速攻レースインプレッション
本来の姿で着差以上の完勝を収めた
文/編集部(M)、写真/川井博

過去10年のクイーンSでの1番人気は[4.3.1.2]という成績で、この10頭は北海道の洋芝実績によって着順が異なっていた。それまでに札幌か函館の芝で連対歴があった馬は[4.2.0.0]とオール連対を果たしていたのに対して、札幌芝でも函館芝でも連対実績がなかった馬は[0.1.1.2]と勝てていなかった。クイーンSは洋芝や滞在競馬という条件で強い馬を決めるレースで、それはそれで有意義だと思う。
北海道の洋芝で連対歴がある1番人気は信頼できたわけで、今年はどうだったかと言うと、ミッキーチャームは札幌芝で1戦1勝、函館芝で2戦2勝で、連対どころか負け知らずだった。当然、信頼して然るべき存在だったのだが、金曜日の枠順発表を経て、不安な面も出てきてしまった。8枠13番という外枠になったからだ。
過去10年での1番人気は、ひと桁馬番だと[3.2.1.1]、ふた桁馬番だと[0.1.0.1]で、2番人気以下を含めても馬番11番より外枠だった馬は2000年以降のこのレースで[1.3.3.46]という成績だった。勝利したのは3歳で斤量52kgだった2010年のアプリコットフィズ(7枠12番)で、馬番11番より外枠で斤量55kg以上の馬は[0.3.3.40]だった。
今回のミッキーチャームは斤量56kgを背負っていたが、2000年以降のこのレースで56kg以上の馬は未勝利([0.2.2.13])でもあった。競馬の神様がわざと予想を難しくしようとしたわけでもないのだろうが、ミッキーチャームが外枠に入り、複合的に考えれば考えるほど「勝ち切れるのか?」という疑問符が頭の中を渦巻くようになってしまった。
外枠の馬が不利になるのは、馬群が固まって大きく外を回らされる時で、逆に、隊列が縦長になれば、距離ロスを抑えてスムーズな競馬をしやすくなる。展開がポイントだったことを思えば、リリックドラマがハナを切り、ウインファビラスも付いていって1000m通過60秒6と平均的に流れて馬群が固まらなかったことは、外枠の馬たちにとっては好都合だったのだろう。ミッキーチャームは終始スムーズなレースができ、その後ろを追走した8枠14番のカリビアンゴールド(この馬も北海道の洋芝巧者)が直線で差し込んできた。
後方の内ラチ沿いを追走したスカーレットカラー&岩田康騎手が直線で馬群を捌きながら差し込み、最後はミッキーチャームにクビ差まで迫ったが、内容的にはミッキーチャームの完勝に見えた。ミッキーチャームは中山牝馬S(⑭着)→阪神牝馬S(①着)→ヴィクトリアマイル(⑧着)と446kgで走っていて、今回は10kg増の456kgという馬体重だったが、昨夏の北海道シリーズでも450~458kgで3戦3勝と走っていて、これぞ滞在効果で、本来の姿なのだろう。
ミッキーチャームは昨年の秋華賞では逃げてあわやのシーンを作り、アーモンドアイから0秒2差②着に粘り込んだが、今春の阪神牝馬S、そして今回と控える競馬で結果を残している。1年経っての成長も見られるだけに、再びアーモンドアイと一緒に走るところを見てみたいものだ。
2番人気だったフロンテアクイーンも斤量56kgを背負っていたが、こちらは3枠3番という内枠で、内目を走ったものの伸びきれず(⑦着)、明暗が分かれてしまった。G1以外で掲示板を外したのは4歳時の中山牝馬S(⑧着)以来で、その時は7枠14番という外枠だったので、今回のレースぶりはやや気になる。
3番人気だったサトノガーネットは⑥着で、メンバー中2位の上がり33秒5で追い込んできていたが、昇級してのOPでの1800mで、忙しい面があったのだろう。近2走での勝ち鞍は2000~2400mで、母は仏オークス⑤着で2勝を2000m以上で挙げた馬だから、2000m以上の距離でもう一度その走りを見てみたい。