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速攻レースインプレッション

鞍上の好リードと馬の本格化が噛み合って見事に戴冠

文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


皐月賞馬サートゥルナーリアが天皇賞(秋)へ、ダービー馬ロジャーバローズが故障で引退し、やや小粒なメンバーとなった第80回菊花賞皐月賞②着、ダービー③着のヴェロックスが2.2倍の圧倒的な1番人気に推されたが、前走の神戸新聞杯でサートゥルナーリアに完敗しており、気性面でも3000m戦への不安はあっただけに、絶対的な信頼のある1番人気というわけでもなかったように思えた。

傑出した馬がいなかっただけに、結果としては枠順が勝敗を分けたのではないだろうか。逃げると思われていたシフルマンがスタートで後手を踏んだため、デムーロ騎手カウディーリョが先手を奪ったが、前半5ハロンは62秒4、中盤5ハロンが62秒9、後半5ハロンが60秒7でトータル3分6秒0。先頭が代わった14ハロン目の11秒8以外はすべて1ハロン12秒台という芸術的とも思える平均ペースでレースが進んだため、長距離戦では珍しく、ほぼ団子状態でレースが進んだ。そのため道中も枠順通りのポジションでレースが進むことになった。

その中で内枠の有利さを存分に引き出したのが3枠5番ワールドプレミア武豊騎手だった。好スタートを決めると、すぐに最内に導いて、最短距離でロスなくレースを進めた。逆に7枠13番ヴェロックスは、すぐに好位を取ったものの、常にワールドプレミアの外でレースを運ばねばならず、コーナーのたびにロスがあった。

ワールドプレミアは4角もカウディーリョのすぐ外に進路を取ると、そのまま内から突き抜けた。一旦は外のヴェロックスに交わされたようにも見えたが、道中で温存したスタミナの差がゴール前で明らかになった。ヴェロックスは最後に脚が上がり、サトノルークスにも交わされて③着。ワールドプレミアはそのサトノルークスの猛追をクビ差退けてゴールした。

このそつのない騎乗こそ、武豊騎手真骨頂だ。菊花賞は19歳の史上最年少で制した昭和63年(1988年)スーパークリークに始まって、平成8年(1996年)ダンスインザダーク、平成12年(2000年)エアシャカール、平成17年(2005年)ディープインパクトに続き、令和元年に最年長50歳で5勝目を挙げた。8勝を挙げている天皇賞(春)と合わせて、3000m以上のG1・2レースで計13勝という圧倒的な成績になる。

ペースを読み切り、いかに馬に負担をかけずに騎乗するかという面では、いまだに後輩騎手たちの追随を許さない孤高の存在だ。ワールドプレミアはパドックで首を上下させ、ヴェロックス以上に激しいイレ込みを見せていた。6.5倍の3番人気はこのパドックが嫌われた面もあったのだろう。それでもゲート前の輪乗りではすっかり落ち着かせ、レースでは引っ掛かる素振りも見せたなかった。これも武豊の手腕と言えるだろう。

セレクトセール当歳で2億5920万円(税込)で落札されたワールドプレミアは、大器と騒がれながら故障のため大成できなかったワールドエースの全弟として、兄同様の期待を背負っていた。昨年の菊花賞当日の京都でデビュー勝ちを果たしたが、今春のクラシックは故障のため断念した。

秋初戦の神戸新聞杯は③着に敗れたものの、サートゥルナーリアと同じ上がり最速の32秒3を記録。デビューからちょうど1年が経過した菊花賞で、距離、折り合い、自在なレースぶりと課題を克服し、本格化を果たした。もっとも得意なのは高速馬場での末脚勝負のはずで、ジャパンCに出走してくれば古馬相手でも十分勝負になりそうな成長力を見せてくれた。

②着サトノルークスは大外を回ってワールドプレミアを上回る35秒7の末脚。皐月賞ダービーは惨敗だったが、こちらもセレクトセール1歳で2億9160万円(税込)の超高額馬。今後さらに大化けする可能性を秘めている。菊花賞に出走したディープインパクト産駒メイショウテンゲンを含め3頭だけだったが、そのうちの2頭の高額馬が①②着。振り返ればダービーもロジャーバローズ、ダノンキングリーとディープインパクト産駒の①②着だった。改めて急逝したこの大種牡馬の偉大さを示したレースでもあった。

③着ヴェロックスは、外枠を引いた圧倒的1番人気馬としては理想的なレース運びで川田騎手にはまったくはないが、川田騎手にもヴェロックスにもG1での運のなさがつきまとっているように見えた。

2番人気ニシノデイジーはスタートでフラつくなど、自身のリズムでレースができていなかった。ファンを驚かせたのが⑤着の牝馬メロディーレーン。前走の1勝クラスを338キロというJRA史上最少馬体重記録で制し、この日は2キロ増の340キロだったが、斤量は前走の49キロから6キロ増の55キロ。さすがに厳しいかと思っていたが、4角15番手から大外を回って一気の追い込み。サトノルークスと並ぶ35秒7のレース最速上がりを記録した。遠近法もあるが、その馬体はひと際大きく見えたものだった。長距離戦には高い適応能力があるのだろう。「競馬界のミニモニ娘」は今後もファンの人気を集めていきそうだ。


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