速攻レースインプレッション
今年の結果は波乱パターンとして覚えておきたい
文/出川塁、写真/川井博
ところが今年はG1馬の出走がなく、17頭の多頭数と、私がイメージする京都大賞典とは正反対の様相を呈した。その要因のひとつとして、現役の菊花賞、天皇賞・春、有馬記念の勝ち馬3頭がすべて凱旋門賞へと遠征したことが挙げられる。エタリオウやグローリーヴェイズ、クリンチャーといった長距離G1の②着馬はいるものの、勝ち切ったか否かで競走馬の格は大きく変わってくる。このメンバーならチャンスありと踏んだ陣営がこぞってエントリーしてきたのだろう。
出走頭数がある程度揃った京都大賞典は荒れる。2000年以降、13頭立て以上の年が4回あるが、1番人気が勝ったことは一度もない。今年と状況が似ているのが17年で、のちにG1を勝つシュヴァルグランとミッキーロケットはいたものの、当時はG1馬不在で15頭立て。結果、7歳牝馬のスマートレイアーが勝ち、②着にトーセンバジルが入って馬連4300円をつけた。11番人気のヒットザターゲットが単勝万馬券の大穴をあけてレース史上最大の波乱となった13年も、この4回のなかに含まれている。
この話の流れから先に結論を言ってしまうと、今年も大荒れに荒れた。スタート直後に大外枠のウインテンダネスが躓いて落馬するアクシデントで幕を開けたのも、波乱の結末を予見するものだったかもしれない。
その不運をよそに先手を奪ったのは、骨折からの復帰戦となるダンビュライト。レノヴァール、ドレッドノータスといった穴馬たちがそれに続く。1番人気のグローリーヴェイズも先行する構えを見せたが、ここあたりで鞍上のミルコ・デムーロ騎手は長手綱。その様子から察するに、本当はもう少し控えた位置が希望だったようにも見えたが、16番枠からだとなかなか思い通りにもいかないのだろう。一方、2番人気のエタリオウは馬群のほぼ最後方につけた。
前半1000m通過は59秒7だが、良好な馬場状態を考えればハイペースというほどでもない。むしろ、最初の1ハロンを除き、いちばん遅いラップでも12秒4という緩みのない流れになったほうが重要で、瞬発力より持続力を問われる展開となった。
そして、それ以上に重要になったのが位置取りだ。率直にいって、直線の攻防はいささか淡白なものだった。逃げたダンビュライトを、その後ろにつけていたドレッドノータスが差しただけ。インベタの2頭による決着で、もう1列後ろにいたノーブルマーズも1番枠から終始ラチ沿いを通って④着に入っている。
前述したようにメリハリのない流れで、前が止まらないイン有利の展開となっては、差し・追い込み馬には苦しい。唯一、早めに動きを見せたシルヴァンシャーが直線でも脚を伸ばして③着に食い込んだ。一方の人気どころは、グローリーヴェイズは直線で伸びを欠いて⑥着。エタリオウも以前に比べると動きが重く、⑤着まで差を詰めるのが精一杯。初の2400m戦となったエアウィンザーは距離が合わなかったのか、⑫着の大敗に終わっている。
結果、11番人気、6番人気、5番人気で3連複23万、3連単181万の大波乱となったが、思い起こせば、同じく13年と似たような構図ではある。当時も2分22秒9の高速決着で、2番枠のヒットザターゲット、1番枠のアンコイルドと内枠から道中ラチ沿いを走った2頭で決まっている。京都大賞典の波乱パターンとして覚えておきたいところだ。
最後にもうひとつ。今年の上位3頭は順にハービンジャー、ルーラーシップ、ディープインパクトの産駒で、これは遠征中のブラストワンピース、キセキ、フィエールマンとまったく同じだった。奇遇にせよ、この3頭のうち1頭でも出走していればまた違った決着になっていたかもしれない。そんなことを暗示しているような気もするし、日本時間で今晩行なわれる2400mのレースでも同じような並びで入ってくれたら最高だな、なんてことも思ったのだった。