独自視点で穴馬推奨!競馬予想支援情報【サラブレモバイル】

サラブレモバイル

メニュー

ログイン

速攻レースインプレッション

アーモンドアイの強さに完全にハートを打ち砕かれた

文/木南友輔(日刊スポーツ)、写真/川井博


「その話な、そうなったら面白いよな。同じロードカナロア産駒同士だし、競馬が盛り上がるから」

サラブレ10月号の誌面で神戸新聞杯について書いた。そこで「サートゥルナーリアが菊花賞ではなく、天皇賞に向かう予定であることがフォワ賞ウイーク(神戸新聞杯1週前)のフランスですでに噂されていた」ということも書いた。

この噂を帰国後、美浦トレセンで国枝師と二人きりのとき、それとなく振ってみた。すると、返ってきたのが冒頭の言葉だった。いつものように笑顔の国枝師だった。

ファンサービスを大事にする師だが、レースが終わってみれば、あの笑顔の理由はファン目線でもなんでもなく、「絶対に負けない」「負けるはずがない」「力が違う」という自信の現れだったのだろう。

レース2日前の金曜は美浦トレセンで取材していた。午前6時の馬場開場から雨と風が次第に激しさを増していき、昼にはトレセン内、周辺の道路で冠水した場所もあって、移動に苦労するほどに…。これだけの降雨量が都内を襲っていたら、馬場はどうなるのか。そう危惧していたのだが…。

土曜は朝から東京競馬場の馬場状態の発表にビックリした。芝は1R前に重から稍重へ、昼すぎには良馬場へ回復した。日曜朝は曇り空だったが、徐々に日が差し、素晴らしい秋晴れ。令和最初の天皇賞・秋は絶好の天気と馬場のもとで行われた。

土日で天皇賞以外に芝2000m戦は3鞍。土曜2Rは稍重馬場の2歳未勝利戦で1分59秒8の時計が出て(初ブリンカーの馬が大逃げを打ったため)、日曜8Rは良馬場の2勝クラスが2分2秒0の遅い時計で決着する(田辺騎手の絶妙スロー逃げ)。馬場状態、ラップの分析も大事だが、競馬には数字で測れるようで測れないものがある天皇賞を前にそんなことを思った。

天皇賞・秋アーモンドアイを筆頭にG1馬10頭の好メンバーがそろい、真っ向勝負になった。

ハナを奪ったアエロリットの1000m通過は59秒0。スタートは速くなかったが、好位を奪いにいったサートゥルナーリアアーモンドアイの前を奪ったスミヨン騎手戒告処分を受けている。

前週のオクトーバーSではあれだけ後ろを振り返り、他馬に迷惑を掛けまいという姿勢だったスミヨンがやはりここ一番は勝負にきた。

アーモンドアイルメールはインの3列目。直線を向き、逃げるアエロリット、その外から並びかけるサートゥルナーリアダノンプレミアムの後ろを絶好の手応えで追走した。内ラチ沿いが空く、仮に空かなくて少し仕掛けが遅れたとしても差し切ることができる、そんな自信を感じる騎乗だった。

ルメールは坂を上がってから3回後ろを振り返り、ゴール寸前に3回握りこぶしを振り下ろした。1週前は「息づかいが荒い」、当週の追い切り後は「80%」…、そんなルメールのコメントも「万全でなくても絶対に負けない」「力が違う」という自信があったから飛び出たのだろう。

皐月賞馬サートゥルナーリアに完勝。安田記念で先着を許したアエロリットをちぎった。春の金鯱賞リスグラシューに勝っているダノンプレミアムもちぎった。現時点で現役日本最強馬であることに異を唱える人はひとりもいない。レコードに0秒1まで迫る数字も確かにすごいのだが、不思議なほどに、その数字が気にならないほど、数字ではこの馬の強さを測れないのではないか、そう思える強い競馬ぶりだった。

次走は香港Cか、ジャパンCか。香港遠征に踏み切るかどうかは現地の情勢も影響してくるが、仮に香港に向かう場合、第2希望で予備登録している香港マイルで怪物ビューティージェネレーションと戦うケースもあるだろう。

口取り写真の撮影を見送って厩舎地区へ引き上げたが、最善を期しただけで、上がり運動の馬の様子は何も問題なく見えた。関係者の話では「まだまだ現役を続ける」とのこと。凱旋門賞参戦待望論の再燃まで予感するが、それは香港遠征、あるいはジャパンCが終わってからになる。

打倒アーモンドアイで挑んできた馬たちには辛い結果になった(アーモンドアイ以外の馬を狙った記者ファンにとっても…)。「過去最高の状態」と言っていた陣営もあったのだが…。

敗れた馬たちの中で目立ったのはユーキャンスマイルの末脚だ。こちらはどちらかといえば、まだ良化の余地を残す状態での参戦。あらためて左回りへの高い適性を見せつけ、ジャパンCが楽しみになった。スワーヴリチャードもパドックからは良化の余地が感じられた。どこまで状態を上げてくることができるのか。

令和最初の天皇賞。いつもなら「道悪だったら」「もっとペースが速ければ」「もっとペースが遅ければ」「逃げた馬が内を空けなければ」「あの馬が出ていたら」…、そんな「たられば」を挙げて、勝った馬のあら探しをしたくなるのだが、今日はまったくそんな気にならない。アーモンドアイの強さに完全にハートを打ち砕かれた。


TOPページに戻る