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速攻レースインプレッション

出遅れもなんのその、逃げ切りで姉弟制覇達成

文/出川塁、写真/川井博


過去10年の函館2歳Sでは、牡馬の[5.4.5.69]に対して、牝馬は[5.6.5.54]。全体の出走頭数では少ない牝馬のほうが、馬券になった回数では多い。1~3番人気の成績を見ても、牡馬の[4.2.3.9]より牝馬の[5.2.1.4]のほうが信頼できる。なかでも牝馬の1番人気は[3.1.0.0]と連を外したことがない。

今年1番人気となったのも牝馬のレッドヴェイパーだった。件の不正薬物摂取問題に巻き込まれるかたちでデビューが1週遅れたものの、仕切り直しの新馬戦を勝利。勝ち時計の1分9秒8は同日の古馬2勝クラスに0秒3差の好タイムで、函館2歳Sの出走メンバーでは最速の持ち時計となった。また、ここでハナ差②着だったケープコッドは、中1週で出走した未勝利戦を5馬身差で圧勝。③着のメイショウナパワンも次走で勝ち上がっており、このことも前評判に輪をかけるかたちとなった。

特にケープコッドはゴール前の勢いで勝ち馬を上回っており、函館2歳Sの出走が叶えば1番人気までありえたのではないか。しかし、未勝利戦勝ちのため優先権がなく、結果的に2/4の抽選を突破できず。レッドヴェイパーの1週スライドがなければ新馬勝ちを飾った可能性は高いだろうし、あるいは首の上げ下げとなったハナ差の接戦を制していれば……。勝負の綾というのは、いつもながら紙一重である。

もうひとつ、新種牡馬の産駒が3頭出走してきたことも見どころとなった。ビアンフェ父キズナは、すでに4頭が勝ち上がるなど悪くない滑り出しを決めている。このビアンフェは15年の函館2歳S勝ち馬ブランボヌールの半弟ということもあって、人気の一角を占めていた。そのほか、父エピファネイアスマートカーリー父カレンブラックヒルの道営所属アザワクにも印が回っており、虎視眈々といったところだ。

と、ここまでは客観を装って書き進めてきたのだが、私事で恐縮ながら、実のところレッドヴェイパーに一口出資しているのである。出資馬が重賞で1番人気に推されることなど、そうあるものではない。いてもたってもいられず、函館への弾丸往復を敢行することにした。いまや新幹線も開通し、函館はだいぶ近くなった。

新幹線から乗り継いで、函館駅に着いたのは昼過ぎのこと。そこで思ったのが、今日は風が強いなということだった。路面電車に揺られて25分ほどで競馬場に到着し、スタンド前を歩いてみると直線は向かい風。もしかして410キロ台のレッドヴェイパーには不利なのでは、と嫌な予感に襲われたのは紛れもない事実だ。

そこで当日のレース結果を確認すると、逃げ馬が残るケースが目立っている。風の影響なのか、それとも馬場なのか。その原因までは断定できないが、前日土曜は差し馬が結構来ていたから、好走馬の脚質傾向は明らかに変わっていた。

どうにかスタートを決めて前に行って欲しい。その願いも虚しく、レッドヴェイパーは出遅れて最後方からの競馬となってしまう。小柄な牝馬が内で揉まれる見た目にも苦しい展開となり、直線でようやく外に出して懸命に追われたものの、⑤着と掲示板を確保するのがやっとだった。

とはいえ、勝ったビアンフェもスタートはあまりよくなかったのだから、終わってみればこの馬の力が一枚上手だった。1馬身ほどの出遅れもなんのその、最内枠から二の脚を使ってすかさず先頭へ。そして、直線を向くと一気に後続を突き放してセーフティリードを築き、タイセイビジョンの追い込みを余裕をもって押さえ込んだ。

種牡馬キズナにとっては、もちろんこれが重賞初勝利。それが芝1200mというのは現役時代を思えば意外だが、自身の母の父がStorm Catだけに、母方次第で短距離適性のある産駒が出てもおかしくはない。前述の通り、ビアンフェは短距離重賞を2勝したブランボヌールの半弟だから、むしろ妥当な結果とも言える。

また、冒頭で函館2歳Sは牝馬優勢と述べたが、今年は馬券圏内を牡馬が独占する結果となった。勝ったビアンフェが510キロの大型馬なのに対し、人気を集めた牝馬のレッドヴェイパーは410キロで⑤着、パフェムリも424キロで④着といずれも馬格がなかった。向かい風によってパワーが必須となって牡馬が優勢に。結果論ではあるが、あるデータがあったとしても、その運用には柔軟性が欠かせない。そして、一口出資という思い入れによって、メガネが曇ってしまった面があるのは否定できないところである。


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