速攻レースインプレッション
この結果を見ると理想論を語らずにはいられない
文/編集部(W)、写真/森鷹史

そんなメンバーの中、重賞は2走前のダービー卿CT④着のみながら、単勝2.9倍でやや抜けた1番人気の支持を集めたのはダイアトニック。12年京王杯SCで②着だったレオプライム(父サクラバクシンオー)を兄に持ち、芝1400mは[4.1.0.0]、今回の舞台に限れば4戦4勝という屈指のコース巧者であり、スミヨン騎手騎乗というのも人気に拍車をかけた格好か。
2番人気(4.4倍)は昨年ハナ差②着のモズアスコット、3番人気(6.0倍)は昨年③着のグァンチャーレで、昨年の好走馬が続き、上位3頭が10倍を切るオッズ。やや離れた4番人気(12.3倍)には前走の函館記念で待望の重賞初制覇を果たし、芝1400mはこれが初という新規参入のマイスタイル、同オッズの5番人気には芝1400m重賞でファンタジーSや京都牝馬Sでの③着があるアマルフィコーストが推された。
レースは大外のセイウンコウセイがトップスタートを切るも、内からイエローマリンバが二の脚を利かせてハナへ。セイウンコウセイは2番手に控え、マルターズアポジー、トゥザクラウンが好位に付ける。上位人気は揃って中団ながらマイスタイル、グァンチャーレは前寄り、モズアスコット、ダイアトニックは後方寄りを進む。
前半3Fは34秒6。稍重とすれば速すぎず遅すぎず、例年並みの平均ペースといったところ。実力があれば先行押し切りも差し切りも可能といった流れで、各馬の位置取りに大きな動きがないまま直線へと入ると、まず手応え良く進出したのが好位勢の一角トゥザクラウン。前のイエローマリンバ、セイウンコウセイを交わして先頭に躍り出る。
だが、5ヵ月ぶりで完調手前だったのか、トゥザクラウンの脚色が鈍ると、そこに襲い掛かったのがマイスタイル、モズアスコット、大外からダイアトニックも加わり、残り100mあたりから3頭による激しい追い比べとなり、メンバー中最速の上がり33秒6を繰り出して脚色に勝るダイアトニックがモズアスコット、マイスタイルを競り落として大接戦を制した。
パトローロビデオを見ると、ダイアトニックのスミヨン騎手はスタートしてからすぐにモズアスコットの後ろにピタリと付けてマーク。直線ではモズアスコットの外に持ち出し、一旦は馬体を離した2頭だったが、左ムチを入れて馬体を寄せて行き、そしてハナ差で競り落とした。モズアスコットの岩田康騎手も最大のライバルはダイアトニックと見ていたのか、最後はダイアトニックのほうに寄せて行った。鞍上の駆け引きも見応え十分だった。
ダイアトニックはこの後、マイルCSに向かうのだろうか。スワンSの出走馬は過去30年、同年のマイルCSでは[6.9.11.130]という成績だが、1989~1997年は[5.4.3.58]、1998~2018年は[1.5.8.72]となっていて、1998年以降では、のべ86頭が出走して10年エーシンフォワード(13番人気)しか勝てていない。位置付けはトライアルでも実態は…、と首をかしげざるを得ない現状ではある。
個人的な意見としては、すぐにG1に格上げしようとする風潮は好ましくないと思っている一方、1400mのスペシャリストが集う「芝1400mのG1」なら見てみたい気もする。
スプリンターズSを制してスプリント王の座に就いてしまったものの、タワーオブロンドンは今年の京王杯SCでレコード勝ちするなど、芝1400mで3戦3勝。芝1600mは[0.0.0.5]だが、芝1400mはフィリーズレビュー勝ちを含めて[3.2.0.0]のプールヴィルなど、スワンSに出走しない馬の中にも芝1400mで輝く馬が存在するのも事実だ。
スワンSで言えば、芝1400mで[5.1.0.0]となったダイアトニックがその最たるもの。2年連続のハナ差②着で復調をアピールしたモズアスコットも芝1400mで①①④②②②②着だから、マイルG1馬とはいえこの距離に適性が高い1頭だろう。
いまのところ、G2の中では①着賞金がもっとも高い(7000万円)の札幌記念が「G1にもっとも近いG2」かもしれないが、阪神C(6700万円)がG1なら…芝1400mのスペシャリストはもちろん、例年なら香港国際競走に向かいそうなスプリンター、マイラーの参戦もあり得そうで興味深い。
芝1400mのG1を作るとなると番組の編成なども必要になるだろうし、課題はいろいろあるだろうが、ダイアトニックの快走、モズアスコットの復調を見て、そんな理想論を語らずにはいられないスワンSだった。