速攻レースインプレッション
ライバルが苦しんだ馬場で危なげのない快勝劇だった
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史

ダノン2騎を寄せ付けずに快勝したのは、安田記念で春のマイル王者になりながら3番人気の評価に甘んじたインディチャンプだった。主戦の福永騎手が騎乗停止となり、急遽、池添騎手に乗り替わったが、完ぺきな騎乗を見せた。好スタートを決めると3枠5番の枠順を活かして、無理せずに4~5番手の内につけた。明らかな逃げ馬がおらず先手を奪ったマイスタイルが前半4ハロンを47秒2で刻むスローペースになったが、外のダノンプレミアムをマークしながら落ち着いてレースを進めた。ペースが遅くても引っ掛からないのがインディチャンプの最大の持ち味であり、その特徴を池添騎手がきっちりと引き出した。
直線は馬場の真ん中を通り、先に外から抜け出したダノンプレミアムを残り100mで交わし、後続も寄せ付けずに1馬身半差。ダノンプレミアムとは通ったコースの差もあったが、それ以上にまったく危なげのない快勝劇だった。勝ちタイムは良馬場で1分33秒0。この時期の京都コースはやや時計が掛かるようになってきており、マイルCSはこれで4年連続の1分33秒台での決着となった。インディチャンプは安田記念を1分30秒9で制しておりスピード馬の印象が強いが、ステイゴールド×キングカメハメハの配合を考えると、むしろこの程度の馬場の方がより強さを発揮できるのかもしれない。
その馬場に苦しんだのがディープインパクト産駒のダノン2騎の方だった。ダノンプレミアムはインディチャンプらを破ったマイラーズCは2番手から上がり32秒2の脚で1分32秒6。前走の天皇賞(秋)もアーモンドアイには0秒5引き離されたとはいえ1分56秒7で②着。高速馬場での切れ味を武器にしており、上がり34秒台の決着では持ち味を十分に活かし切れなかった。それはダノンキングリーも同様で、前走の毎日王冠は1分44秒4の高速決着で快勝したが、今回は1枠1番で内の荒れた馬場を終始通っていたことでスタミナをロスし、直線の切れ味を発揮できなかった。今後、高速馬場に舞台を移せば、巻き返しは必至だろう。
③着ペルシアンナイトは、マイルCSはこの3年間で①②③着。京都コース巧者ということもあるのだろうが、ハービンジャー産駒だけにやや時計の掛かる馬場が得意で、1分33秒台のマイル戦という条件がピッタリなのだろう。インディチャンプ、ペルシアンナイトはいまのところ香港マイルに出走予定であり、例年通りに1分33秒台での決着となれば、2連覇中のビューティージェネレーションという怪物が相手でも、互角のレースを見せてくれるに違いない。アドマイヤマーズ、ノームコアとともに、15年モーリス以来の日本馬Vを楽しみにしたい。
10番人気マイスタイルは楽に逃げて④着に粘り込んだ。前走のスワンSは差して③着だったように脚質は自在だが、古馬になってからの3勝はいずれも逃げ切りだし、レイデオロの④着に粘った日本ダービーでもゴール前まで渋太く逃げ粘った実績がある。アエロリットとはタイプが違う逃げ馬だが、距離の融通性もあり、いずれどこかで逃げて大穴をあけるシーンが想像できる。
上がり最速の33秒4をマークしたのは⑥着カテドラル。このメンバー相手に重賞未勝利でキャリア8戦の3歳馬が、何度か前が詰まる不利がありながらスローペースの最後方から⑥着まで突っ込んだのだから、大きな価値がある。奥手のハーツクライ産駒で今後さらに成長していくことが確実だけに、2020年は大化けするかもしれない。