速攻レースインプレッション
遅れてきた5歳馬が、成長して表舞台へ
文/編集部(T)、写真/川井博
一方、今年に入って3戦3勝、クイーンエリザベス2世Cで悲願のG1初制覇を飾り、勢いをつけての参戦となったのがウインブライト。この2頭の単勝オッズは終始拮抗していて、最終的にはレイデオロ2.2倍、ウインブライトが3.0倍に。3番人気ミッキースワローも同じ5歳馬で、こちらは前走の七夕賞で1年10ヵ月ぶりの重賞勝利を飾り、ひと足先に"復活"を決めていた。
この3頭、同じ5歳ではあるが、対戦自体はそう多くない。レイデオロとウインブライトは皐月賞とダービーで対戦していて、ともにレイデオロが先着。レイデオロとミッキースワローは昨年の有馬記念だけの対戦で、レイデオロが先着。ミッキースワローとウインブライトの対戦は昨年の大阪杯だけで、ミッキースワローが先着している。
単純な対戦比較だと、レイデオロ>ミッキースワロー>ウインブライトと考えられるが、そう単純にいかないのが競馬。成長力もさることながら、頭数や枠順、メンバー、それらによって生み出される展開のアヤって恐ろしい…と痛感せざるを得ない、今年のオールカマーだった。
格上挑戦ながら、短距離で実績を残してきたトニーファイブが行くかとも思われたが、外からスティッフェリオ&丸山騎手が迷うことなくハナへ。トニーファイブは丸山騎手の妹弟子にあたる藤田菜七子騎手が乗っていることもあってか(?)、すんなり2番手に控え、後続にフタをする形に。結果を見ると、実質的にはここで勝負あったのかもしれない。
勝負所でスッと後続を離し、直線でも脚色が衰えずに悠々と逃げ切ったスティッフェリオに対し、上位人気3頭はミッキースワローが最後に②着まで差し込んできたものの、前を脅かすには至らなかった。
スティッフェリオはG3を2勝していたが、G1~G2ではこれまで5戦して馬券圏内がなく、相手が強くなると伸び切れない、どうにももどかしいタイプ。レイデオロとは前走の宝塚記念が初対戦(レイデオロ⑤着、スティッフェリオ⑦着)、ミッキースワローは3戦して1回先着、ウインブライトとは初対戦で、クラシック戦線に参戦した3頭に対し、どちらかというと裏街道を歩んできた馬だった。
スティッフェリオにとって、確かに今回は展開も向いたが、それを引き寄せたのは、8枠9番から迷いなく逃げた丸山騎手の好騎乗。さらに馬自身の成長も見逃せない。人馬ともに初のG1制覇に向けて、さらなる成長を期待したい。
ミッキースワローは展開こそ向かなかったが、自分の競馬に徹しての②着。昨年は大阪杯、ジャパンCでともに⑤着と健闘した馬で、若い菊沢騎手を背にG1戦線に戻ってどう戦うか、母父ジャングルポケットで、決め手を考えても東京は悪くなさそうだから、さらに相手が強くなる次が試金石だろう。
レイデオロは時として掛かる面がある馬で、テン乗りの福永騎手はソロッと出して後方から進めたが、最後は競り負ける形に。これで10頭立て以下のレースは③④⑥④着となり、やはり少頭数のスローは向かないのだろう。G1ではここまで少頭数ではないだろうから、巻き返しても不思議はないはず。
天皇賞・秋はアーモンドアイが待ち構え、この日神戸新聞杯を制したサートゥルナーリアの参戦も噂される。毎日王冠、京都大賞典組も参戦するはずで、少し特殊な状況となったオールカマーの結果が繋がるかどうか、微妙なところと言わざるを得ない。
とはいえ、昨年の天皇賞・秋は13頭立て、ジャパンCも14頭立て、今年の宝塚記念は12頭立てと、いずれもフルゲートを割っていた。近年の傾向通りなら、スティッフェリオの先行力が活きる展開になる可能性は、そこまで低くないかも?