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速攻レースインプレッション

3歳馬と古馬、明暗を分けたのは「経験値」だった

文/山本武志(スポーツ報知)、写真/濱田貴大


例年、このエリザベス女王杯の時期に話題となるのが、3歳馬と古馬との力関係についての比較だ。これまでにもスプリンターズS天皇賞と古馬混合のG1が行われているが、参戦する馬はごく少数。ただ、このレースは牝馬路線にこだわれば、3歳馬でも普通に参戦という流れになる。毎年のように3歳馬VS古馬という大きな対立軸に頭を悩ませてきた。

今年は特にこの問題が大きなポイントだった。人気は無傷の4連勝でG1初制覇を勝ったラヴズオンリーユーと、前走の秋華賞で悲願のG1タイトルをつかんだクロノジェネシス「2強」。この2頭、確かに今まで④着以下がない。ただ、2頭とも同世代としか戦ったことがなく、未知の面が大きかったことも確かだ。現3歳の牝馬、ここまで古馬重賞で連対したのは北九州記念②着のディアンドルだけ。世代レベルが高いという確証がなく、少し売れ過ぎという感じは否めなかった。

レースはクロコスミアが単騎で引っ張る形。ここまでは予想通りだったが、後続をかなり引き離す逃げで前半1000mが62秒8という超スローの流れは想定外だった。道中で完全に先行有利な競馬になることは分かったが、直線では2番手につけていたラヴズオンリーユーがモタれつつ、ジリジリとした伸び脚。好位につけていたクロノジェネシス、外へ回したスカーレットカラーも伸び切れない。逃げ切りかなと思った瞬間、内ラチ沿いからスルスルと抜け出してきたのはラッキーライラックだった。

3歳春のチューリップ賞以来となる、約1年8ヵ月ぶりの重賞4勝目。「経験値」という点では、この馬だった。昨年のクラシック路線ではアーモンドアイという「怪物」と同世代という不運に泣いたが、今年の中山記念では②着だったものの、スワーヴリチャードディアドラなどG1馬4頭に先着。常に強い相手と揉まれてきた経験に加え、今回は密度の濃い調教で鍛えられたことも大きい。

マイルのヴィクトリアマイルを大目標にしていた今春はスピード勝負への対応を考慮し、坂路を中心に乗り込まれてきた。しかし、中長距離路線の秋は従来のCWコース中心の調整。今回は中3週だったが、先月30日には6ハロン78秒3の猛時計を出すほど。とにかく、攻めた。「やれることはやってきましたから」。決戦前日に聞いた松永幹調教師の言葉には力がこもっていた。

そして、5年ぶりにJRAのG1を制したスミヨンJ。久々に今年は日本に腰を据えた騎乗をしているが、追っているフォームに「カッコよさ」を感じる非常に好きなジョッキーだ。そして、道中のアクションにもほとんど無駄がない。今回も無理に前へつけることなく、中団でジッと脚をため、焦らずに内ラチ沿いを突く完璧なエスコート。個人的にはオルフェーヴルが頂点まであと一歩のところまで迫った凱旋門賞を現地で取材しただけに、スミヨンJがその子供で、同じサンデーRの勝負服を身に着け、日本での久々のG1勝利を挙げたあたりに運命的なモノを感じた。

さて、冒頭の話題に戻ろう。人気を集めた3歳馬のラヴズオンリーユーは③着、クロノジェネシスは⑤着。ラヴズオンリーユー秋華賞を蹄の炎症で回避したものの、ごく軽症で大事を取ったもの。ぶっつけとはなったが、仕上がりに問題はなかったと思う。一方、クロノジェネシスは久々だった秋華賞を快勝したが、当初からここが大目標。上積みを加えた本番だったはずだ。しかし、2頭ともに決して悪い競馬ではなかったが、勝ち切れなかった。

今回は経験の差が出たレースだと思う。先ほども書いたような前半は超スローの流れで、上がり4ハロンはすべて11秒台のラップ。前後半のラップがまるで違い、瞬時の対応が求められる一戦だった。振り返ってみると、今年のオークス秋華賞は道中のペースが緩むことのない、締まったラップの一戦。今回のレースとは性質がまったく異っていた。

それに加え、クロノジェネシスは京都外回りコースは初体験だった。このコースは直線手前に下り坂があり、ここで勢いをつけられるかが大きなポイントになる。結果的に無念の3年連続②着となったクロコスミアは、このゾーンでの加速が抜群。2番手のラヴズオンリーユーとの差が縮むことなく、大きなリードを保ったままで直線を迎えられた。一度でも経験していれば、と思えるシーンでもあった。

キャリアの浅い3歳馬にとって、楽ではない状況だった今年。それでも、大崩れしなかった2頭が高い能力を持っているのは間違いない。この経験を今後どう活かしていくのか。特に初の敗戦を喫したラヴズオンリーユー「これから」には特に注目していきたい。


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