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速攻レースインプレッション

充実期に好パートナーとの巡り合い、待望の重賞初制覇

文/出川塁、写真/川井博


今年のエルムSで注目の1頭となったのがタイムフライヤーだ。2歳時にホープフルSを制してG1馬となったあとは苦戦が続き、ここでダートに矛先を向けることとなった。

とはいえ、決して苦し紛れの転向ではなかったはずだ。所属する松田国英厩舎は、クロフネベルシャザールブロードアピールなど芝からダートに切り替えて大きな成果を出した実績を持つ。ダート適性のある馬を見抜く方法やダートに適した調教法について、これほど信頼できる厩舎もない。プラス18キロでの出走となったのも、ダート仕様の調教を施してパワーを増してきてからではなかったか。

血統の裏付けも十分。父ハーツクライはダートも問題なく走るし、なにより母タイムトラベリングは04年のジャパンCダートなどダートG1を5勝したタイムパラドックスの全妹である。

結果としては⑥着に終わるのだが、展開の影響も大きかったように見える。前半900m通過はエルムS史上最速の52秒5。稍重の馬場を考えてもかなりのハイペースで、これを好位で追走したうえに、3~4コーナーで自ら逃げ馬を捕まえにいって脚を使っている。ゴール寸前で後続馬にドッと差されてしまったが、残り100mまでは2番手争いに加わっていた。

楽々と先行できたようにダートの走りはまったく問題なく、じっくり脚を溜める競馬をしていれば全然違う着順になっていたはず。また、距離はもう少しあったほうがよさそうで、2000m以上のレースも多いダート交流路線への参入も楽しみだ。

逆に、このハイペースを最大限に活かしたのが勝ったモズアトラクションだ。先行馬が崩れたことも大きかったが、それ以上に大きかったのが、ハイペースのおかげで馬群がバラけてロスなくポジションを押し上げられたことだ。3~4コーナーでラチ沿いを通ってロスなく5番手まで浮上し、外に持ち出すときもスムーズ。あとは自慢の末脚を炸裂させるだけだった。

また、1馬身半差の②着に入ったハイランドピークも後方待機から内ラチ沿いを進出と勝ち馬同様の競馬をしており、このレースで好走するにはこれがベストだったのだろう。③着のサトノティターンは今回580キロの巨漢馬ということもあって器用な走りは望みづらく、展開は悪くなかったものの大外を回したぶん上位2頭に遅れをとるかたちとなった。

モズアトラクション自身が充実期に入ったタイミングで、好パートナーを迎えた巡り合わせのよさも見逃せない。極端な追い込み脚質で展開に左右されがちなところもあるが、藤岡康太騎手が手綱を取るようになってからは崩れずに走っている。その初戦となった平安Sでいきなり12番人気②着に激走したあと、北海道シリーズに転じて大沼S④着、マリーンS②着ときて、ここで重賞初制覇を飾った。

一方、1番人気のグリムは見せ場を作ることもできず⑦着に敗退した。道中の位置どりは悪くなかったのだが、3コーナーあたりで早々と手応えが怪しくなってしまった。前走でペースが落ち着きやすい交流重賞を使ったあとの300mの距離短縮で、しかもレース史上最速のハイペースとなり、追走が苦しくなったのかもしれない。3番人気のリアンヴェリテも⑤着まで。とはいえ、このハイペースを2番手で追走して掲示板に残ったのは地力の現れと見るべきだろう。

しかし、このリアンヴェリテモズアトラクションの人気順を改めて見直すと実に興味深いことがわかる。というのも、大沼SマリーンSと一緒に走っていずれも勝ったのはリアンヴェリテだった。人気の面でも両レースともにリアンヴェリテが上回っていた。それなのに、このエルムSではモズアトラクションが2番人気、リアンヴェルテが3番人気と逆転し、実際にモズアトラクション①着、リアンヴェルテ⑤着という結果になった。

前2走の函館から札幌にコースが替わったとはいえ、距離は同じ1700mで、求められる適性もそこまで極端には違わない。それでも、前2走とは逆の人気順になって、その通りの結果になるのだから、最近の競馬ファンはレベルが高すぎる。こういう人気の動きにもっともっと目を光らせないといけない時代なのだなと、改めて思わされた今年のエルムSだった。


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