速攻レースインプレッション
強烈な末脚で、一気にトップグループの仲間入りを果たす
文/編集部(T)、写真/小金井邦洋
そして、15年毎日王冠は①着エイシンヒカリ、②着ディサイファ。18年ローズSは①着カンタービレ、②着サラキア、③着ラテュロスで、いずれもディープインパクト産駒が②着までを占めている。この2レースはいずれも芝1800mという共通点があり、特に毎日王冠は府中牝馬Sと同じ東京で行われる。
これだけの数が出るんだから、勝ち馬もこの中にいるはず……と思いきや、そうとは言い切れないのが不思議なところ。というのも、これまで府中牝馬Sでのディープインパクト産駒は[0.4.2.7]という成績で、その中に1番人気に推された馬も5頭いながら、ことごとく勝ち切れていない。
今年も、最終的に1番人気はディープインパクト産駒のプリモシーンが推されたこともあり、"府中牝馬Sでディープインパクト産駒の初勝利なるか"が、個人的な注目ポイントとなった。
台風は過ぎたが、この日の東京は午前中から雨が断続的に降る空模様で、府中牝馬Sは稍重馬場となった。2010年以降の府中牝馬Sが道悪で行われるのは今年を含めて4回目で、今年以外の3回(11年、15年、17年)は5番人気2勝、11番人気1勝。歴史は繰り返すといったところで、結果的に今年も"波乱を呼ぶ雨"になった。
レースは最内枠のジョディーがハナに立ったが、道中でエイシンティンクルが交わして先頭へ。先行勢が飛ばしたことで、前半1000m通過は58秒3となり、これは差し決着となった昨年(58秒2)並みで、馬場を考えるとかなり速いペースに。そうなると差し馬の出番で、先団を見る位置で進めたラッキーライラックが直線半ばで先頭に立ち、これをフロンテアクイーンが交わしたところで、道中は後方2番手にいた4番人気スカーレットカラーが一気に伸びて差し切り。プリモシーンは出遅れ、直線で外に持ち出したが伸びがなく、シンガリ負けを喫した。
①着スカーレットカラーはヴィクトワールピサ産駒、②着フロンテアクイーンはメイショウサムソン産駒、③着ラッキーライラックはオルフェーヴル産駒。この上位陣を見る限り、スタミナがあって道悪が良さそうな血統が上位を占めたる形だ。
今夏の再昇級後はマーメイドS③着、クイーンS②着と安定した末脚を繰り出していたスカーレットカラーだが、これで念願の重賞初制覇。岩田康騎手と再びコンビを組んでから①③②①着とし、秋G1に向けて、一気に上位グループに食い込んできた。
②着のフロンテアクイーンはこれで芝1800m重賞を⑧②②②③①⑦②着、ラッキーライラックも②③着となり、この距離での持ち味を十分に発揮した形。古馬G1ではあと一歩の2頭だが、どちらも今回が休み明けで、一度使われて前進を期待したいところだ。
馬体重が470kg台以上の馬が馬券圏内を占めた一方、ディープインパクト産駒はオールフォーラヴの④着が最高で、馬券圏内に入ることができなかった。シンガリ負けを喫したプリモシーンは馬体増(12kg増の506kg)もあったが、距離も長かった可能性があるから、実績のあるマイルに戻ってどこまで変われるかだろう。
スカーレットカラーに話を戻すと、芝2000m以上での勝ち鞍はないが、父ヴィクトワールピサ×母父ウォーエンブレムの配合馬はウィクトーリアが今年のオークスで④着に健闘していて、スタミナも備えていそう。近2年の府中牝馬Sで連対した4頭中3頭が次走のG1で連対しており、このレースで好走することは実力の証。次は中1週で天皇賞・秋に向かうプランもあるとのことだが、決め手を活かせる展開になれば、G1の舞台でもチャンスが出てくるのではないだろうか。