには13年と15年に二度にわたって1番人気に応えられなかったエアソミュールも、芝1800mを好タイムで①着の実績を持っていた。

函館記念が行なわれるのは1回函館から通算して5週目。ある程度使い込まれたあとの馬場で、そもそも洋芝なので極端に速い時計はまず出ない。特に近年は温暖化のためだろうか、この時期の函館は梅雨の影響を避けられず、雨が降りやすくもなっている。

そうした時計の出ない馬場状態で、コーナー4つの芝2000mという条件で行なわれるのが函館記念というレース。当然ながら時計の速い芝1800mとは別の適性が問われ、特にコーナー2つの京都や阪神の芝1800m実績はアテにならない。

したがって、軽い馬場で活きるスピードや瞬発力を長所とする生産馬が多いノーザンファームもここでは苦戦傾向にある。過去10年の成績は[2.1.1.23]、勝率7.4%、複勝率14.8%、単勝回収率60%、複勝回収率65%。それでも2勝を挙げているのはさすがだが、全体としては凡走が目立つ。なお、2勝は12年のトランスワープ(父ファルブラヴ)、17年のルミナスウォリアー(父メイショウサムソン)で、いずれも父が馬力に優れた非サンデー系だったことは覚えておいていいだろう。

といったことを事前に準備していたのだが、今年の有力どころに函館記念と相性の悪い「芝1800m高速タイプ」の馬は見当たらなかった。最後まで1番人気の座を争ったマイスタイルレッドローゼスを見ても、前者は道悪の函館芝2000mで2戦2勝と適性十分。後者は函館初出走ながら、同じ洋芝の札幌芝2000mで2戦2連対。また、2走前の大阪城Sでは④着に敗れているが、勝ち時計1分46秒1とそこそこ速かったコーナー2つの芝1800mを負けているのは、むしろ函館記念に向けては好材料ともいえる。

当然ながら、同じような結果が数年続けば、各馬の陣営も過去の傾向から適性が合いそうな馬を出走させてくる。それは馬券を買う側のファンも同じで、過去数年の結果から適性の有無を見抜こうとする。よく「ジンクスは言われた途端に止まる」というが、それはこういう一面があるからだろう。

その結果、06年のエリモハリアー以来13年ぶりとなる1番人気の勝利が生まれることとなった。それにしてもマイスタイル田中勝春騎手の逃げは乾坤一擲。馬場状態を思えば前半1000m通過の59秒8はハイペースと言ってよく、実際、向こう正面で2番手を追走するマイネルファンロンにはざっと5馬身、3番手以下はさらに5馬身以上の差をつける大逃げとなった。

3角で後続との差が詰まり、4角を回って直線を向いたときの手応えや脚色では完全に外のマイネルファンロンのほうが上回っていた。ラップを見るとラスト2F目の部分で11秒6が記録されており、ここでマイネルファンロンがスパートをかけたことがわかる。

ところが、残り1Fを切ってからマイスタイルが息を吹き返すのだ。4年3ヵ月ぶりの重賞制覇を目指して懸命に追う田中勝騎手のアクションに応えて差し返し、ゴール板ではクビ差先着していた。

結果論ではあるが、マイネルファンロンは追い出しを直線まで我慢していればもっと際どい勝負に持ち込めていたかもしれない。終わってみれば前半59秒8、後半59秒8の綺麗なイーブンラップ。マイスタイルを貫いた1番人気馬が函館芝2000mで3戦3勝とするとともに、初めての重賞タイトルを手に入れた。


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